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プライベートエクイティ(PE)とベンチャーキャピタル(VC)の影響力が急激に高まり、2024年のIPO調達額のほぼ半額を支援
2022年と2023年は、PEとVCの支援を受けたIPO件数が全体比でそれぞれ5%と6%に低下しました。これは過去の水準と比べると著しい下落です。その主な要因は、インフレ率と金利の上昇です。これが投資家の投資意欲を減退させました。ところが、2024年には市況の改善を受けて、PEとVCは、バリュエーションの上昇や投資家の信頼回復を生かしてIPO計画を再検討するようになりました。IPO実施企業における上場後のパフォーマンスが好調であることから、こうした復活の動きがさらに活発になり、出資者の支援を受けた企業による市場参入と初期ステークホルダーへの流動性提供が促されました。
2024年は、PEやVCの支援を受けたポートフォリオ企業の上場が世界全体の総IPO調達額の46%を占めました。この数字は、PEとVCが世界のIPO活動に多大な貢献をしており、IPO環境の形成で極めて重要な役割を担っていることを示しています。同年のメガIPO20件のうち、12件はPEが支援したものです。前年の2件に比べ、大幅な上昇といえます。ユニコーン企業によるIPOも18件ありました。その半数がVCによるローンチであり、2023年のわずか3件からやはり増加しています。
一方、バリュエーションの動向から、大きな格差が生じていることが明らかになりました。IPO後のバリュエーションの中央値は、PE支援のIPOが2023年から72%上昇したのに対して、VC支援のIPOは31%低下しています。それにもかかわらず、VC支援のIPOの平均バリュエーションは、ごく少数のメガIPOのけん引によって上昇しているのです。この背景には、成熟した既存のビジネスモデルと採算性を確実に見込める案件が、市場で引き続き好まれていることがあります。バリュエーションの動向がそれぞれとはいえ、PE支援とVC支援のIPOは共に、投資家に確実なリターンをもたらしてきました。市況が好調な中で企業が市場の期待にうまく応えた場合、セグメントを問わず需要が強くなります。
ここ数年でVCの支援を受ける企業の数が著しく増えたにもかかわらず、ベンチャー市場の流動性は徐々に低下しています。2022年以降に資金を確保できた企業はごくわずかで、2,000万米ドルを超える資金を調達したところはさらに少数です。AIに注力する企業への関心が高まっており、莫大な資金需要により公開市場が魅力的なソリューションとなっています。株式を公開したAI企業やAI関連企業は今や、600社以上です。その半数近くがこの4年間で新規上場を果たし、またその多くがVCの支援を受けています。イノベーションと成長を加速させながら、資金調達難を克服する上で、IPOがいかに役立つかをAIセクターが実証しているといえるでしょう。AI企業やAI関連企業の約60社がIPO申請中です。また、400社以上の申請準備が進行中で、このうち150社前後は未上場のAIユニコーン企業であることから、AIセクターが計り知れない可能性を秘めていることがよく分かります。
AI産業がIPO成功のベンチマークを確立できれば、他の高成長産業によるIPOの推進を促進し、今後幅広い市場でIPOの勢いを加速できるかもしれません。暗号通貨分野では、ほとんどの企業がVCの支援を受けており勢いが増しています。トークン価格が最高値を記録し、米国市場でビットコインとイーサリアムの上場投資信託(ETF)上場が承認される中、デジタル資産に対する関心が急激に高まってきました。VCの支援を受けた80社ほどの暗号通貨企業が現在、IPOパイプラインのステータスにあります。このうち約半数がユニコーン企業へと成長していることから、規模が比較的小さい産業にもかかわらず、大きな可能性を秘めていることがうかがえます。
財政状況の緩和に加え、選挙後の規制改革により市場が一段と活性化されるかもしれません。しかし、こうした新興産業がIPOに成功するには、規制上の課題にうまく対応し、強固なコンプライアンス体制を示すことが鍵になるでしょう。