EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 森田 寛之
2018年3月30日に企業会計基準委員会より企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、これらを合わせて「収益認識基準」という)が公表されました。原則適用は2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からとなっていますが、2018年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用が可能である等、現在多くの企業にとって注目度の高い会計基準となっています。
そこで今回は「収益認識基準特集!」として、EY新日本有限責任監査法人のウェブサイトにて公開している記事をカテゴリー別に紹介します。
我が国においては、これまで収益認識に関する包括的な会計基準が開発されてきませんでした。一方で、国際的な会計基準ではIFRS第15号が2018年1月1日、米国会計基準のTopic606が2017年12月15日より後に開始する事業年度から既に適用されています。
このような背景の下、企業会計基準委員会は2015年3月に我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定した後、2017年7月20日に収益認識に関する会計基準の公開草案の公表を皮切りに議論を重ね、2018年3月30日に収益認識基準を公表するに至りました。収益認識基準の開発方針として国際的な比較可能性を重視してきたため、当該基準は基本的にIFRS15号の原則を全て取り入れています。
収益認識基準は、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識することを基本原則としています(企業会計基準第29号 第16項)。この原則に従って収益を認識するために、収益認識基準では5つのステップを適用し収益を認識することを求めています(同 第17項)。なお、我が国のこれまでの実務等を配慮して、重要性等に関する代替的な取扱いも認められています(企業会計基準適用指針第30号 第92項~第104項)。
EY新日本有限責任監査法人では、前述の5つのステップを中心に「解説シリーズ」にて基準適用のポイントを解説しています。
収益認識の表示並びにその注記に関しては、財務諸表作成者の準備期間を考慮したうえで、収益認識基準等が適用される時(2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)までに検討することとされていました。
結果、包括的な定めとしてIFRS第15号と同様の開示目的(本稿Ⅲ2.(2)①参照)及び重要性の定めを含め、原則としてIFRS第15号の注記事項の全ての項目を含めることとなりました。企業の実態に応じて個々の注記事項の開示の要否を判断することを明確にし、開示目的に照らして重要性がないと認められる項目については注記しないことができることとしています。
EY新日本有限責任監査法人では、収益認識基準等に係る開示・注記について「解説シリーズ」にて基準適用のポイントを解説しています。
収益認識については業種別にさまざまな論点が存在します。収益認識基準の適用に際しては、取引内容を再検討し、収益認識基準に照らした整理が求められます。
EY新日本有限責任監査法人が毎月発刊しています情報センサーでは、業種固有の論点を紹介しています。以下では収益認識基準の公表後にリリースされた業種別の論点について紹介します。
(1)小売業
(2)食品・飲料メーカー
(3)化学産業
(4)素材産業
(5)不動産業
(6)自動車産業
(7)物流・倉庫業
売上高は、財務諸表を利用する人々にとって最も重要な指標の1つであり、収益認識基準の適用による導入のインパクトは大きいと考えられ、慎重な対応が求められます。収益認識基準の導入に当たっては、会計的な対応のみならず業務フローの変更やITの対応等も必要となるため、商流の数や種類によっては想定以上のコストがかかることがあります。
以下では影響度調査から導入後の対応まで五段階のフェーズに分割し、導入のアプローチを紹介しています。
その他、収益認識基準の適用に当たって参考となる記事を紹介します。
【2020年】収益認識会計基準の改正
収益認識会計基準の改正についてYouTubeで配信中