四半期 第6回:四半期財務諸表の注記(1)(会計方針の変更等)

公認会計士 山岸 聡

四半期連結財務諸表および四半期財務諸表に記載が求められる注記は【図表1】のとおりです。このうち、四半期に特徴的な注記について解説します。

【図表1】

項  目

連  結

個  別

1

連結の範囲等の重要な変更(四半期連結財規10)

2

会計方針の変更等(四半期連結財規10の2~6)

※1
※1

3

四半期特有の会計処理(四半期連結財規12)

※2

※2

4

重要な後発事象(四半期連結財規13)

5

財政状態・経営成績等を適切に判断するために重要なその他(四半期連結財規14)

6

セグメント情報(四半期連結財規15)

7

金融商品(四半期連結財規15の2、17の2)

8

有価証券(四半期連結財規16、17の2)

9

デリバティブ取引(四半期連結財規17、17の2)

10

ストック・オプション

※3

※3

11

企業結合(四半期連結財規20、22、23、26)

12

事業分離(四半期連結財規24、25)

13

継続企業の前提(四半期連結財規27)

14

資産除去債務

※3

※3

15

賃貸等不動産

※3

※3

16

担保資産

※3

※3

17

重要な偶発債務(四半期連結財規51)

18

手形割引及び裏書譲渡

※4

※4

19

1株当たり情報(四半期連結財規78)

※5

※5

20

営業損益の著しい季節的変動(四半期連結財規81)

21

キャッシュ・フロー計算書に関する事項(四半期連結財規87、27の2)

※6

※6

22

発行済株式総数、自己株式数及び新株予約権の目的となる株式数

※3

※3

23

配当に関する事項(四半期連結財規91)

24

株主資本の金額の著しい変動(四半期連結財規92)

25

リース取引

※3

※3

26

持分法損益(四半期財規12)

※1 2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から、表示方法の変更については、記載不要となります。
※2 2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から、記載不要となりましたが、それまでは簡便な会計処理についても記載が求められています。
※3 2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から、記載不要です。
※4 2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から、四半期連結財規で項目がなくなりましたが、偶発債務として記載の検討が必要です。
※5 2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から、1株当たり純資産については、記載不要となります。
※6 2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から、第1・第3四半期にキャッシュ・フロー計算書の開示を省略した場合は、注記不要ですが、代わりに減価償却費およびのれん償却額の注記が必要です。

 

会計処理の原則および手続きの変更の注記

四半期会計基準では、会計処理の原則および手続きは、これを継続して適用し、みだりに変更してはならないとされており(四半期会計基準10項、四半期連結財規4条4号)、会計基準等の改正等により会計方針の変更を行う場合には、会計方針の変更が行われた場合は注記を求めています(四半期連結財規10条の2、10条の3)。

四半期連結財規10条の2、10条の3
~会計方針の変更~

会計方針の変更の内容、変更を行った正当な理由、税金等調整前四半期純損益に対する前事業年度の対応する四半期累計期間における影響額及びその他の重要な項目に対する影響額(会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更の場合、変更の理由に代えて会計基準等の名称)
 

過年度遡及会計基準の適用までは、「会計方針の変更をした場合、その旨、変更の理由及び当該変更が四半期連結累計期間に係る四半期連結財務諸表に与えている影響額」の記載が求められています。


1. 注記を行う四半期会計期間

注記を行う四半期会計期間ですが、会計方針の変更を行った四半期会計期間だけではなく、それ以後の四半期会計期間においても記載する必要があることに留意します。例えば、第2四半期で変更が行われた場合には、次の第3四半期でも同様の注記が必要です。
 

2. 第1四半期に会計方針の変更を行う場合等

  • 過年度遡及会計基準の適用後(2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から)
    会計方針の変更の内容、変更を行った正当な理由、税金等調整前四半期純損益に対する前事業年度の対応する四半期累計期間における影響額及びその他の重要な項目に対する影響額(会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更の場合、変更の理由に代えて会計基準等の名称)を注記します。

  • 過年度遡及会計基準が適用されるまで
    会計方針を変更した旨、理由および期首から累計期間への従来の会計方針を適用した場合の影響額を注記します。これは、年度における会計方針の変更における記載と同様です。
     

3. 第2四半期以降に自発的に会計方針を変更する場合

  • 過年度遡及会計基準の適用後 (2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から)
    第1四半期に会計方針の変更を行う場合の注記に加え、第1四半期以降に変更を行った旨及びその正当な理由を注記することが求められます。

  • 過年度遡及会計基準が適用されるまで
    期首からの変更であれば、①その旨、②その理由、③累計期間への影響額の注記のみで足りますが、第2四半期以降で重要な会計方針の変更を行った場合には、これらに加えて、④第2四半期以降に変更した理由、⑤直前の四半期の末日までの期首からの影響額を記載する必要があります。
     

4. 第2四半期以降で重要な会計方針の変更を行った場合の翌年度の取り扱い

  • 過年度遡及会計基準の適用後 (2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から)
    前事業年度の第2四半期以降に会計基準等の改正等以外の会計方針の変更を行っており、かつ、比較情報に適用した会計方針と前事業年度の対応する四半期会計期間に係る四半期連結財務諸表に適用した会計方針とに相違がある場合は、その旨の注記が求められます。

  • 過年度遡及会計基準が適用されるまで
    第2四半期以降で重要な会計方針の変更を行った場合には、当該四半期だけではなく翌年度の対応する四半期で首尾一貫性に関する注記が必要になります。具体的には、①前年度の四半期連結財務諸表と当年度の四半期連結財務諸表の作成に当たっての重要な会計処理の原則および手続きの間に相違が見られる旨、②前年度の対応する四半期会計期間および期首からの累計期間への影響額を注記することを規定しています。
     

5. 第1四半期で四半期特有の会計処理を採用した場合

四半期連結財務諸表の作成のために採用する会計処理の原則および手続きは、四半期特有の会計処理を除き、原則として年度の連結財務諸表の作成に当たって採用する会計処理の原則および手続きに準拠しなければなりません。よって、年度と同じ会計処理(原則法)を採用するか、四半期特有の会計処理を採用するかを選択し、それを継続的に適用することが求められています。

この点、第1四半期で四半期特有の会計処理を採用した場合は、第2四半期でも四半期特有の会計処理を採用することになりますが、第2四半期で原則法を採用する場合は原則として会計方針の変更に該当することになります。
 

6. 第1四半期で簡便的な会計処理を採用した場合

四半期会計期間および期首からの累計期間に係る企業集団の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に関する財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、簡便的な会計処理によることができるため(会計基準第47項)、この方法を変更した場合であっても会計方針の変更には該当しないと思われます。

例示

① 第1四半期  税金費用において簡便法を採用

  第2四半期  同 原則法を採用

⇒ 会計方針の変更には該当しない
  ※ただし、財務諸表利用者の判断を誤らせないことに留意

② 第1四半期  税金費用において四半期特有の会計処理を採用

  第2四半期  同 原則法を採用

⇒ 会計方針の変更に該当する

 

セグメント情報

1. 注記事項

セグメント情報については、次の事項の注記が求められます。

  1. 報告セグメントごとの売上高及び利益又は損失の金額

  2. 報告セグメントごとの利益又は損失の金額の合計額と当該項目に相当する科目ごとの四半期損益計算書計上額との差額及び当該差額の主な内訳

  3. 報告セグメントごとの資産の金額が変動する要因となった事象の概要(前事業年度の末日に比して著しい変動が認められる場合に限る。)
     

2.報告セグメントの変更等

報告セグメントの変更又は事業セグメントの利益(又は損失)の測定方法に重要な変更があった場合には、変更を行った四半期会計期間以後において、その内容を記載することとされています。記載する内容は次のとおりになります。

なお、記載のすべて又はその一部について、記載すべき金額を正確に策定することができない場合には概算額を記載することができます。また、記載すべき金額を算定することが実務上困難な場合には、その旨及びその理由を記載します。

(1) 報告セグメントの変更

① 事業セグメントの量的な重要性の変化による報告セグメントとして開示する事業セグメントの範囲の変更
その旨、期首からの累計期間に係る報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報に与える影響を記載します。

② 組織変更等、企業の管理手法が変更されたことによる報告セグメントの区分方法の変更
その旨、前年度の対応する期首からの累計期間について変更後の区分方法により作りなおしたセグメント情報に基づく報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報を記載します。ただし、当該情報を開示することが実務上困難な場合には、期首からの累計期間について前年度の区分方法により作成した報告セグメントの利益(又は損失)及び売上高の情報を記載することができます。

(2) 各報告セグメントに属する主要な製品及びサービスの種類について重要な異動

各報告セグメントに属する主要な製品及びサービスの種類について重要な異動がある場合には、その内容を記載することが必要となります。
 

3.減損損失の注記

当四半期会計期間において、固定資産に係る重要な減損損失を認識した場合、のれんの金額に重要な変動が生じた場合又は重要な負ののれん発生益を認識した場合には、報告セグメントごとにその概要を注記することが求められます。


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