EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 森田 寛之
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 内川 裕介
収益認識に関する会計基準等では、第4のステップとして履行義務への取引価格の配分を行います。
収益認識に関する会計基準等では、履行義務の充足時点または履行義務の充足に応じて収益を認識するため、履行義務が収益の認識単位となります。そのため、このステップ4では、ステップ3で決定した取引価格を、ステップ2で識別した履行義務に配分します。この取引価格の配分は、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を描写するように行い(基準第65項)、取引開始日の独立販売価格の比率に基づき配分します(基準第66項)。
独立販売価格とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいいます(基準第9項)。
取引価格の履行義務への配分は、1.概要で記載のとおり取引開始日の独立販売価格の比率に基づき行います。観察可能な販売価格が存在する場合、これが独立販売価格の最善の見積りとなります(基準第146項)。
スマートフォンの販売と通信サービスの独立販売価格の比率に基づいて、契約対価を各履行義務に配分します。独立販売価格は、契約開始時点でスマートフォンと通信サービスを個別に販売する場合の価格を使用します。取引価格の配分は以下のとおりとなります。
スマートフォンの販売は、取引価格である契約対価260千円に独立販売価格の比率である25%(=80/320)を乗じて、65千円(=260×25%)を配分します。
他方、通信サービスは、取引価格である契約対価260千円に独立販売価格の比率である75%(=240/320)を乗じて、195千円(=260×75%)を配分します。
これにより、スマートフォンの販売に係る対価65千円はスマートフォンの引渡し時に一括で収益に認識され、通信サービスの対価195千円は2年間にわたり収益に認識されます(履行義務の充足に関しては「第6回:履行義務の充足による収益の認識」参照)。
独立販売価格を直接観察できない(例えば、個別に販売していない)場合には、市場の状況、企業固有の要因、顧客に関する情報等、合理的に入手できるすべての情報を考慮し、観察可能な入力数値を最大限利用して、独立販売価格を見積ります。この独立販売価格の見積方法に関しては、類似の状況において、首尾一貫して適用することが求められます(基準第69項)。収益認識に関する会計基準等において示されている独立販売価格の見積方法の例示は、以下の通りです(適用指針第31項)。
見積方法 |
内容 |
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調整した市場評価アプローチ |
財又はサービスが販売される市場を評価して、顧客が支払うと見込まれる価格を見積る方法 |
予想コストに利益相当額を加算するアプローチ |
財又はサービスが販売される市場を評価して、顧客が支払うと見込まれる価格を見積る方法 |
残余アプローチ |
契約における取引価格の総額から契約において約束した他の財又はサービスについて観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積る方法 |
なお、残余アプローチについては、以下のいずれかを満たす場合に限り、使用することができます。
<残余アプローチのイメージ図>
残余アプローチに関して、収益認識に関する会計基準等では、重要性に基づく代替的な取扱いを認めています。つまり、履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合で、財又はサービスが、契約における他の財又はサービスに付随的なものであり、重要性に乏しいと認められるときには、残余アプローチの要件を満たさなくても、当該財又はサービスの独立販売価格の見積方法として、残余アプローチを使用することを認めています。(適用指針第100項)。
ステップ4「契約における履行義務に取引価格を配分する」における、これまでの日本基準又は日本基準における実務と収益認識に関する会計基準等の比較は以下の通りです。
これまでの日本基準又は日本基準における実務 |
収益認識に関する会計基準等 |
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(ステップ4) |
ソフトウェア取引については一定の定めが存在するものの、一般的な定めはない。 |
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上記の通り、収益認識に関する会計基準等の公表に伴い取引価格の配分方法が明確になりました。これまでの会計基準のもとでは、各財又はサービスに係る収益をそれぞれの契約上の金額で計上しているケースが少なくないと考えられ、収益認識に関する会計基準等における相対的な独立販売価格の比率に基づく配分との間に差異が生じる可能性があります。
収益認識