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Pillar1のAmount Aでは各当局のコンセンサスは未知数
Pillar1は、売上高200億ユーロ、利益率10%を超えるような超巨大多国籍企業グループを対象に一定の利益を市場国で分配するAmount Aと、既存の移転価格税制を前提に一定の機能に対する利益率を保証するAmount Bに分かれています。
まずAmount Aについては、多国籍企業にとって複雑になるだけでなく、税務当局にとっても税務調査の実施が困難なものになっていくと考えられます。それは各市場国に利益が分配された後、各市場国の税務当局が単独で税務調査を実施するため、多国籍企業と当局の両者にとって、大きな作業の重複が生じるからです。
そのため、2022年10月、OECD事務局はPillar1の進捗報告書を発表しており、そこでは多国籍企業との係争を防止し、かつ解決できるような多国籍間の枠組みを提案しています。この枠組みは以下、大きく3種類に分かれています。
- スコープ(適用対象)確実性レビュー
多国籍企業に対し、Amount Aの対象でないことについて確実性を与える
- 事前確実性レビュー
Amount Aの適用対象である多国籍企業に対し、売上認識といったルールの適用のための手法やグループ統制面から確実性を与える
- 包括的確実レビュー
Amount Aの適用対象である多国籍企業に対し、ルールの適用のあらゆる点に関し、拘束力があり、かつ一貫性のある多国間の確実性を与える
これらの枠組みは、OECDが2018年から推進している国際コンプライアンス保証プログラム(ICAP)の概念に近いものと考えられます。超巨大多国籍企業の場合、取引が2国間だけでなく、多国間に影響を与えるため、利益の配分を複数の税務当局が話し合って、多国籍企業に保証を与えるのは、多国籍企業の予見可能性を高めるための有効な手段の1つです。ただし、Amount Aに適用して多国籍企業に有意義な確実性を与えるようなコンセンサスが複数の税務当局の間で得られるかどうかは未知数であると思われます。