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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 中澤 範之
2024年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の「サステナビリティに関する考え方及び取組」における温室効果ガス(以下「GHG」という。)排出量に関するに関する開示の状況を知りたい。
調査対象会社(192社)を対象に、有報においてGHG排出量及びスコープについて、開示状況を調査した。調査結果は<図表1>、<図表2>及び<図表3>のとおりである。
<図表1>により、GHG排出量について開示している会社は、2023年3月期と比較して26社増加の130社(67.7%)であった。GHG排出量についてホームページを参照している会社や開示をしていない会社等の数は、全体として減少しており、有報においてGHG排出量の実績を開示する会社が増加していた。また、GHG排出量を開示している会社のうち、9社は、削減実績率や基準年度との増減比率などの割合による記載のみを開示する会社であった。
そして、<図表2>、<図表3>において、GHG排出量を記載した会社に対して、開示しているスコープを調査した結果、スコープ1から3までを開示している会社は72社(55.4%)であり、対象年度は2024年3月期が70社(53.8%)と半数を超えていた。これは、ISSB基準において、適用初年度にスコープ3の開示を省略できる救済措置があるものの、原則としてスコープ3の開示が要求されていることも考慮して、各社が積極的にスコープ3の開示に取り組んでいると推測される。
また、GHG排出量について、その信頼性を確保するために、Science Based Targets(以下「SBT」という。)の認定を取得した旨を記載している会社は24社であり、SBT認定の取得を検討している旨やSBT認定を申請している旨など、SBT認定に向けて推進している会社は10社であった。この点、我が国では、サステナビリティ情報の開示に関して第三者による保証の在り方(担い手、保証基準・範囲・水準、制度整備等)を検討中であるが、自主的にGHG排出量の信頼性を確保するために、第三者による保証を受けている会社もあり、<図表4>においてその開示状況を調査した。その結果、第三者による保証に関して記載している会社は、2024年3月期と比較して、12社増加の22社であった。なお、2024年3月期において、第三者の社名にまで言及している会社は7社であった。
<図表1> GHG排出量の開示状況の分析
<図表2> GHG排出量を有報で開示している会社のスコープ分析
<図表3>スコープの対象年度の分析
(注1)排出量は概算値、暫定値である旨の会社を含む。
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開示内容 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
会社数 | 会社数 | |
第三者による保証、検証又は評価を受けている旨 | 4社 | 10社 |
第三者による保証を、年1回受けている旨 | 1社 | 1社 |
第三者による限定的保証を受けている旨 | 1社 | 2社 |
第三者による検証を受ける予定の旨 | 0社 | 1社 |
第三者による保証前の暫定値である旨 | 3社 | 3社 |
第三者による保証後に確定値を公開する旨 | 0社 | 3社 |
第三者による保証報告書を取得している旨 | 1社 | 2社 |
合計 | 10社 | 22社 |
(旬刊経理情報(中央経済社)2024年9月20日号 No.1721「2024年3月期「有報」分析」を一部修正)
2024年3月期 有報開示事例分析
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