EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 加藤 大輔
Question
企業会計基準28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(以下、「税効果会計基準一部改正」という)の適用に伴う開示内容(税務上の繰越欠損金に係る繰越期限別の数値情報)の状況は?
Answer
【調査範囲】
- 調査日:2019年9月
- 調査対象期間:2019年3月31日
- 調査対象書類:有価証券報告書
- 調査対象会社:
以下の条件に該当する216社(うち、連結財務諸表作成会社は211社)
① 2019年4月1日現在、JPX400に採用されている
② 3月31日決算
③ 2019年7月1日(法定提出期限)までに有報を提出
④ 日本基準を採用
【調査結果】
(1) 税務上の繰越欠損金に係る繰越期限別の数値情報の記載状況
調査対象会社について、税務上の繰越欠損金に係る繰越期限別の数値情報の記載状況を分析した結果は、<図表1>のとおりである。
純資産の額に対する税務上の繰越欠損金の額の割合が高くなるにつれて、税務上の繰越欠損金に係る繰越期限別の数値情報を記載している会社の割合が高くなる傾向にあった。
<図表1> 純資産の額に対する税務上の繰越欠損金の額(納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額)の割合ごとの繰越期限別の数値情報の記載状況
純資産の額に対する 税務上の繰越欠損金の額の割合 |
繰越期限 情報あり (A) |
繰越期限 情報なし |
合計 (B) |
繰越期限別 情報を記載している割合 (A/B) |
|
繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として 「税務上の繰越欠損金」の記載あり |
0.5%未満 | 13 | 36 | 49 | 27% |
0.5%以上1%未満 | 24 | 13 | 37 | 65% | |
1%以上3%未満 | 42 | 7 | 49 | 86% | |
3%以上5%未満 | 11 | 0 | 11 | 100% | |
5%以上10%未満 | 9 | 0 | 9 | 100% | |
10%以上 | 7 | 0 | 7 | 100% | |
小計 | 106 | 56 | 162 | 65% | |
繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として「税務上の繰越欠損金」の記載なし(※) | 54 | - | |||
合計 | 216 | - |
(※) 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳に「税務上の繰越欠損金」の項目を記載しているものの、2019年3月期の金額を記載していない会社(例えば、比較年度の金額のみを記載しており、2019年3月期の欄を"-"としている会社)を含めている。
(2) 繰越期限別の数値情報における年度の区切り方
調査対象会社について、各社が繰越期限別の数値情報の年度をどのように区切っているかを分析した結果は、<図表2>のとおりである。
ほとんどの会社(106社中101社)が1年区切りで5年まで記載し、それ以降の年度については5年超として記載していた。
<図表2> 税務上の繰越欠損金に係る繰越期限別の数値情報における年度の区切り方
会社数 |
|
1年以内、1年超2年以内、2年超3年以内、3年超4年以内、4年超5年以内、5年超 | 101 |
上記以外(※) | 5 |
合計 | 106 |
(※) 5年区切りで開示している会社等があった。
(旬刊経理情報(中央経済社)2019年10月20日号 No.1559「2019年3月期有報における税効果会計の開示分析」を一部修正)
この記事に関連するテーマ別一覧
2019年3月期 有報開示事例分析
- 第1回:定率法から定額法への変更 (2020.02.07)
- 第2回:連結納税制度 (2020.02.07)
- 第3回:決算期変更 (2020.02.07)
- 第4回:税効果会計基準の一部改正(発生原因別内訳における評価性引当額の区分及び重要な変動の内容) (2020.02.07)
- 第5回:繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由 (2020.02.07)
- 第6回:「収益認識に関する会計基準等の早期適用」及び「未適用の会計基準等の注記の開示」 (2020.02.07)
- 第7回:繰越欠損金に係る繰越期限別の数値情報 (2020.02.07)
- 第8回:非財務情報(MD&A) (2020.02.07)
- 第9回:非財務情報(早期適用) (2020.02.07)
- 第10回:監査の状況 (2020.02.14)
- 第11回:会社法開示比較① (2020.02.14)
- 第12回:会社法開示比較② (2020.02.14)
- 第13回:総会前提出 (2020.02.14)
- 第14回:非財務情報「役員の報酬等」及び「株式の保有状況」 (2020.02.14)
- 第15回:役員の報酬等 (2020.02.14)