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持続可能なAIインフラの構築
AIの普及による、エネルギー、資源、インフラ面の問題への対処は不可欠と考えられます。生成AIの利用に伴い業務量が新たに発生することを受けて、超大規模データセンターの処理能力は今後6年間で3倍に増強されることが予想されます8。
データセンターとデータ伝送ネットワークは世界の電気消費量の2~3%、また世界のGHG排出量の約1%を占めています9。この数字は、ワークロードの急激な増加にもかかわらず、わずかしか上昇していません。その背景にはグリッドのグリーン化に加え、再生可能エネルギーに投資をし、高効率化を実現した超大規模クラウドプロバイダーへのシフトがあります。とはいえ、ネットゼロ実現に向けた取り組みを順調に進めるには、2030年までに、排出量を増やすのではなく半減させなければなりません10。
AIのエネルギー使用量曲線と排出量曲線の下降に今後大きく貢献すると思われるのが、新しい効率的な半導体構造と冷却方法です。研究室で誕生したこうしたイノベーションは、チップ温度を制御し、性能を維持するために必要なエネルギーを大幅に削減する見込みです。人間の脳のニューロンとシナプスを模したニューロモルーフィックチップ構造のプロトタイプは、エネルギー消費量を1,000分の1に削減したと報告されています11。データセンターの運営者は、気温の低い地域への拠点設置や、廃熱を利用した住宅地区の暖房から、水の代わりとなる液体の利用まで、さまざまな戦略を採用し冷却エネルギーの削減に取り組んでいます。少ないながら、データセンターを宇宙空間に設置することを検討する企業もいくつか出てきました。
生成AIの脱炭素化の成否は、データの効率性にも左右されることになります。大規模言語モデル(LLM)が拡大すればするほど、その学習に使用するエネルギーも多くなります。パラメータ数が1億1,000万のあるLLMは、学習段階で0.64トンのCO2を排出しました。これは米国で1世帯がエネルギー関連で1年間に排出するCO2の量の約80%です。一方、パラメータ数が750億の別のLLMは、学習段階でのCO2排出量が550トンでした。こちらは、米国で70世帯が1年間に排出する量に相当します12。
それでも、排出量の60~90%は、ライブデータでモデルに推論を実行させることで発生します(例えば、生成AIのプロンプトなど)。これを受けて、研究者はモデルの小型化と、学習スピードとエネルギー消費量のトレードオフの最適化を進めているところです。
水、生物多様性、エンボディドカーボン(運用段階の設備によるエネルギー消費量を除く、建築物のすべての段階におけるCO2排出量)など環境面の課題の重要性は今後、ますます高まることが予想されます。最大規模のデータセンターは、規模が9万平方メートルに達し、冷却用に1日2,000トン近くの水を消費するようになるでしょう。