未来社会の構成員として、ステークホルダーとの関係性を強化する
10年ごとに策定される現在の「デンソーエコビジョン2025」は、2025年に向けた環境行動計画です。この計画はおおむね達成できる見込みであり、現在は、次の環境行動計画の策定が進められています。
「気候変動、サーキュラーエコノミー、生物多様性は、次の環境行動計画(2026年度~)の3本柱になるでしょう。TNFDにおける分析結果は、計画策定の道標になってくれるはずです。ただし最も大切なのは、経営方針や事業内容を絶えずアップデートしていくこと。TNFDのフレームワークも今後さらに明確になり、2030年、2050年という未来を見据えた世界観も具現化していくでしょう。そこに真摯(しんし)に対応していくことが、当社に求められる姿勢だと考えています」
未来社会を創る上では、早期からTNFDに取り組んだこともプラスになったようです。
「TNFDタスクフォースの一員であるEYは、当社のような賛同企業の情報をTNFDサイドにフィードバックし、フレームワークなどに反映させることができます。デンソーがグローバルな共創パートナーの一部になれることは、ベータ版の段階から参画したメリットの一つだと考えています」
「リスクだけでなく、機会にも目を向けたい」と語る廣中氏は、デンソーがどのような社会的価値を創出することを期待しているのでしょうか。
「デンソーは自動車メーカーに対するサプライヤーであるため、生活者と直接的な関係があるわけではありません。しかしB to Bビジネスに従事しているからこそ、技術開発にとどまらず、サステナブルな社会創りに参画することで、企業価値を高めていくべきです。長年取り組んできたCSRも、TNFDという明確な目標が共有されることで、より大きな意味を持つようになるでしょう。現代の製造業は、単に高機能・高品質な消費財を提供するだけでなく、社会からの共感が重要になります。積極的な活動はもちろん、それがどのように社会に還元されるかを発信していくことも大切です。ステークホルダーと密接に関わりながら、共創で未来に向かっていくことが、これからのサステナビリティ担当者の責務だと考えています」