これだけは知っておきたい!会計入門 第7回 借入金

公認会計士 林 美岐

※今回はココを勉強します

貸借対照表、損益計算書

1. 借入金とは?

事業を立ち上げて、最初に悩むこと、それはお金のことではないでしょうか。事業を進めていくには先立つもの、お金が必要です。どのような事業をどのくらいの規模で行うかにもよりますが、運営していくには、ある程度、まとまったお金が必要となることが多いでしょう。そこで、他の個人や銀行をはじめとした金融機関からお金を借りるわけですが、これが「借入金」です。借入金は、資本金とは異なり、返済義務があり、利息を支払う必要もあります。
借入金と資本金の違いは以下のとおりです。

借入金

  • 返済の義務があります。
  • 借り入れるに当たり、中期事業経営計画などを作成して金融機関に説明したり、定期的に決算書を報告したりすることが求められる場合があります。
  • 金利を支払う必要があります。

資本金

  • 返済の義務はありません。
  • 出資者は、経営に参画することになります。
  • もうけ(利益)が生じた場合には、配当金を出資者に支払います。

2. 具体的には?

    借り入れをするには、以下のような事項を検討します。

    図1

    (1)誰(どこ)から?
    まず、誰(どこ)から借りるかですが、起業当初は、知人や親兄弟などから借りる場合もあるでしょう。事業の内容を説明した上で、銀行をはじめとした金融機関から借りることもあります。金融機関では、将来の返済を確かなものとするため、通常、オーナーである社長の個人保証を求めます。この場合、会社が返済できなかった際には、保証者である社長個人が返済することになります。

    (2)利息は?
    どのくらいの利息を支払うか、ということも重要なポイントです。通常は所定の利息を払うことが求められます。例えば、年利1%で1千万円の借り入れをしたならば、1年間で10万円(=1千万円×1%)を貸し手(金融機関)に支払うことになります。一般的には、借り手の信用力が高ければ、低い金利で借りることができ、反対に信用力が低いと高い金利で借りることになります。金利は、変動金利で支払う場合と、固定金利で支払う場合とがあります。これから先、金利が上がっていくと予想される場合には、固定金利で契約し、将来の支払利息額を固定化させることが望ましいかもしれません。借入期間をどの程度にするかにもよりますが、どちらが有利か慎重に検討する必要があるでしょう。

    (3)借入期間は?
    どのくらいの期間で返済するかも決めておく必要があります。1年後に返すこととするか、または10年後に返すこととするか、最初に契約(金銭消費貸借契約書)で定めます。通常、借入期間が短いほうが金利は低く、長くなると高くなります。

    (4)返済方法は?
    返済方法も、借りたお金の全額を一度に返す「一括返済」という方法と、少しずつ返済する「分割返済」という方法があります。(2)に記載した利息は、「その時点の借入残高×利率」により負担するので、分割返済をして借入残高を徐々に減らしたほうが、借入期間の間に支払うべき利息の総額は、一括返済よりも少なくなります。ただし、当然のことですが、分割返済をすれば、手元資金は返済に伴って徐々に減少するので、運転資金が不足しないかどうかに留意が必要です。

    <例>
    1,000万円を4年間にわたって借りる場合で、一括返済のケースと250万円ずつを毎年返済する分割返済のケースで、利息負担を比較してみましょう。金利は1%と想定します。

    <一括返済のケース>

    図2

    <分割返済のケース>

    図3

    上記のとおり、徐々に残高を減らす分割返済のほうが、借入期間全体にわたる利息負担額は少ないことが分かります。

    3.決算書での取り扱い

    (1)借入金の表示

    上述のとおり、借入金は、将来返済する義務のあるものですので、会社にとっての「債務」つまり「負債」となります。貸借対照表においては、「負債の部」に表示されます。
    「負債の部」には、「流動負債の部」と「固定負債の部」の2つの区分がありますが、借入金が1年以内に返済する予定の「短期借入金」の場合には「流動負債の部」に表示され、1年を超えて返済する「長期借入金」の場合には「固定負債の部」に表示されます。

    (2)利息の表示

    負担した利息は、損益計算書に計上されます。損益計算書には、費用を計上するための区分がいくつかありますが、通常、支払利息は「営業外費用」区分に計上されます(下図参照)。
    支払利息は、財務費用と呼ばれる費用であり、会社がモノを売ったり、サービスを提供したりするために直接的に必要となる費用とは異なり、間接的に必要となる費用です。このため、本業からのもうけを示す「営業利益」には含めず、それより下の区分である営業外費用項目に計上されます。

    図4

    次回は、固定資産を取り上げます。


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