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連結実効税率15%を目標とする税務戦略が必要
BEPS2.0では、Pillar1が移転価格税制となっていますが、画一的な税負担の配分を目指し企業の裁量の幅を狭めているため税務戦略の余地は低いと考えられます。他方、Pillar2は外国子会社への合算税制ですが、15%を最低税率として最終親事業体に合算課税されるもので、実効税率の低い拠点の利益がターゲットとなります。合算課税を避けるためには、実効税率の低い拠点に配分された利益を是正する移転価格上の検討が必要となっており、Pillar1に比べ、対象となる多国籍企業がはるかに多いPillar2において、税務戦略での移転価格の重要性が増していると考えられます。
例えば、日本に本社のある多国籍企業の国別の発生税率と利益水準のデータ(注)を見ると、最低税率15%を下回る国・地域では、オランダは発生税率6.3%であるのに対し利益水準は9.8%。アイルランドでは発生税率9.2%に対し利益水準は17.5%となっています。
なぜそうなるのでしょうか。それは移転価格により実効税率の低い拠点に多くの利益を配分しているからと想定されます。実効税率計算における分母である利益を増加させ、分子である発生税額を減少させることにより、各拠点での実効税率を低減させ、連結実効税率の低減につながっていると考えられます。
しかし、最低税率15%が導入されれば、低い実効税率のある拠点の多くの利益が合算課税の対象となってしまう可能性があります。そのため、合算課税による税負担の増加を避けるには、各拠点の実効税率を考慮した利益移転を検討していくことが重要となってきています。
例えば、ベトナムは発生税率が20.8%であるのに対し、利益水準は12.1%。日本では発生税率25.2%に対し、利益水準は7.3%となっていますが、今後は発生税率が15.6%のタイなど(注)15%前後の税率国へ利益移転を図っていくことが必要となってきます。企業により拠点ごとに事情が異なると思われますが、これからは連結実効税率15%を目標とする税務戦略が必要になってくるものと考えられます。