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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 兵藤 伸考
2024年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の未適用の会計基準等の注記の開示の状況を知りたい。
未適用の会計基準等に関する注記において、既に公表されている会計基準等のうち、適用していないものがある場合には、次の事項を注記しなければならないとされている(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第22-2項、連結財規第14条の4、財規第8条の3の3)。
ただし、重要性の乏しいものについては注記を省略することができる(財規第8条の3の3第1項柱書きただし書き)。
調査対象会社(192社)を対象に調査した結果、未適用の会計基準等に関する注記を行っている事例は131社(68.2%)であった。記載されている会計基準等の内訳は<図表1>のとおりである。
改正法人税等会計基準等は2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用となる。ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができるとされているが、注記を記載している事例は129社(67.2%)であった。2024年3月決算において改正法人税等会計基準等を早期適用する会社は少なく、2025年3月期において原則適用することから未適用の会計基準等の注記を行っている会社が多かったと考えられる。
また、実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第46号」という。)について記載している事例は21社(10.9%)であった。 実務対応報告第46号はASBJより2024年3月22日に公表されており(注)、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされている。 グローバル・ミニマム課税制度は、一定の要件を満たす多国籍企業グループ等を構成する会社等が国別に算定された実効税率が基準税率(15%)を下回る場合に適用となることから適用される会社が限定的であること、又は当該課税制度自体が2024年4月1日以後に開始する対象会計年度から施行されるものでそれとの同時適用であること等により、注記の記載を行っている会社が少なかったと考えられる。
(注)2023年3月に公表された実務対応報告第44号も改正されている。なお、改正により「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」から「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」に名称変更されている。
<図表1> 未適用の会計基準等に関する注記の開示状況
(注)改正法人税等会計基準等及び実務対応報告46号のいずれの計算結果も記載している事例をそれぞれ含めている。 |
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調査対象会社(192社)のうち未適用の会計基準等に関する注記を行っている事例131社を対象に、会計基準等が財務諸表に与える影響に関する事項の開示状況を調査した結果が<図表2>のとおりである。
改正法人税等会計基準等については「評価中、算定中又は検討中」と記載する会社が大部分であったが、「軽微」又は「影響なし又は重要な影響なし」と影響について記載する会社も見られた。一方で、実務対応報告第46号については記載を行っている会社すべてが「評価中」と記載していた。
<図表2> 財務諸表に与える影響の開示状況
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(旬刊経理情報(中央経済社)2024年9月20日号 No.1721「2024年3月期「有報」分析」を一部修正)
2024年3月期 有報開示事例分析
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