2024年3月期 有報開示事例分析 第6回:改正法人税等会計基準等

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 兵藤 伸考

Question

2024年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の改正企業会計基準27号「法人税、住民税及び事業税に関する会計基準」(以下「改正法人税等会計基準」という。)等の早期適用の開示状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2024年8月
  • 調査対象期間:2024年3月31日
  • 調査対象書類:有報
  •  調査対象会社:以下の条件に該当する2,346社
    ①3月31日決算である
    ②2024年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ③日本基準を適用している

【調査結果】

企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)では、2018年2月に企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等(以下「企業会計基準28号等」という。)を公表し、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針のASBJへの移管を完了した。その審議の過程で、次の2つの論点について、企業会計基準第28号等の公表後に改めて検討を行うこととしていた。ASBJへの移管完了後、これらについて審議を行い、2022年10月28日にASBJより改正法人税等会計基準等が公表された。

  • 法人税等の計上区分(株主資本又はその他の包括利益に対する課税)
  • グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等(子会社株式又は関連会社株式)の売却に係る税効果

なお、適用時期については、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用となる。ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することが認められている(改正法人税等会計基準20-2項)。

早期適用の事例分析

調査対象会社について、改正法人税等会計基準を早期適用している事例を分析したところ、会計方針の変更において、早期適用している旨の注記を記載している会社は3社(0.1%)のみであった。

また、早期適用している旨の注記を記載している会社3社のうち、2社は連結財務諸表に与える影響額も記載しており、いずれも法人税等の計上区分の改正によるものと考えられる。なお、3社のうち1社は早期適用しているが連結財務諸表に与える影響はない旨記載していた。

(旬刊経理情報(中央経済社)2024年9月20日号 No.1721「2024年3月期「有報」分析」を一部修正)


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