EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2023年2月2日、OECDは、OECD/G20税源浸食と利益移転(BEPS)で承認された第2の柱GloBEルールに関する運用指針を公表しました。この文書は、GloBEモデルルールとそれに関係するコメンタリーについて追加指針を提供するものです。本指針は、コメンタリーの追加やその他の修正という形で、今年末に公表されるコメンタリーの改正版に組み込まれる予定です。
GloBEモデルルールおよびコメンタリーは、国・地域の国内税法に第2の柱であるグローバルミニマム課税を組み込む際に使用されることを意図しています。包摂的枠組みのメンバーである国・地域は、国内法の要件に従い、合意された運用指針と整合的にGloBEルールを適用することに合意しています。この文書ではさらに、包摂的枠組みが運用方針の優先順位を継続的に検討し、合意が得られ次第、追加的な方針を公表することが示唆されています。
GloBEモデルルールは2021年12月20日に公表され1、それに関係するコメンタリーは2022年3月14日に公表されました2。GloBEモデルルール第8.3条は、GloBEルール実施国・地域は、国内法の要件に従い、合意された運用指針(包摂的枠組みが発行するGloBEルールの解釈または運用に関する指針として定義された)に従ってGloBEルールを適用しなければならない旨を定めています。本コメンタリーでは、このような合意された運用指針を通じて、さらなる指針が提供される可能性のある問題について多くの言及がなされています。
OECDは、本コメンタリーの公表日と同じ日に第2の柱の実施枠組みについて包摂的枠組みが取り組む作業に関して、パブリックコンサルテーションを行うことを発表しました。2022年4月25日のパブリック・コンサルテーション・ミーティングの場では、GloBEルールをより明確にするための運用指針の必要性が極めて高いことが議論の焦点の1つとなりました3。
2022年12月20日、OECDは第2の柱に関して追加情報を提供する3つの文書を公表しました。1つ目の文書は、包摂的枠組みで合意されたもので、移行期CbCRセーフハーバーの条件を含む、セーフハーバーとペナルティ軽減に関する指針を提供しています4。他の2つの文書は、パブリック・コンサルテーション・ドキュメントとして、包摂的枠組みで作業が進行中ではあるものの合意に至っていない分野について、関係者からの情報を求めています。これらのコンサルテーションドキュメントは、標準化されたGloBE情報申告書5の策定に関する作業進捗とGloBEルールの税務上の確実性を提供するために包摂的枠組みで検討すべき潜在的な紛争予防および解決のためのメカニズムについて言及しています6。
2023年2月2日に公表された文書には、包摂的枠組みが承認した運用指針が含まれており、GloBEモデルルールおよびコメンタリーにおいて最も早急な明確化が必要であるとされた問題に対処しています。本指針は、コメンタリーの追加やその他の修正という形で提示されており、これらは今年後半に公表されるコメンタリーの改正版に組み込まれる予定です。また、本指針には設例も含まれており、これらはコメンタリーの改正版と同時に公表される詳細な設例の改正に盛り込まれる予定です。
包摂的枠組みのメンバーである国・地域は、実施国・地域の国内法のいかなる要件にも従いつつ、合意された運用指針と整合的にGloBEルールを適用することに合意しています。この文書において、運用指針は、GloBEルールの確実性を提供し、GloBEルールの下で協調的な成果を確保するために重要な役割を果たすことが期待されると言及しています。
文書ではさらに、包摂的枠組みは、指針を通じて対応すべき問題の検討を継続しており、追加的な運用指針は、合意が得られ次第、公表される予定である旨を明記しています。この点、同文書では、包摂的枠組みの国・地域が実施プロセスを開始するまで、どのような指針が必要となるかは分からないこと、また、GloBEルールが施行されて初めて、その適用に関するさらなる指針の必要性が生じる可能性があること、すなわち、問題が生じた際に対処するための運用指針が継続的に必要となることを示唆しています。加えて、運用指針には、運用の手続きまたは運用の簡素化の可能性を示す解釈上および運用上の指針の両方が含まれることが言及されています。
本運用指針は、さまざまな技術的問題を対象としており、以下のセクションで構成されます。
本アラートでは、セクション1の「適用範囲」およびセクション2の「所得および税」について解説します。
GloBEルールの通貨による閾値(例えば、連結収益の閾値)は、ユーロで表示されます。仮に、GloBEルール実施国・地域がそれぞれの国内法においてこれらの閾値を異なる通貨で適用した場合、為替差により、各国間で通貨による閾値が整合しなくなる可能性があります。
異なる国・地域で使用される通貨による閾値の一貫性を確保するために、運用指針では、12月の平均為替レートに基づき、ユーロ以外の通貨建ての閾値を毎年見直すことが規定されています。見直し後の閾値は、翌暦年のいずれかの日に開始する(または参照する)すべての事業年度に適用されます。外国為替基準レートは欧州中央銀行(ECB)が提示するレートを使用します。ECBの為替レートが入手できない場合、またはそのような為替レートを使用することが法的または実務的に困難な場合、その国・地域の中央銀行が提示する平均為替レートに依拠する必要があります。
通貨による閾値が複数の会計年度にまたがる場合(例えば、GloBEモデルルール第1.1.1条)、各会計年度において、当該会計年度が始まる暦年の前年の12月の平均為替レート(すべての会計年度の単一の平均為替レートではない)を用いて現地通貨に換算する必要があります。
これら運用指針のルールは、あくまでもユーロ建てでない通貨による閾値の換算に関するものです。GloBEルールに準拠した計算に際しての外貨換算方法については、今後の指針で扱われる予定です。
GloBEモデルルールでは、グループ構成の決定や最終親事業体(UPE)の特定など、いくつかの領域で連結会計原則に依拠しています。現地の法令が、公認の財務会計基準に基づく連結財務諸表の作成を要求していなくても、GloBEルールの下でのみなし連結テストでは、UPEの所在地における公認の財務会計基準に基づく一連の連結財務諸表の作成が要求されます。多国籍企業(MNE)グループは、UPEの所在地に適用される公認の財務会計基準から選択することができます。
運用指針において、みなし連結テストは、会計基準を修正したり、関連する会計基準で規定されている結果を変更するものではないことを明確にしています。特に、国際財務報告基準(IFRS)第10号のような会計基準が、科目ごとに連結を要求していない、あるいは要求しないであろう場合、GloBEのみなし連結の要件がそれを覆すことはないという点を強調しています。IFRS第10号では、一定の条件を満たす投資企業は、その投資先子会社ごとの連結を免除されますが、公正価値で計上することが求められています。
さらに運用指針では、GloBEモデルルール第10.1条の事業体の定義には、中央政府、州政府、地方政府、それらの行政機関または政府機能を遂行する機関は含まれないと定めています。
各構成事業体のGloBE所得または損失および対象税は通常、UPEの連結財務諸表作成時に使用した財務諸表に基づいて計算されます。一方、GloBEモデルルール第4.4.1条の繰延税金調整額合計の計算では、「構成事業体の財務諸表で未払計上した繰延税金費用」に言及しています。
ステークホルダーは、定型化された連結会計処理では、連結財務諸表作成時に適用した会計基準に従って連結レベルで計算された繰延税金が構成事業体に「プッシュダウン」されない場合があり、むしろ連結時においてのみ発生もしくは調整される実務上の課題を指摘しています。これは、構成事業体の財務諸表が当初異なる会計基準に則って作成されているため、あるいは連結の観点から繰延税金の計算が異なる可能性があるためです。
本運用指針では、UPEの連結財務諸表に計上された構成事業体の繰延税金費用を使用すること(構成事業体の個別財務諸表に計上された繰延税金費用ではなく)を明確にしています(すなわち、連結繰延税額の構成事業体への「プッシュダウン」が必要となります)。ただし、これら繰延税金費用がパーチェス法による会計処理やGloBE所得または損失の計算から除外された収益または費用に起因するものでない場合、UPEの連結財務諸表にのみ反映され、構成事業体の個別財務諸表には反映されません。
また、本運用指針では、調整後対象税およびGloBE所得または損失は、同じ会計基準に則って一貫して計算されるべきであるとしています。
政府系ファンド(SWF)は、一般的に、政府または国・地域に代わって投資資産を保有および管理するために設立されます。
先に述べたように、GloBEルールは、グループのUPEを決定するために連結会計原則に依拠しています。従って、SWF(適格政府機関)が投資する異なる企業グループが、その投資の連結を要求されることにより、単一のMNEグループの一部として扱われ、連結に異なるアプローチを採用する別のSWFまたはSWFを通さずに直接投資する政府にとって、一貫性のない結果が生じる可能性があります。
本運用指針では、GloBEモデルルール第10.1条の政府事業体の定義に該当するSWFは、UPEとはみなされず、かつ、MNEグループの一部とはみなされないとすることで、この潜在的な矛盾を解決しています。また、SWFが所有持分を有する事業体については支配持分を有するとはみなされず、SWFの所有持分に関係なく、これら事業体がMNEグループのUPEに該当するのか決定されます。
除外事業体の定義に該当する事業体は、GloBEルールの適用から除外されます。GloBEモデルルール第1.5.2条では、除外事業体の定義を拡張し、除外事業体またはそれらの除外事業体が所有する特定の事業体を対象としています。ステークホルダーからは、別個の構成事業体として扱われる除外事業体の恒久的施設(PE)の扱いを含め、明確化するようにとの要望がありました。
本運用指針では、事業体が除外事業体の定義に当てはまるかは、その事業体のすべてのPEを通じて行う事業活動を含む、事業体が行う事業活動の全体像に基づくべきであることを明確にしています。事業体が除外事業体の定義に該当する場合、その地位はすべてのPEに適用されます。
GloBEモデルルール第1.5.2条(a)は、以下に該当する場合、除外事業者が95%以上(直接、間接を問わず)保有している事業者も、除外事業体とみなされる旨が規定されています。
または、
本運用指針では、これら2つのカテゴリーに属する事業活動を行う事業体も同様に、除外事業体に該当することを明確にしています。加えて、資金の借入れおよび資産の直接取得は、「資産の保有または資金の投資」に該当するため、その除外事業体またはそれらの除外事業体の「利益のため」でなければならないことを明確にしています。
非営利団体は、GloBEモデルルール第1.5.1条(c)に基づき除外事業体に該当します。非営利団体は、慈善活動を行うための資金調達の手段として、100%出資の子会社(完全子会社)を設立することで、特定の商業活動を行うことができます。多くの国・地域では、そのような子会社の利益は課税対象ではありません。GloBEルールでは、それらの商業活動の規模に関わらず、そうした子会社は一般的に除外事業体とはみなされません。
非営利団体の運用負担を軽減し、意図しないトップアップ税を回避するために、本運用指針では、明確な数値基準のテストが新たに提供されています。グループ事業体の収益総額(非営利団体またはGloBEモデルルール第1.5.2条に基づく除外事業体による収益を除外)が7億5千万ユーロまたは非営利団体が属するMNEグループの収益の25%(低い場合)未満の場合、商業活動を行う完全子会社の活動は付随するものとみなされ、それらの事業体は除外事業体として扱われます。
この運用指針のセクションでは、GloBEモデルルール第3章(GloBE所得または損失)および第4章(未払対象税の計算)の複数の側面について言及しています。
米国会計基準(US GAAP)では、連結前の財務諸表においてグループ内販売を行った場合、販売事業体は利益を計上せず、購入事業体は現地税法上、基準価格のステップアップの範囲で繰延税金資産(DTA)を計上することになります。US GAAP上のこの処理は、GloBEモデルルール第6.3.1条において、処分する構成事業体が処分損益をGloBE所得または損失の計算に「含める」と規定されていることから、これらの取引の扱いについて疑問が生じています。購入事業体は、UPEの連結財務諸表作成時に適用した会計基準で算定された取得資産および負債の帳簿価額を用いて、GloBE所得または損失を「決定する」とされています。
本運用指針では、第6.3.1条の下でのグループ内資産および負債の移転は、GloBE上、GloBEモデルルール第3.2.3条に従って処理しなければならないと規定することで、このシナリオに対処しています。したがって、国境を越えたグループ内取引では、独立企業原則が適用され、MNEグループが販売事業体の簿価で会計処理するかどうかに関わらず、GloBE上の取引を公正価値で反映させなければなりません。
一方で、本指針では、購入側事業体の扱いについては明確に言及していませんが、「包摂的枠組みは、MNEグループのグループ内取引の会計処理に起因する二重課税の可能性を回避するために、購入事業体に対して、可能な限りの簡素化を含むさらなる指針を策定する」と述べています。このため、購入側事業体がGloBE上、資産の公正市場価値基準も考慮するのか、または、GloBEモデルルール第4.4.1条に基づくDTAを反映させるのかが不明確なままとなっています。多くの場合、購入側事業体による取得年度のDTAの計上は、トップアップ税につながる可能性があります(これは、間違いなく二重課税を生じさせることになります)。この点については、追加の指針が必要となります。
GloBEモデルルール第3.2条は、GloBE所得または損失の計算において、財務会計上の純損益に必要な調整を行うことを定めています。そのような調整の1つが、除外される持分損益です。2022年3月に公表されたコメンタリーでは、ヘッジ手段に係る損益をどの程度まで除外される持分損益として取り扱うかについては、運用指針において検討するとされています。
構成事業体の単体財務諸表上の為替レートの変動が、国内法の下で課税対象とならない場合には、国・地域別の実効税率(ETR)を大きく変動させるという懸念が生じます。構成事業体が持株会社であり、子会社への投資をヘッジしている証券(例えば、外貨建貸付金または通貨デリバティブ)に為替レートの変動が生じた場合、会計処理としてヘッジ手段の為替差損益を財務会計上の純利益で認識することが考えられます。GloBE所得の計算上、ヘッジ投資の対象となる為替差損益が、除外される持分損益を構成する可能性があります。本運用指針では、ヘッジ手段の為替レートの変動と子会社への原投資の為替レートの変動の取り扱いを一致させ、結果としてどちらの金額も課税されないようにすることで、税務上の変動を排除するルールを設けている国・地域が多いと指摘しています。
このような状況では、連結会計上、為替レートの変動は純投資ヘッジとして認識され、その変動は、その他の包括利益として認識される可能性があります。しかし、このことはGloBE所得の計算には必ずしも関係なく、構成事業体の財務諸表に基づく計算が必要になります。このため、課税対象外の為替差益が国・地域別のGloBE計算上のETRを引き下げる可能性があり、結果的にトップアップ税が課される可能性があります。
本運用指針では、以下の3つの条件を満たす限り、ヘッジ手段に係る為替差損益を除外される持分損益として取り扱うことを5カ年選択適用できると定めています。
これらの条件は、厳密に規定され、タックスヘッジルールがより広範に適用される場合(例えば、このようなルールが連結会計上の取り扱いまたはヘッジの有効性に依存しない場合、または、10%未満の株式保有に適用される場合)、為替レートの変動により、国・地域別のETRが変動する可能性があります。
本運用指針によれば、MNEグループは特定の金融商品の会計処理に依存し、国・地域別のETRを人為的に増加させる可能性があるという懸念がステークホルダーから指摘されています。運用指針では、この可能性について2つの設例を設けて説明しています。
いずれの例においても、非対称的な会計処理により、事実上GloBEルールでは益金算入を伴わない損金算入(D/NI効果)となり、GloBE所得が減少し、国・地域別のETRが増加することになります。
これに対して、運用指針では、関連する会計基準において、同一のMNEグループの構成事業体の金融商品の分類が異なる場合、GloBE上では、発行者が採用した分類が発行者と所有者双方に適用されるとしています。また、複合金融商品については、GloBEモデルルール第3.2.1条(b)において、受取金額のうち持分部分に関するものだけが除外された配当として取り扱われます。
債務免除は、財務リストラクチャリング、特に借り手がその債務を返済できないと判断した場合に発生します。借り手の会計処理は通常、債務免除の金額を財務会計上の純損益として認識することになります。しかし、借り手が居住する国・地域では、そのような所得は課税されない可能性があります。
本運用指針では、債務免除が調整後対象税を引き上げることなくGloBE所得を増加させ、それによって国・地域別のETRを引き下げ、結果的にトップアップ税が課される可能性を認識しています。そこで運用指針では、窮状状態にある以下3つの特定の債務者に限り、債務免除益をGloBE所得または損失から除外する(関連する当期税金または繰延税金がある場合は、調整後対象税から除外する)ことを認めるという選択的解決策を提供しています。
第3のシナリオによる除外は第三者債務にのみ適用されるのに対し、最初の2つのシナリオによる除外は第三者債務と関連当事者債務の両方に適用されることになります。
このGloBE所得からの除外の選択は、債務者のみに適用されます。現在のところ、このような状況における債権者のミラーリング・ルールは定められていません。つまり、貸し手が借り手の債務を免除する際に認識した会計上の損失は、引き続きGloBE所得を減少させることになります(また、関連する税額控除は、当期または繰延べすることにより、調整後対象税を減少させます)。本運用指針では、包摂的枠組みにおいて、債権者に関連する更なる指針の必要性について検討することが示されています。
GloBEモデルルール第3.2.1条(i)は、財務会計上の純損益に対して未払年金費用の調整を定めています。未払年金費用とは、財務会計上の純損益に含まれる年金債務費用の金額とその事業年度に年金基金に拠出された金額との差額と定義されています。本運用指針によると、第3.2.1条(i)が、年金基金ではなく、年金受給者に直接支払われる企業年金制度に適用されるか、年金収益または剰余金がある場合(すなわち、年金基金の期間収益が未払年金の期間費用を超過し、純利益が損益計算書に計上されている場合)、第3.2.1条(i)による調整が必要なのか、についてステークホルダーから明確化が求められていることが示唆されています。運用指針では、第3.2.1条(i)は、年金基金を通じて支給される年金費用にのみ適用されると規定しています。したがって、元従業員への直接の年金支給のために発生した年金費用は、第3.2.1条(i)適用を受けず、GloBEルールに基づき、財務会計上の純損益の計算において費用として計上されると同時に、同じ金額を考慮しなければならないとされています。また、運用指針では、財務会計上の純損益に計上された年金剰余金または年金所得は、年金基金が留保している範囲でGloBE所得または損失の計算から除外されるべきであることが定められています。構成事業体の損益計算書に利益として計上されている剰余金は、会計年度における年金基金収益が年金費用を上回っている場合に発生すると考えられます。反対に、当該余剰金がMNEグループに分配される場合には、その分配された会計年度にGloBEの損益計算書に組み入れることになります。運用指針ではさらに、年金費用に関連するDTAまたは繰延税金負債(DTL)の取り扱いについて明確化するようにとの要望があったことに言及しています。本運用指針におけるコメンタリーの修正文言では明確化はされていませんが、設例では、年金費用に関連するDTAまたはDTLの変動は構成事業体のGloBE対象税費用の計算では考慮しないことが示されています。
本運用指針では、みなし分配のうち、原所有持分が課税対象国・地域での税務上および財務会計上、持分として取り扱われる場合の税金(外国子会社合算(CFC)税制を除く)は、GloBEモデルルール第4.3.2条(e)に該当するため、分配を行う構成事業体の対象税に配分されることを明確にしています。
本運用指針では、GloBEルールには繰延税金費用によるGloBE租税債務との永久差異に対処するため、2つの特徴があることを示しています。
1つ目の特徴としては、GloBEモデルルール第4.1.5条に規定されているもので、繰越欠損金DTAのうち永久差異に起因する部分に相当する加算当期トップアップ税を課しています。この加算トップアップ税の金額は、当該永久差異によって翌年度のトップアップ税を減額できる金額です。しかし、当該永久差異に起因するDTAは、翌年度の所得金額およびその所得に課される税率によっては、翌年度に決定されるトップアップ税額の減額幅が少ない、または減額されない可能性もあります。
2つ目の特徴は、GloBEモデルルール第5.2.1条に規定されていることです。GloBE所得がある国・地域において生じた場合、永久差異と繰延税金会計の相互作用により、国・地域別のETRが負の税率となることがあります。この負の税率を最低税率の15%から差し引くと、トップアップ税率は15%を超過します。この最低税率の超過割合にGloBE所得を乗じることで生じる影響は、第4.1.5条における結果と同様、永久差異がその他の会計年度のトップアップ税を減額できる最大の金額と同額のトップアップ税が追加で発生することを意味します。
このような結果を防ぐために、運用指針では、第4.1.5条が適用される場合、負の超過税金費用を繰り越すための運用手続きを選択できるように定めています。トップアップ税率が第5.2.1条の下での最低税率を超過する場合、MNEグループは、この負の超過税金費用の運用手続を適用しなければなりません。この運用手続を選択または適用する必要があるMNEグループは、その事業年度に計算された調整後対象税総額からこの負の超過税金費用を除外し、負の超過税金費用を繰越します。MNEグループがGloBE所得を計上していない事業年度の負の超過税金費用は、第4.1.5条の下で算出された金額と同額とし、MNEグループがGlobE所得を計上した事業年度の負の超過税金費用は、その事業年度の負の調整対象税金と同額とします。その後の各事業年度において、MNEグループのGloBE所得および調整後対象税金がプラスの場合、MNEグループは負の超過額税金費用残高を減額します。
第4.1.5項の下で負の超過税金費用の運用手続きは、毎年選択適用する必要があります。この選択を行った場合、負の超過税金費用の繰越しは、その後の国・地域別のGloBE ETR計算において適用されなければなりません。さらに、この負の超過税金費用の繰越残高は、MNEグループがある国・地域において1つ以上の構成事業体を売却する場合、譲渡側グループの属性として残ることを意味します。
国によっては、同じ年に国内源泉損失と国外源泉所得が生じた場合、国外源泉所得に対する税金は外国税額控除(FTC)で相殺され、損失は国内ルールの下で繰り越されるのが一般的です。GloBEモデルルール第4.4条の下では、この損失に伴うDTAを繰り越し、後年、国内源泉所得を相殺する際に調整後対象税金に加算することになります。
一方、国内損失が国外源泉所得と相殺された後にFTCを適用する必要がある国(例えば、米国)では、損失は発生しません。その代わりに、そのような国・地域では、通常、将来の国内源泉所得を国外源泉所得として再分類し、FTCを将来の所得の相殺に使用することを認めています。この場合、将来の国内源泉所得を相殺するために使用されるFTCは、損失が発生した年から繰り越されるFTC、またはFTCの繰り越しが認められない場合は、翌年度に発生する超過FTC(例えば、米国外軽課税無形資産所得『GILTI』制度の場合)である可能性があります。このシナリオは、国内源泉損失を繰り越す場合と基本的に同じ結果を生じさせる可能性があります。しかし、GLOBEルールでは、税額控除に関連するDTA(FTCの繰り越しを含む)は、調整後対象税金の計算上考慮されないため、損失を繰り越す国・地域よりも、将来の所得をFTCで相殺する国・地域の方がより多くトップアップ税を課されることになります。
本運用指針は、GloBEルールに基づく上記2つのシナリオの間で、「同等の結果」を確保することを目的としています。具体的には、以下の3つの条件を満たす場合に発生する「代替損失繰越DTA」について、第4.4.1条(e)(FTCに係る繰延税金費用の金額を繰延税金調整総額の計算から除外)は適用されないとしています。
本運用指針下、上記の要件を満たす場合、代替損失繰越DTAに起因する繰延税金費用は、発生および取り崩された事業年度において構成事業体の繰延税金調整総額に含まれますが、代替損失繰越DTAの原因となったFTCが、構成事業体のGloBE所得または損失に含まれる所得に対する税と相殺される範囲でのみ使用されます。代替損失繰越DTAは、第4.4.1条(a)の除外事項に該当するため、最低税率で再計算されなければなりません。
国・地域がFTCの繰越を認めていないにもかかわらず、翌年度に余ったFTCを国外源泉所得として再分類された国内源泉所得に対する税の相殺に使用することを認める制度がある場合、構成事業体のGloBE所得または損失に含まれる所得に対する税の相殺の範囲内でFTCを使用する場合のみ調整が行われることになります。
GloBEモデルルール第3.2.1条(c)では、持分投資に関する3種類の損益をGloBE所得から除外することとしています。これらの3つの金額は、「除外される持分損益」と呼ばれ、通常、以下から構成されます。
モデルGloBEルール第4.1.3条(a)では、除外される持分損益を含む、GloBEの下で除外される所得に対する対象税金は、相応に減額されるとしています。コメンタリーでは、フロースルー事業体の所得が持分法会計適用によって会計処理されているために除外され、その結果、当該事業体の所有者の税金費用も相応に減少する状況を例示しています。
しかし、このルールでは、除外された金額が、税金費用を発生させる所得ではなく、税務上のベネフィットを生じさせる損失に関するものである場合、疑問が生じます。第4.1.3条(a)が、除外された損失に関連する税務ベネフィットの相殺消去により、対象税金を上方修正することを認めると解釈できるのか不明確でした。このような調整が行われない場合、ETRの計算の分子と分母の関係において、損失の取り扱いが非対称になる可能性があります。
本運用指針では、このような対象税金の上方修正は認めないとしています。その代わりに指針では、除外された持分損益が国内の課税所得に含まれている限り、第3.2.1条(c)の除外規定を無効にし、企業が国・地域別に5カ年選択適用することにより対称性を持たせています。同時に、これらの金額に関連するすべての税金(繰延税金を含む)を対象税に反映させます(第4.1.3条(a)を実質的に無効化)。
また、運用指針では、課税上透明な事業体の持分で、連結対象ではない「適格所有持分」(例えば、持分法会計またはそれに類する会計方法を適用し会計処理されている)への投資に関する特別なルールも規定されています。このルールは、投資家が、投資家に特別に配分される還付不能な税額控除および税務上の損失を発生させるパートナーシップに(ライン・バイ・ライン連結のきっかけとなる支配力を持たずに)投資する特定の構造に対しての特別な取り扱いを意図するものです。この指針では、これらの控除、損失および他の特定の項目が、所有者のパートナーシップへの投資を減少するものとして取り扱われる限り、これらの税務ベネフィットの効果を対象税金の計算から差し引くことができるとしています。このルールは、米国会計基準で認められている、この種の投資の一部を会計処理する「比例償却」法と類似しています。
運用指針ではまた、包摂的枠組みが適格フロースルー税務ベネフィットおよび適格所有持分に関する追加ガイダンスを提供する予定であることが示されています。
GloBEモデルルール第4.3.2条では、構成事業体所有者の所在国・地域で支払った外国子会社合算税制(CFC)をGloBE所得に一致させるために、構成事業体CFC所在地の国・地域に配分することを求めています。
本運用指針は、現行の米国のGILTI税制がGloBEルールの下でCFC税制であることを確認するものです。この指針は、GILTIおよびその他のブレンドCFC税制により課税されたCFC税を期間限定で簡略的に配分する方法を提示しています。この方法は、2025年12月31日以前に開始する事業年度(ただし、2027年6月30日以降に終了する事業年度を除く)に適用されます。
運用指針では、ブレンドCFC税は、加重ETRの所得配分手順を用いて構成事業体と非構成事業体の間で配分されることが規定されています。
事業体に配分されるブレンドCFC税:
(ブレンドCFC配分キー/すべてのブレンドCFC配分キーの合計) x 配分可能ブレンドCFC税
ブレンドCFC配分キー:
事業体の帰属所得 x (適用税率 – 国・地域別のETR)
この点、運用指針では、GILTIの場合、配分可能なブレンドCFC税は、国内での損失がない場合、次のように計算されるとしています。
((GILTI合算課税 – GILTI控除) x 21%) – GILTI FTC
運用指針ではさらに、GILTIの場合、帰属所得は構成事業体の「対象所得」の米国株主の持分と等しく、適用税率はブレンドCFC税制における低税率の閾値であると定めています。GILTI税制は、本指針では適用税率を13.125%と定めています。
国・地域別のETRが適用税率(またはGloBE最低税率の15%)を上回る場合、その構成事業体のブレンドCFC配分キーはゼロとして取り扱われます。この配分の意図するところは、GlobEルールに基づくETRが低く、ブレンドCFC税制において計算される所得金額が大きい構成事業体が、ブレンドCFC税制の税額を最も多く引き受けることになります。GILTIについては、GloBEルールで計算したETRが13.125%未満の国・地域にのみGILTI税が配分され、帰属所得の金額が多い構成事業体には、より多く配分されることを意味します。
また、CFC税制が適格国内トップアップ税(QDMTTs)に対して「その他の控除対象税金と同じ条件で」FTCを認めている場合のみ、国・地域別のETRはQDMTTを含むことが明確化されています。このことは、QDMTTはCFC税に関係なく計算されるという運用指針の条項と関連しています。その結果、QDMTTが最初に適用され、QDMTTがCFC税制の下でFTCの対象となると仮定した場合、国・地域別のETRが15%以上となるため、CFC税のQDMTTを適用している国・地域への配分はされないと考えられます。
巻末注
角田 伸広 パートナー
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
西村 淳 パートナー
久保山 直 アソシエートパートナー
荒木 知 ディレクター
大堀 秀樹 ディレクター
高垣 勝彦 シニアマネージャー
野々村 昌樹 マネージャー
加藤 広紀 マネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
メールで受け取る
メールマガジンで最新情報をご覧ください。
EYの関連サービス
グローバルミニマム課税に備える:組織への影響を評価し、確実で実行可能な計画を策定するため、EYが提供するサポートをご活用ください。詳しい内容を知る
続きを読む