EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
公認会計士 新居 幹也
※今回はココを勉強します
皆さま、利益というと、まず何を考えますでしょうか?
利益には、さまざまな概念がありますが、この中で最も端的に本業による直接的な利益を示すものが「売上総利益」であり、「粗利(あらり)」ともいわれるものです。
この「粗利」は、売上高から売上原価を差し引くことにより算定されます。正しい粗利を知るためにも、売上原価を正しく集計・計上していく必要があるのです。
例えば、あなたがブティックを経営していたとします。
洋服を50着仕入れ、お客さまに40着を売り上げた際に、粗利を出すためには、どのように売上原価を計算すればよいのでしょうか?
仕入れの際には運送料など、さまざまなコストが発生しますが、どのように考えればいいのでしょうか?
仕入れが複数にわたる場合には、どのように売上原価を計算すればよいのでしょうか?
これらについて、これから詳しくご説明いたします。
(1)仕入れが1回のケース
まずは仕入れが1回のケースを具体的に見ていきましょう。
洋服を50着仕入れ、お客さまに40着を売り上げた場合を想定します。
この場合、まず仕入れを50着計上しますが、販売されたものだけが売上原価となります。従って、40着が売上原価として計上され、10着は在庫として棚卸資産に計上されます(棚卸資産については、第4回で詳しく述べます)。
このような対応関係を、会計の用語では「費用収益対応の原則」といいます。この原則は、正しく利益を算出し、損益計算書を作るために、とても大事な概念なのです。
(2)仕入れの際のコストについて
仕入れの際には、運送料、関税などのさまざまなコストが発生します。仕入れに直接かかったこれらのコストも売上原価に入れないと、正しい粗利が分からなくなってしまいます。
従って、仕入れの際のコスト(付随費用)のうち、販売した分にかかるものは、売上原価に入れることになるのです。
(3)仕入れが2回のケース
次に仕入れが2回のケースを具体的に見ていきましょう。
洋服を50着仕入れ、お客さまに40着を売り上げた場合を想定します。
50着は同じ洋服ですが、まず20着を@100、次に30着を@120で仕入れた場合の売上原価はどうなるのでしょうか?
結論から申し上げると、選択した方法により売上原価は変わることになります。実務上、主に以下の方法があります。
方法 |
考え方 |
売上原価の算定 |
売上総利益(粗利) |
|
---|---|---|---|---|
① |
先入先出法 |
先に仕入れたものから販売したと仮定する方法 |
4,400=20着×@100+20着×@120 |
600=売上5,000-売上原価4,400 |
② |
移動平均法 |
仕入れの都度、平均単価を計算する方法 |
4,480=(20着×@100+30着×@120)÷50着×40着 |
520=売上5,000-売上原価4,480 |
※売上は40着×@125=5,000と仮定
ここで重要なのは、会計の方針として、最初に決めておくことです。販売するたびに方法を変更してしまうと恣意性が入り、正しい粗利が分からなくなってしまうからなのです。
ここでも注意が必要なのは、仕入れの場合も同様に、代金を支払った時ではなく、後でお金を支払わなければならない義務が発生した場合に、その債務を負債として計上する必要があるということです(「第2回 売上債権」参照)。
上記の場合、50着を実際に引き取った時に、お金を支払う債務が発生するため、「買掛金」として計上することになります。
次回は、棚卸資産について取り上げます。
関連記事については下記をご参照ください。