これだけは知っておきたい!会計入門 第1回 売上取引

公認会計士 中川 真紀子

※今回はココを勉強します

損益計算書

1. 売上とは?

売上とは何でしょうか?
「年商1億円」「連結売上高1兆円」といった言葉をビジネスの世界ではよく聞きます。
売上は、従業員数や創業年数などと同じように、会社のプロフィールのように用いられています。

売上は、決算書では「売上高」いう名目で損益計算書の一番上に書かれていますが、そもそも何を表しているのでしょうか?

例えば、あなたがネイルサロンを経営していたとします。
お客さまにネイルケアを行った後、その場でおカネをもらいますが、その時に売上を計上してよいのでしょうか?

もう一つ。あなたが賃貸マンションの会社を経営していたとします。
お客さまから、先に6カ月分の家賃をもらう契約になっている場合、おカネをもらった時に全額売上を計上してよいのでしょうか?

さらにもう一つ。あなたが化粧品の卸売販売会社を経営していたとします。
お得意先に商品を引き渡した後、後日、商品代金をいただくことになっていますが、この場合、売上はいつ計上したらよいのでしょうか?

会計の世界では、「おカネをもらうこと」と「売上」はイコールではありません。
そのことについて、これから詳しく説明させていただきます。


2. 売上を計上するタイミングは?

まずは、売上取引の流れを見てみましょう。


売上取引の流れ

上記フローのとおり、売上取引は、一般的には次のように、大きく分けて4つのステップがあります。
① 受注や契約(1月15日)
② 商品の引き渡しまたはサービスの提供(3月31日)
③ 請求書の発行(4月10日)
④ 代金の入金(4月30日)

4つのステップが、すべて一度に完了すればよいのですが、通常はタイムラグがあり、数カ月に及ぶことが多いです。
それでは、この4つのステップの中で、売上を計上するタイミングはいつだと思いますか?

商品の引き渡しやサービスの提供が終わった時点、すなわち②の時点になります。つまり、3月の売上になります。①でも③でも④でもありません。

「商品を引き渡した」または「サービスを提供した」ということは、売り手側も買い手側も売買が成立したという納得感がありますし、売上代金も確実にもらえそうという印象がありませんか?
会計のルールでは、「商品を引き渡した」「サービスを提供した」という点と、「売上代金も確実にもらえそう」という2点を重視して、②のタイミングで売上を計上することにしているのです。

それでは、なぜ、①でも③でも④でもないのでしょうか?
会計の世界では、以下のように考えられています。

まず、①の受注や契約は、単なる約束がなされただけですので、ここで売上を計上するのは早過ぎます。
次に、③の請求書の発行日に売上を計上する会社があるかもしれませんが、請求書の発行は、②の時点での「売上代金も確実にもらえそう」との感触を書面に表した、単なる事務的な作業にすぎません。
さらに、④の入金は、商品の引き渡しまたはサービスの提供が終わった後の代金の回収作業であり、売上の計上とは切り離すものと考えられています。

以上より、②の商品の引き渡しまたはサービスの提供を行って代金も確実にもらえそうな時点で、売上を計上することにしているのです。

売上取引の流れ 売上計上のタイミング

会社の種類

業種

売上計上のタイミング

ネイルサロン

サービス業

ネイルケアが終わった時

賃貸マンション

サービス業

賃貸期間に応じて毎月

化粧品の卸売販売

卸売販売業

商品を引き渡した時


損益計算書の「売上高」が意味すること。それは、実は入金額でも契約金額でもないということが、お分かりいただけたかと思います。
「売上高」は、商品の引き渡し高、または、サービスの提供高を表しているのです。

次回は、売上債権について取り上げます。


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