2024年3月期 有報開示事例分析 第5回:実務対応報告第43号(電子記録移転有価証券表示権利等)

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 大浦 佑季

Question

2024年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の経理の状況における電子記録移転有価証券表示権利等に関する開示の状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2024年8月
  • 調査対象期間:2024年3月31日
  • 調査対象書類:有報
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する2,346社
    ①3月31日決算である
    ②2024年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ③日本基準を適用している

【調査結果】

2022年8月26日に企業会計基準委員会から、株式会社が金融商品取引業等に関する内閣府令第1条4項17号に規定される「電子記録移転有価証券表示権利等」を発行又は保有する場合の会計処理及び開示に関する取扱いを明らかにすることを目的として実務対応報告第43号「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第43号」という。)が公表され、2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から原則適用されている。

調査対象会社(2,346社)について、実務対応報告43号の適用について記載している事例を調査したところ、会計方針の変更(連結及び個別)として記載している会社は17社(0.7%)のみであり、17社全てにおいて、連結財務諸表又は財務諸表に与える影響はないとされていた。また、有報の会計方針の変更以外の箇所での事例としては、附属明細表の有価証券明細表において、保有するその他有価証券の銘柄として「電子記録移転有価証券表示権利等(トークン化有価証券)」と記載している会社が1社あるのみであった。

これは、電子記録移転有価証券表示権利等を発行又は保有している会社が少ないこと、電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理は、基本的に従来のみなし有価証券の発行及び保有の会計処理と同様に取り扱うこととされていることが主な理由と考えられる。

(旬刊経理情報(中央経済社)2024年9月20日号 No.1721「2024年3月期「有報」分析」を一部修正)


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