2019年3月期 有報開示事例分析 第8回:非財務情報(MD&A)

2020年2月7日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 兵藤 伸考

Question

2019年3月期決算に係る有報の「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の早期適用の開示の状況を知りたい。

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:2019年8月
  • 調査対象期間:2019年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:2019年3月期決算の全上場会社2,388社

【調査結果】

2019年3月期の有報では、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の項目において、会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響等、会計方針を補足する情報を記載することができることとされている(開示府令第三号様式(記載上の注意)(12)、同第二号様式(記載上の注意)(32)(g))。ただし、記載すべき事項の全部または一部を「第5 経理の状況」の注記において記載した場合には、その旨を記載し、当該注記を省略することができる規定となっている。

調査対象会社について早期適用の状況を分析した結果、会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定の記載を早期適用している事例は17社であった。なお、当該規定を2019年3月期の有報から適用している旨を記載している会社のみをカウントしている。
早期適用している会社について、会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定の記載方法を分析した結果は<図表1>のとおりである。

<図表1> 会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定の記載方法分析

記載方法 会社数
具体的な見積り項目を記載
8
参照して一部省略
2
参照して全部省略
4
その他
3
合計 17

また、具体的な見積り項目を記載している事例(8社)について、記載している見積り項目の内容を調査した結果は<図表2>のとおりである。大部分の会社では貸倒引当金、有価証券の評価、繰延税金資産について具体的な記載を行っていた。

<図表2> 見積り項目の記載内容分析

見積り項目 会社数
貸倒引当金
6
有価証券の評価 5
繰延税金資産 5
固定資産の減損 4
ソフトウエア 2
退職給付引当金(退職給付費用) 2

(注)1社のみの見積り項目は集計を省略しています。

(旬刊経理情報(中央経済社)2019年11月1日号 No.1560「2019年3月期有報における記述情報の開示分析」を一部修正)