ボルジョー氏:どのような形式であれ、いかなるフィードバックも歓迎します。自然に関する議論はまだ進行している最中です。さまざまな機関から得られる科学的情報に対応していく必要があり、それらの対応は同時進行で進んでいます。
茂呂:投資家は、TNFDにどのような期待を寄せているのでしょうか。
ボルジョー氏:多くの投資家がTNFDの取り組みに関心を寄せ、自然と向き合う好機となっています。その中で、自然をどのように捉え、取り組んでいくべきかについて、まとまった見解が形成されることが必要です。その機会を提供するのがTNFDの役割です。
また、私たちはNGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)と緊密に議論しています。NGFSはすでに気候変動や生物多様性について、金融の安定性に対する潜在的な脅威と認識しており、このことは明らかに投資家の注目を集めています。
ガッツォ:農業関連産業など、自然と直接関わるセクターはもちろん、他のセクターでも将来のリスクが顕在化しつつあります。TNFDのフレームワークを活用することは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と同じく、自然や生物多様性に関するリスクや機会について、より良い評価を行う第一歩となると投資家は考えています。
ボルジョー氏:従来の財務管理やアセットアロケーション、投資配分の方法論では、自然に関する課題解決に十分に対応できないと、多くの投資家は理解し始めています。重要なのは、自然界の問題に対して具体的な対策を採ることで、そのためには、セクター別あるいは生物群系別に比較でき、横断的に分析でき、かつ、誰もが共有しやすいフレームワークが必要です。
ガッツォ:もう1つ重要な視点としては、ステークホルダーの多くが生物多様性を今すぐに取り組まなければならない課題と捉えていることです。数年後に直面するかもしれない壊滅的な状況を回避するためには、迅速に行動しなければなりません。比較可能なフレームワークを用意し、公平かつ透明性の高い競争の場をつくることで、より効果的に対応していく必要があります。これがTNFDの最終目標ですね。
ボルジョー氏:TNFDは、Science Based Targets Network(SBTN)1や生物多様性条約(CBD)などの国際組織と積極的な対話を続けています。その中で、今後全体のシナリオも見えてくるでしょう。
ガッツォ:生物多様性については現在、中心となるシナリオは存在せず、単一の指標もありません。試行錯誤のアプローチを繰り返し、フレームワークの完成を目指して対話や改善のプロセスを進めていきます。フランス語で「le mieux est l'ennemi du bien」と言いますが、「最善は善の敵」なのです。今あるものが完璧でなくても、それが正しい方向へと導く第一歩であることを受け入れることが大事です。