2019年3月期 有報開示事例分析 第1回:定率法から定額法への変更

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 中澤 範之

Question

有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更している会社は?

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:2019年8月
  • 調査対象期間:2019年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:2019年3月期決算の有報提出会社2,632社

【調査結果】

(1) 定率法から定額法に変更している旨の開示状況

有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨の開示状況を分析した結果は、<図表1>のとおりである。
2019年3月期決算の有報提出会社のうち、28社が定率法から定額法に変更しており、全体的な会社数は前期から減少傾向にあるものの、適用している会計基準ごとの会社数の内訳には大幅な変化は見られなかった。28社のうち、IFRSを適用している会社が2社あるが、当期にIFRSを任意適用した会社が当期に日本基準の個別財務諸表で変更を行った事例であった。また、日本基準を適用している25社にも、IFRSの任意適用を来期以降に予定している旨を公表している会社が3社含まれていた(2019年6月30日現在)。

<図表1> 定率法から定額法に変更している旨の開示状況

会計基準

2019年3月期
開示会社数

(参考)2018年3月期
開示会社数

日本基準

25

43

IFRS

2

6

米国基準

1

0

合 計

28

49


(2) 定率法から定額法への変更理由

<図表1>の28社について、有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法へ変更した理由を分析した結果は、<図表2>のとおりである。
前期と同様に大型設備の新規稼働、導入の意思決定を契機に減価償却方法の見直しを実施し、減価償却方法を変更した事例が最も多く、構造改革・生産体制の強化や中期経営計画の策定を契機として減価償却方法の見直しを行い、今後は安定的な設備の稼働や安定的な収益獲得が見込まれること等から変更を行う旨の記載事例も多く見受けられた。

<図表2> 定率法から定額法への変更理由

理 由

2019年3月期
開示会社数(※1、2)

(参考)2018年3月期
開示会社数(※1、2)

大型設備の新規稼働、導入の意思決定

12

17

構造改革・生産体制強化の実施

10

15

中期経営計画の策定

12

13

会計方針の統一

2

8

主力事業、事業環境の変化

3

7

グローバル化による生産設備の国外移転

3

5

その他

4

5

合 計

46

70

(※1) 会計方針の変更において記載されている内容を大まかに分類している。
(※2) 複数の理由を記載しているため、カウント数が重複するものがある。

 

(3) IFRS任意適用会社の定率法から定額法への変更時期

2019年3月期決算よりIFRSを任意適用した有報提出会社26社について、有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨のこれまでの開示状況を分析した結果は、<図表3>のとおりであった。
前期に比較しIFRSを任意適用している会社数自体が減少しているものの、前期と同様にIFRSを任意適用している会社の大半がIFRSの任意適用以前に減価償却方法を変更していることがわかる。

<図表3> IFRS任意適用会社の定率法から定額法への変更時期

区 分

2019年3月期
IFRS任意適用会社数

(参考)2018年3月期
IFRS任意適用会社数

変更あり

2012年3月期

1

2

変更あり

2013年3月期

2

1

変更あり

2014年3月期

2

1

変更あり

2015年3月期

0

2

変更あり

2016年3月期

0

1

変更あり

2017年3月期

9

2

変更あり

2018年3月期

3

6

変更あり

2019年3月期

2

変更なし(※1)

7

3

合 計

26

18

(※1) 主にIFRS任意適用時に連結(IFRS)では定額法、個別(日本基準)では定率法を採用した事例である。

(旬刊経理情報(中央経済社)2019年9月20日号 No.1556「2019年3月期 「有報」分析」を一部修正)


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