EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
認会計士 廣瀬由美子
2020年6月12日に「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等(以下「本改正」という。)が公布されています。
本改正は、企業会計基準委員会(ASBJ)が策定・公表した改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」、改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」等(2020年3月31日公表)を踏まえ、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等について所要の改正を行うものです。
重要な会計方針の注記として、財務諸表作成のための基礎となる事項であって、投資家その他の財務諸表の利用者の理解に資するものを注記することが求められます。ここで、重要な会計方針の注記は、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が適用される場合の注記とし、次に掲げる点に留意するとされています。
(1)重要な会計方針については、投資者その他の財務諸表の利用者が財務諸表作成のための基礎となる事項を理解するために、財務諸表提出会社が採用した会計処理の原則及び手続の概要を開示することを目的とした上で、当該会社において、当該目的に照らして記載内容及び記載方法が適切かどうかを判断して記載することになります。なお、会計基準等の定めが明らか場合であって、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、注記を省略することができます。
(2)重要な会計方針には、例えば以下が含まれるものとされています。
① 有価証券の評価基準及び評価方法
② 棚卸資産の評価基準及び評価方法
③ 固定資産の減価償却の方法
④ 繰延資産の処理方法
⑤ 外貨建の資産及び負債の本邦通貨への換算基準
⑥ 引当金の計上基準
⑦ 収益及び費用の計上基準
⑧ ヘッジ会計の方法
⑨ キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲
⑩ その他財務諸表作成のための基礎となる事項
(3)会計処理の対象となる会計事象や取引に関連する会計基準等の定めが明らかでない場合(特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しないため、会計処理の原則及び手続を採用する場合や業界の実務慣行とされている会計処理の原則及び手続を適用する場合を含む。)には、財務諸表提出会社が採用した会計処理の原則及び手続を記載するものとされています。
顧客との契約から生じる収益については、次に掲げる事項であって、投資者その他の財務諸表の利用者の理解に資するものを注記することが求められています。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができます。
当該注記については、事業年度に認識した顧客との契約から生じる収益と報告セグメントごとの売上高との関係を、投資者その他の財務諸表の利用者が理解できるようにするための十分な情報を記載することになります。
顧客との契約から生じる収益を理解するための基礎となる情報としては、例えば、次の事項が含まれます。
① 顧客との契約及び履行義務に関する情報(履行義務に関する情報、重要な支払条件に関する情報)
② 顧客との契約に基づいて、財貨の交付又は役務の提供によって得ることが見込まれる対価の額(以下「取引価格」という。)を算定する際に用いた見積方法、インプット、仮定に関する情報
③ 取引価格を履行義務に配分する際に用いた見積方法、インプット、仮定に関する情報
④ 収益を認識する通常の時点の判断及び当該時点における会計処理の方法を理解できるようにするための情報
⑤ 顧客との契約から生じる収益の金額及び時期の決定に重要な影響を与える「収益認識に関する会計基準」を適用する際に行った判断及び判断の変更
① 顧客との契約に基づく履行義務の充足と当該契約から生じるキャッシュ・フローとの関係を理解できるようにするための情報には、例えば、次の事項が含まれます。
ⅰ 顧客との契約から生じた債権、契約資産並びに契約負債の期首残高及び期末残高(それぞれ区分して表示していない場合)
ⅱ 当事業年度に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額
ⅲ 当事業年度における契約資産及び契約負債の残高の重要な変動に関する内容
ⅳ 履行義務の充足の時期と通常の支払時期との関連性並びに当該関連性が契約資産及び契約負債の残高に与える影響の説明
ⅴ 過去の期間に充足した履行義務又は部分的に充足した履行義務から当事業年度に認識した収益がある場合には当該金額等
② 当事業年度末において存在する顧客との契約から翌事業年度以降に認識すると見込まれる収益の金額及び時期に関する情報には、例えば、次の事項が含まれます。なお、当該履行義務が、当初に予想される契約期間が1年以内の契約の一部である場合等は注記を省略することができます。
ⅰ 当事業年度末において未だ充足していない履行義務に配分した取引価格の総額
ⅱ 当該履行義務が充足すると見込んでいる時期等
財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、上記(1)及び(3)の注記を省略することができます。また、上記(2)の注記は、連結財務諸表において同一の内容が記載される場合には、その旨を記載し、当該注記を省略することができます。
受取手形及び売掛金の定義が変更され、契約資産及び契約負債の定義が新設されています。
契約資産が流動資産に、契約負債が流動負債にそれぞれ追加されています。
同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がある場合には、棚卸資産と工事損失引当金の相殺の有無と関連する影響額を記載することになります。
売上高については、「顧客との契約から生じる収益」及び「それ以外の収益」に区分して記載することになります。また、各企業の実態に応じ、売上高、売上収益、営業収益等適切な名称を付すことになります。
当該記載は、顧客との契約から生じる収益の金額の注記をもって代えることができます。
ただし、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成しているときは、当該記載及び注記を省略することができます。
顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合には、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)を損益計算書において区分して表示することになります。
営業外費用に属する費用として、売上割引の区分に従い、当該費用を示す名称を付した科目をもって掲記しなければならない、という定めが削除されています。
(1)当事業年度の財務諸表の作成に当たって行った会計上の見積り(この規則の規定により注記すべき事項の記載に当たって行った会計上の見積りを含む。)のうち、当該会計上の見積りが当事業年度の翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるもの(以下、重要な会計上の見積り)を識別した場合には、次に掲げる事項であって、投資者その他の財務諸表の利用者の理解に資するものを注記することが求められています。
① 重要な会計上の見積りを示す項目
② ①の項目のそれぞれに係る当事業年度の財務諸表に計上した金額
③ ②の金額の算出方法、重要な会計上の見積りに用いた主要な仮定、重要な会計上の見積りが当事業年度の翌事業年度の財務諸表に与える影響その他の重要な会計上の見積りの内容に関する情報
(2)(1)②及び③に規定する事項は、財務諸表等規則等の規定により注記すべき事項において、同一の内容が記載されている場合には、その旨を記載し、記載を省略できるとされています。
(3)(1)③に規定する事項は、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、(1)②に掲げる金額の算出方法の記載をもって代えることができるとされています。この場合において、連結財務諸表に当該算出方法と同一の内容が記載されるときには、その旨を記載し、当該算出方法の記載を省略することができるとされています。
(4)(1)②③に規定している注記については、投資者その他の財務諸表の利用者が、重要な会計上の見積りの内容を理解できるようにするための情報を開示することを目的とした上で、財務諸表提出会社において、当該目的に照らして記載内容及び記載方法が適切かどうかを判断して記載するものとされています。
企業会計基準委員会が2020年3月31日までに公表した次の会計基準を、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第1条第3項及び財務諸表等規則第1条第3項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準とします。
2020年3月31日公表
公布の日(2020年6月12日)から施行されています。
軽微な修正を除き公開草案からの変更点はありません。
なお、本稿は本改正の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
金融庁ウェブサイト