2021年第4四半期のIPO:将来に向けて十分なレジリエンスを備えた成長戦略を描いていますか?
2021年第4四半期のIPO:将来に向けて十分なレジリエンスを備えた成長戦略を描いていますか?

2021年第4四半期のIPO:将来に向けて十分なレジリエンスを備えた成長戦略を描いていますか?


世界全体のIPOは2021年に過去最高を記録し、2022年に想定される逆風に備えています。



要点

  • 世界全体のIPOは前年比で件数が64%、調達額は67%増加した。
  • 2021年第4四半期は、2007年第4四半期以来最大の件数を記録した。
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種の実施、経済回復、高い流動性といった材料が年初の楽観論を後押しした。


EY Japanの視点

2021年度、日本では125社が新規上場しました。これは前年の93社から34%の増加で、中長期的に見ると2006年以来の新規上場社数となりました。また、全世界の新規上場社数は、2,388社で前期比64%の増加となり、世界的に見ても好調なIPOの結果となりました。

2022年度の日本の新規上場社数については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の不確実性はあるものの、多くの市場関係者は2021年度並みかそれを超える会社が新規上場するとみています。

2022年4月に東京証券取引所の市場再編が行われます。多くの新規上場を目指すスタートアップは、「グロース市場」を選択するものと考えられます。マザーズ市場と比較した場合、新規上場基準を見る限りは、時価総額、株主数、流通株式数の基準が緩和されてますが、上場維持基準では、流通株式の時価総額が2.5億円から5億円に引き上げられており、この点注意が必要です。また、流通株式の計算方法が変更になっていること、「事業計画及び成長可能性に関する事項」を継続的に開示することが求められることも変更点になっています。

 

出典:「日本の新規上場動向 - 2021年1月~12月」(2022年1月28日)、EY Japanウェブサイト(2022年2月22日アクセス)


EY Japanの窓口
齊藤 直人
EY Japan IPOリーダー/EY Startup Innovation共同リーダー EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター長

2021年の不確実な環境にもかかわらず、世界のIPO市場は異例の年となり、第4四半期も引き続きIPO件数と調達額が過去最高を記録しました。全体では、2021年の件数は2,388件、資金調達額は4,533億米ドルとなり、前年比でそれぞれ64%、67%の増加となっています。

 

世界のIPO市場では、2021年を通して件数と調達額の双方に全体的な増加が見られましたが、最大の伸びを示したのは欧州、中東、インド、アフリカ(EMEIA)の取引所であり、件数で158%、調達額では214%の増加となりました(件数は724件、調達額は1,094億米ドル)。Americas(北・中・南米)も引き続き活況を呈し、IPO件数は528件、調達額は1,746億米ドルで、それぞれ87%、78%の増加を示しています。Asia-Pacific(アジア・パシフィック)地域では、件数は1,136件(28%増)、調達額は1,693億米ドル(22%増)と、比較的緩やかな増加にとどまりました。

 

セクター全体で見ると、テクノロジーセクターのIPO件数が最も多く(611件)、2020年第3四半期以来6四半期連続でトップを維持、調達額(1,475億米ドル)は2020年第2四半期以来7四半期連続で最大となっています。件数と調達額でそれに続くのがヘルスケアセクターで、IPOの件数が376件、調達額は654億米ドルでした。工業セクターはヘルスケアと大差なく、IPO件数は310件、調達額は631億米ドルとなりました。

 

新年を見据え、IPO活動に影響を及ぼしそうな追い風と逆風の両方が視野に入ってきました。地政学的な緊張、インフレリスク、現在もなお進行している新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの新たな展開や変異株など、経済の本格的な回復を妨げる要因が重なっています。こうした要因にもかかわらず、現在のところ、比較的高いバリュエーションと市場の流動性により、2022年のIPOの窓は開かれています。IPOを目指す企業には、市場ボラティリティの上昇を予想し、IPOスケジュールが遅延した場合の資金調達ニーズに対応する代替案を持つ、といった柔軟性を保つことが求められます。


IPOを目指す企業は、2022年にIPOを一時中断するか推し進めるかにかかわらず、レジリエンスのある成長戦略を描き、明確なESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みに対する投資家の要求を満たすことが求められます。

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過去のIPOレポート



サマリー

2021年は不確実な環境が予想されていたものの、世界のIPO市場は第4四半期も引き続き件数と調達額の両方で記録を更新しました。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種プログラムの実施、世界経済の回復、政府の景気刺激策による潤沢な流動性などにより、楽観的な見方が広がりました。

欧州、中東、インド、アフリカ(EMEIA)が成長をけん引し、IPOの件数と調達額の増加率が最大となりました。最も活況を呈したのは世界的なテクノロジーセクターで、ヘルスケア、工業がそれに続きます。2022年、IPOを目指す企業はIPOスケジュールの変更も想定して、柔軟に対応する必要があります。また、投資家の要求を満たすには、明確なESGへの取り組みが求められます。


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