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現状、具体的な規制は保留だが、まずは大統領選後の動きに注目
メキシコはOECD加盟国としてグローバルミニマム課税の枠組みの導入を決定しています。メキシコでは2020年に大規模な税制改正が行われたことで、それがOECDの基準に合わせるためのマイルストーンとなりました。しかし、メキシコの税務当局によるGloBEルール導入に向けた具体的な国内規制や措置の策定は、まだ保留されています。
今後、所得合算ルール(IIR)による所得の認識、GloBE軽課税支払ルール(UTPR)による損金算入否認を通じて、追加の歳入をもたらすことができるため、メキシコ政府は迅速な導入に向けて強い関心を示すことが予想されます。
また、同国のさまざまな税務アドバイザーが予測するように、もしIIRの導入が遅れた場合、すでにGloBEルールを導入している国(日本など)が、メキシコに代わり、自国のIIRを通じた追加の税金(トップアップ税)を徴収することも考えられます。
税務当局の対応が遅れている理由は、2024年6月に実施された大統領選挙、そして、OECDのガイドラインなどに加え、メキシコの複雑な税制による導入の複雑さにあります。今後どうなるのか、まずは大統領選後の動きに注目すべきでしょう。
メキシコの法人税は30%
インフレ調整は会計と税制で違い
メキシコの会計制度は、国際財務報告基準(IFRS)を基礎としつつ、国内のビジネス慣行などと整合性を取る形でメキシコ会計基準(NIF)を定めています。日系企業の現地法人の多くは、このNIFに準拠した財務諸表を作成しています。
メキシコの税制は通常、内国法人に対し、その全世界所得について30%の法人税を課しています。一方、メキシコ税務上の非居住者の恒久的施設(PE)は、一般に内国法人と同様に課税されますが、そのPEに帰属する所得に対してのみ課税される点に留意が必要です。なお、メキシコでは税務上、連結納税は認められていません。
メキシコの税務上における課税所得の計算はおおむねNIFと整合的であり、税務上の調整が企業の業績と納税義務に関する報告方法に大きく影響する点に変わりありません。そのため、企業はコンプライアンスおよび正確な税額計算の観点から、税制を意識しながら財務報告を行う必要があります。
こうした会計と税制間の相違点としては、例えば、インフレ調整における考え方の違いが挙げられます。会計上は、NIFによって特定の状況下でのみインフレ調整が認められています。この点に関し、NIFによれば、一般的に「インフレ環境」、すなわち直近3会計年度の累積インフレ率が26%(年率8%)を超えた場合、インフレの影響を考慮しなければなりませんが、それ以下の場合はインフレの影響を考慮する必要がないとされています。一方、メキシコ所得税法では、インフレ率がいくらであろうと、国内消費者物価指数(INPC)の変動に基づく益金または損金の認識が必要だとされています。
特に、GloBEルールが適用される最終親会社(日本では2024年4月1日に適用開始)において、その構成事業体におけるトップアップ税の算定が必要な場合は、特定の構成事業体(この場合メキシコの現地法人)の実効税率が重要であることに留意が必要です。