EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
BEPS2.0 Pillar 1のAmount Aについては、納税者の確実性、予見可能性を高めるための多国間の枠組みが提案されています。これはOECDが推進している、主に移転価格の分野におけるInternational Compliance Assurance Programmeと同様の考え方に基づくものです。この多国間の枠組みにおいては、本社所在地国における税務行政当局の果たす役割が大きく、多国籍企業の本社と本社所在地税務当局間の緊密な協働が鍵になってくると考えられます。その前提として、多国籍企業は、子会社所在地国および市場国から適切な情報収集を行える高水準のガバナンス枠組みを備えていることが求められます。本社所在地国、市場国双方における税務行政当局とのコミュニケーションをサポートするタックスアドバイザーの役割もより大きくなるでしょう。
EY Japan の窓口
EY税理士法人 ディレクター
荒木 知
2022年10月6日、経済協力開発機構(OECD)事務局は、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応をめぐって進行中のOECD/G20プロジェクト(BEPS 2.0プロジェクト)について、「第1の柱のAmount Aの運用および税の確実性に関する進捗報告書(プログレスレポート)」(以下、「進捗報告書」)を公表しました。今回の進捗報告書は、2022年7月11日に公表済みの「第1の柱のAmount Aに関する進捗報告書(プログレスレポート)」1に含まれていなかった重要な基本構成要素である、新たな課税権の運用に関するルールや、税の確実性に関連する規定を取り上げたコンサルテーションドキュメントです。この報告書はOECD事務局の文書であり、税源浸食と利益移転(BEPS)に関するOECD/G20包摂的枠組みの参加国・地域の一致した見解を表すものではありません。
今回の進捗報告書は、Amount Aの運用および税の確実性の側面に関する利害関係者のさらなる意見を募る目的で、OECD事務局から公表されました。2022年11月11日までの間、書面によるコメントが募集されています。
また進捗報告書によると、2022年末までにさらに2件のパブリック・コンサルテーション・ドキュメントの公表が予定されており、うち1つはデジタルサービス税およびその他の関連する類似措置の廃止および停止に関するもの、もう1つはAmount Bに関するものになるということです。
最後に、進捗報告書によると、Amount Bに関する作業は2023年上半期中の完了を目指して進められる予定とのことです。
2019年1月、OECDは現行のBEPS 2.0プロジェクトを開始するにあたり、作業の2つの柱について説明したポリシーノートを公表しました。2つの柱とは、(i)経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応および市場国・地域への課税権の配分に取り組む第1の柱と、(ii)潜在的なBEPS活動に関する残された懸念および各国間の税率引下げ競争への対応に取り組む第2の柱です2。本プロジェクトは、現在141の国・地域が参加する、包摂的枠組みを通じて進められています。OECDは2019年2月に本プロジェクトに関するコンサルテーションドキュメントを公表し3、2019年3月に最初のパブリックコンサルテーションを実施しました4。
それ以降、OECDからは2つの柱の策定に関する一連の文書が公表され、2020年10月には第1の柱と第2の柱両方の詳細なブループリントが公表されました5。さらに2021年7月には、2つの柱の重要な変数をめぐる包摂的枠組みの参加国・地域の合意を反映したハイレベルの声明が発表されました6。
2021年10月、両方の柱の重要な変数をめぐるハイレベルの政治的合意がなされるとともに、導入計画が設定されました7。2021年10月の声明に反映されたこの合意には、包摂的枠組みに参加する141の国・地域のうち137の国・地域が加わっています。
2021年12月、OECDは、第1の柱のAmount Aにおけるさまざまな個別の基本構成要素に関する一連の事務局による作業文書を2022年上半期に公表し、利害関係者の意見を募集する計画を発表しました。この期間中、Amount Aに関して以下のパブリック・コンサルテーション・ドキュメントが公表されました。
2022年7月11日、OECDは、第1の柱のAmount Aルールの制度設計に関する意見を募集するパブリックコンサルテーションのため、前回のAmount Aに関する進捗報告書を公表しました。この2022年7月の進捗報告書にはAmount Aの基本構成要素の多くが盛り込まれるとともに、それまでのコンサルテーションドキュメントに対して寄せられたコメントに対応したいくつかの更新が反映されていましたが、税の確実性や運用については取り上げられていませんでした。この2022年7月の進捗報告書に対して寄せられたコメントについて議論するパブリック・コンサルテーション・ミーティングは、2022年9月12日に開催されました14。
今回の進捗報告書の構成は以下のとおりです。
第I部には、適用範囲に含まれるグループによるAmount Aルール順守のための手続き案の概要(関連する情報の提出から始まり、税金の納付、さらに適時の二重課税救済の利用まで)が示されています。第I部に含まれている運用プロセスは、第II部や第III部と異なり、今回初めてパブリックコンサルテーションのために公表されました。この観点から、第I部はルール草案を注記による説明で補完する形を取っていると進捗報告書には述べられています。
第II部には、Amount Aにおける税の確実性の枠組みが示されています。この枠組みは、新たなAmount Aルールのすべての側面(二重課税の排除を含む)において、対象グループにとっての確実性を確保することを目的としています。
第III部では、Amount Aに関連する論点における紛争の防止および解決の仕組みを取り上げています。
第III部はモデルルールの形式で起草されているものの、Amount Aの諸側面に関するその他のパブリックコンサルテーションのように、モデルルール草案の一部を構成するものではありません。条文の各部分を、モデルルール、または多国間条約(MLC)もしくはその他の合意やツールの文章に必要に応じて置き換える作業が、より後の段階で開始される予定であると進捗報告書には述べられています。
第I部は2つのセクションで構成されています。1つ目はAmount Aの運用の枠組み(注記による説明の形式を取っている)、2つ目はAmount Aの運用に係るモデルルール草案およびコメンタリーです。
Amount Aの運用の枠組みは、納税者による順守の負担および国・地域による運用の負担を最小化することを目的としていると、進捗報告書には述べられています。
そのため包摂的枠組みは、既存の事業体ベースの法人税制および法的枠組みに基づいて、Amount Aに関する運用および順守のプロセスを以下のとおり策定しました。
現行の各国・地域における二重課税救済の仕組みの有効性を確保するため、Amount A所得は、単一の(法人)所得税の対象、または単一の(法人)所得税の同等物の対象として認識される必要があると進捗報告書には述べられています。
Amount A所得、および二重課税救済(法人税申告、賦課およびペナルティに関連するものを含む)に対して、特定の例外を除き、それぞれの国・地域における現行の運用ルールが適用されます。
進捗報告書によると、Amount Aはグループベースで計算されるため、Amount Aに対する税金の納税義務を負っているかまたは二重課税救済の対象として適格である事業体が、関連する計算の概要を示した税務当局宛文書(Amount A税務申告書(Amount A Tax Return)および共通文書パッケージ(Common Documentation Package))を、関連するそれぞれの税務当局(いわゆる「影響を受ける当事者(Affected Parties)」)に対して提出することが要求されます。共通文書パッケージは、その名が示すとおり、作業の重複を避けるとともに情報の非対称性を排除すべく標準化される予定です。
かかる文書の提出は、各国・地域がレビューまたは調査の一環として、Amount Aに関連するさらなる情報または明確化を要求する権限に影響を及ぼしません(ただし、税の確実性プロセスにおいて制限が適用される可能性があります)。
進捗報告書によると、Amount A所得に対する税金の納税義務を負う事業体を識別するための望ましいアプローチはまだ決定していません。ただし、納税義務を負う事業体が、Amount A関連の法人税納税義務に関して、それぞれの市場国・地域における法人税要件を順守するよう要求されることは決定済みです。納税義務を負う事業体は、申告要件を課されるすべての市場国・地域において登録を要求される予定です。この事項は論点の1つとして認識され、居住者代理人の要件や外国銀行口座の要件等の関連する論点と併せて検討することに、各国・地域は前向きであるとのことです。
納税義務を負う事業体が、ある市場国・地域における税務上の居住者に該当せず、現在のところ当該市場国・地域において法人税の納税義務を負っておらず、かつ当該市場国・地域においてグループ課税救済/連結納税を利用していない場合、この事業体は合理化された順守プロセスの対象となります。Amount A税務申告書および共通文書パッケージは、リード税務当局(別途選定された場合を除き、原則として最終親事業体の税務当局)のみに提出が求められます。提出されたこれらの文書は、情報交換チャネルを通じて関連する市場国・地域と共有されます。
進捗報告書によると、ある国・地域における納税義務の順守を確保するにあたっての二重課税救済の形式(すなわち、所得控除または税額控除)の決定は、個別の国・地域に一任される予定です。ただし、包摂的枠組みは、対象グループが負担する潜在的なキャッシュ・フロー上のコストを限定する取組みに注力しています。救済事業体が特定の要件を満たした場合、救済実施国・地域は、合理化された納付日に基づく特定の時間枠内に「二重課税救済の恩典」を与えることを求められる予定です。この分野においては、包摂的枠組みによるさらなる作業が進行中です。
Amount Aの順守について、進捗報告書には、対象グループおよびグループ事業体に係る運用プロセスに関するハイレベルの記述が含まれています。
かかるプロセスに従って関連する所得および救済金額が決定された上で、関連する申告が合理化された順守プロセスに適格であるかどうかに応じ、対象グループ内の関連する事業体に係る順守要件が決まることになります。
納税義務を負う事業体が合理化された順守プロセスを利用できる場合、当該市場国・地域における法人税申告要件はAmount A税務申告書および共通文書パッケージによって充足され、その他の申告義務は課されません。
一方、合理化された順守プロセスを利用できない事業体は、Amount A所得、および/または請求する二重課税救済金額を、(関連する国・地域における)国内法人税申告書に含めることを要求されます。
進捗報告書によると、市場国・地域における納税者、および救済実施国・地域における救済事業体を識別するプロセスについて、包摂的枠組み内での議論が続いています。Amount Aと既存の事業体ベースの法人税制を整合させるためのアプローチとして、(i)単一納税者アプローチ(対象グループ内の単一の事業体がすべての国・地域においてAmount Aに対する税金の納税義務を負う)と、(ii)複数納税者アプローチ(二重課税の救済を要求されるそれぞれの国・地域における1つまたは複数の事業体がAmount Aに対する税金の納税義務を負うとともに、代理人を務める単一の事業体がこれらの事業体を代理して納付および順守プロセスを取りまとめる)の2つが識別されています。なお、単一納税者アプローチと複数納税者アプローチのいずれが採用されるかにかかわらず、調和の取れた集中的な申告および納付が利用可能になるとされています。
包摂的枠組みの参加国・地域の大部分が単一納税者アプローチへの暫定的な支持を表明しているものの、現段階で包摂的枠組みによる決定は下されていません。さらに進捗報告書によると、従うべきアプローチが決定されていないため、進捗報告書に含まれているAmount Aの運用の枠組みに係るモデルルール草案は、両方のアプローチに対応するように作成されています。
進捗報告書によると、救済事業体の識別に係るアプローチについては、救済実施国・地域が適切な救済事業体を識別できるように一貫性および確実性のニーズを踏まえ、ある程度の柔軟性を取り入れる必要があるとされています。
このような目的においては、2つの側面に対応する必要があります。すなわち、(i)二重課税救済を受ける資格を持ち得るグループ事業体のプールを識別するために用いられる測定基準(すなわち、減価償却および給与に対するリターン、会計上の利益、課税利益、または除外利益)と、(ii)当該グループ内の資格のある事業体に対する救済金額のウォーターフォール型アプローチまたは比例的アプローチによる割り当てについては、包摂的枠組みにおいて議論が続いています。
進捗報告書によると、対象グループはAmount A税務申告書および共通文書パッケージの提出の一環として、事前確実性レビュー(Advance Certainty Review)または包括的確実性レビュー(Comprehensive Certainty Review)のいずれかに参加する意向を表明することになります。適用範囲の確実性レビュー(Scope Certainty Review)(グループがAmount Aの適用範囲に含まれないことを確認し、確実性を確保する)については、共通文書パッケージは要求されず、別個の文書が作成されます。
対象グループが包括的確実性レビューへの参加を希望する各期間において、市場国・地域に対する納付が保留されるべきかどうかについては、議論が続いています。
進捗報告書によると、Amount Aの運用の枠組みに関連するさらなる諸論点は、MLCの策定もしくはモデルルールの最終決定の一環として議論されるか、または第1の柱の実行フレームワークの一部として策定される予定です。これには、MLCに基づく情報交換および協力に係る規定の策定が含まれる予定です。
また、モデルルールは、将来の潜在的な第1の柱の実行フレームワークの策定について定めています。かかるフレームワークには、運用の協調、税の確実性、運用指針、ならびに処理能力の構築および技術的支援の各ワークストリームが含まれる予定です。
最後に、モデルルールには、Amount Aと第2の柱の間の相互関係も盛り込まれる予定です。
進捗報告書には、Amount Aの運用に係るモデル条項案および関連するコメンタリーが以下のとおり含まれています。
進捗報告書は、2022年5月に公表された「Amount Aにおける税の確実性の枠組みに関するコンサルテーションドキュメント」(以下、「Amount Aにおける税の確実性コンサルテーションドキュメント」)と密接に整合しています15。ただし、以下のようないくつかの注目すべき違いがあります。
進捗報告書における事前確実性レビューの範囲は「Amount Aにおける税の確実性コンサルテーションドキュメント」に示された内容と比べて拡大しています。収入源泉、分類、および信頼できる方法の選択が含められたほか、以下の事項も含められています。
Amount Aに関する税の確実性ルールの移行アプローチも、「Amount Aにおける税の確実性コンサルテーションドキュメント」からの見直しが行われています。Amount Aに関するMLCの発効に先立つ初期フェーズの概要が進捗報告書には示されています。このフェーズは、新たなルールに対する対象グループおよび税務当局の理解の一貫性を確保することを目的としており、指針、モデルテンプレート、および必要に応じてよくある質問への回答やその他のツールの策定を含みます。
また、適用範囲確実性レビュー、事前確実性レビューおよび包括的確実性レビューの実施方法に関する税務当局のための指針も策定される可能性があります。MLCが発効するまでの間は、包摂的枠組みによって策定されたいかなる指針も、本質的に、助言的なものにしかなり得ません。MLCが発効した段階で、解釈指針またはその他の指針に対してより強い権威を持たせるべき程度について検討が行われると思われます。指針およびその他のツールに対するさらなる必要性が識別された場合には、この初期フェーズがMLCの発効後も継続する可能性があります。
MLCが発効した時点で、対象グループは特定の簡素化機能を利用できるようになる予定です。これは以下のようなさまざまな形を取ります。
収入源泉に関する移行ルールについては、進捗報告書が包摂的枠組みの最終的な見解または一致した見解を反映したものでないこと、および当該規定が記述のとおり6年の期間について適用されるべきか、それともより短い期間とすべきかについて参加国・地域の間にさまざまな見解があることに注意を要します。
グループが包括的確実性または適用範囲確実性の要望を提出済みである場合に、上記の各ルールの適用に関する追加的な指針が提供される可能性がありますが、当該グループはかかる指針を考慮することを期待されます。
簡素化されたフォローアップ適用範囲確実性レビューは、「Amount Aにおける税の確実性コンサルテーションドキュメント」の下ですべてのグループが利用可能とされていましたが、進捗報告書の下においては、適格採掘業グループおよびRFSを実施するグループのみが利用可能とされています。
進捗報告書の下で、包括的確実性レビューパネルは一般に、事前確実性の結果が検討中の論点に当てはまらない場合に、グループの内部統制の枠組みの信頼性に関する助言の提供のため、システム専門家で構成される専門家助言グループの支援を受けるとされています。
進捗報告書の第III部には、2022年5月に公表された「Amount Aに関連する論点における税の確実性に関するコンサルテーションドキュメント」からの、いくつかの変更が反映されています16。これらの変更に含まれるのは、関連する論点の新たな定義、新たな条項[Y](すなわち、既存の租税協定(進捗報告書の定義によると、二重課税の回避を目的の1つとする協定)がない場合における追加的な相互協議(MAP)規定)、および条項[X](既存の租税協定がある場合におけるMAP規定を含む)に関する新たなコメンタリーです。
進捗報告書によると、関連する論点に含まれるのは、(i)対象グループによるAmount Aの適用に当面の影響または潜在的な影響を及ぼし、かつ(ii)既存の租税協定における実質的な移転価格および恒久的施設の利益帰属ルールの対象となっている論点です。これには国内の租税回避防止ルールに基づく措置が含まれますが、かかるルールを強制的かつ拘束力のある紛争解決の対象とすべきかどうかについては、包摂的枠組み内にさまざまな見解があります。
Amount Aの計算に影響を及ぼすことが予想されない特定の取引の調整(例えば、規制対象金融機関であるグループまたは採掘業事業体であるグループのメンバー間における利益の調整等)は、関連する論点に含まれません。
この定義は包摂的枠組みの最終的な見解または一致した見解を反映したものではない旨が、進捗報告書には明記されています。多数の論点について依然として議論が続いていますが、かかる論点には例えば、Amount Aの適用に対するどのような「潜在的な影響」を含めるべきか、定量的な重要性の基準値を定義に含めるべきかどうか、定義の範囲の限定を認めるべきかどうか等が含まれます。
進捗報告書には、Amount Aに関連する税の確実性の論点に関する規定草案が含まれています。進捗報告書の記述によると、これらの規定は、権限ある当局へのMAP事案の提出から2年以内に権限ある当局がMAPを通じて解決することのできない、移転価格および恒久的施設の利益帰属紛争を解決するために用いられる、強制的かつ拘束力のある仕組みを設けています。
MAPについては2つの規定が含まれています。うち1つの条項は関連する論点に関与する国・地域の間に既存の条約上の関係がある場合に適用され(条項[X])、もう1つの条項は関連する論点に関与する国・地域の間にかかる条約上の関係がない場合に適用されます(条項[Y])。進捗報告書には条項[X]に関するコメンタリーも含まれています。
条項[X]と条項[Y]は類似しており、いずれもOECD/国際連合のモデル租税条約の形式に従っています。条項[X]は、同条項に基づいて提出されたMAPと、既存の租税協定のMAP規定、欧州連合(EU)租税紛争解決指令、およびEU仲裁条約の間における相互関係の概要を示しています。また条項[X]には、同条項に基づいて提出されたMAPが、既存の租税協定における仲裁規定に適格でないと明記されています。条項[Y]には、疑義および困難、ならびにMLCにおいて規定されていない関連する論点がある場合における、MAPの選択肢が含まれています。条項[X]にはこの選択肢が含まれていませんが、権限ある当局は引き続き既存の租税協定における疑義および困難規定に依拠することができる旨が、コメンタリーにおいて明確化されています。
最後に、条項[X]は権限ある当局に対し、MAP事案の結果を以降の年に拡張する選択肢を与えています。
進捗報告書には、MLCの第19条案(関連する論点に関する紛争の解決)およびそのコメンタリーが含まれています。第19条には、条項[X]と条項[Y]双方に基づいて提出される、紛争解決パネルのMAP事案申請の選択肢が規定されています。ただし進捗報告書によると、二国間租税条約がない場合に紛争解決の仕組みを適用すべきかどうかについては、包摂的枠組みの参加国・地域の間にさまざまな見解があります。進捗報告書に示された第19条には、「Amount Aに関連する論点における税の確実性に関するコンサルテーションドキュメント」に含まれていた内容からの大きな変更はありません。
進捗報告書には、第1の柱のAmount Aの運用に関する重要な新情報や、Amount Aおよび関連する論点における税の確実性に関する過去のパブリックコンサルテーションからの更新情報が示されています。第1の柱の主要な基本構成要素が確定した段階で、運用および税の確実性は、第1の柱の議論における極めて重要な要素になると思われます。進捗報告書は包摂的枠組みの参加国・地域の最終的な見解または一致した見解を表すものではありませんが、Amount Aおよび関連する論点の運用および税の確実性が今後展開していくにあたっての全体的な方向性に関して示唆しています。
またOECDは2022年末までに、デジタルサービス税および一方的措置に関するコンサルテーションドキュメント、ならびにAmount Bに関するコンサルテーションドキュメントの公表を見込んでおり、これらのルールの運用に関連する重要な追加的情報が提供されると思われます。
巻末注
角田 伸広 パートナー
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
西村 淳 パートナー
久保山 直 アソシエートパートナー
荒木 知 ディレクター
大堀 秀樹 ディレクター
高垣 勝彦 シニアマネージャー
野々村 昌樹 マネージャー
加藤 広紀 マネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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