2021年第2四半期のIPO:世界全体のIPO活動が記録的ペースで続く

2021年第2四半期のIPO:世界全体のIPO活動が記録的ペースで続く


第1四半期に見られた活発な新規株式公開(IPO)の動きは第2四半期も持続し、件数、調達額ともに第2四半期としては過去20年間の最高を記録しました。


要点

  • 世界全体のIPOは対前年比で、件数は150%増加、調達額は251%増加した。
  • SPAC(特別買収目的会社)によるIPOに一服感が出る中、従来型のIPOが再び盛り返しを見せた。
  • 2021年第2四半期は、第2四半期としては過去20年間で最高を記録した。

EY Japanの視点

日本国内の上半期(2021年1月~6月)の新規上場(IPO)件数1は、54社となり、2007年以来14年ぶりの高水準となりました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、企業のデジタル化が進み、関連するテクノロジーやサービスを有するスタートアップがIPO市場をけん引しています。セクター別に見ると情報・通信業が21社で全体の割合の40%を占めていることが、その証左であると考えられます。加えて、上半期には、企業価値が10億ドル(約1,100億円)を超える未上場企業、いわゆる「ユニコーン」の上場があるなど、新興市場に資金が流入していることがIPO市場の活況につながっています。

また、地方企業のIPO件数も増えており、リスクマネーが地方にも流れていると考えられます。

昨年下半期から米国で注目されたSPAC(特別買収目的会社)については、米国証券取引委員会(SEC)の監視の強化もあり、2021年4月~6月には大幅に減少したものの、今後日本国内で利用されるか注目に値するでしょう。

1.「日本の新規上場動向 - 2021年1月~6月」 、EY Japan、
ey.com/ja_jp/ipo/ipo-insights/2021/ipo-insights-2021-07-30-domestic-topics-01(2021年9月21日アクセス)

EY Japanの窓口

齊藤 直人
EY Japan IPOリーダー/EY Startup Innovation共同リーダー EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター長

2021年第1四半期のIPOはSPACによるものが中心となったものの、第2四半期は、金融システムの潤沢な流動性や株式市場の世界的な好調など多数の要因に支えられ、従来型のIPOが再び盛り返しを見せました。

 

IPO市場が世界的に活況を呈していることは、世界経済の回復が本格化している兆しと考えられますが、回復のペースは市場によって異なります。

 

ユニコーン企業やSPACをはじめ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下でもすでにレジリエンス(回復力)を示しているセクターの企業など、2021年中に10億米ドルを超える安定的なIPOパイプラインが期待されています。一方で、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響が長引き、従来型の小売業や旅行、観光、ホスピタリティなど、ロックダウンの影響が最も大きかったセクターの企業は引き続きその影響を受けるため、2021年下半期は厳しい状況になるかもしれません。こうしたセクターの回復なしに、世界経済が全面的な回復に向かうことはないでしょう。

 

2021年中の上場を目指す企業は、環境・社会・ガバナンス(ESG)戦略を確実に実施しながら、バリュエーションを現実的に捉えて十分な上場準備を行うことが求められます。


EYの最新のIPO市場レポートをダウンロードする

2021年第2四半期のEYのIPO市場レポートでは、地域別・国別のデータを含め、より深い分析と洞察を提供しています。


流動性の高まりによって、2021年第2四半期のIPO市場は過去最高を記録








IPOを成功に導く可能性を最大限に高めるために企業が取るべき対策に関して、より詳細な洞察を参照するにはEYの株式公開の手引き(PDF、英語版のみ)をダウンロードしてください。


過去のIPOレポート(英語版のみ)



サマリー

2021年第2四半期における世界全体のIPOは、件数、調達額ともに、第2四半期としては過去20年間の最高を記録しました。第2四半期は金融システムの潤沢な流動性や株式市場の世界的な好調を背景に、従来型のIPOが再び盛り返しを見せました。


この記事について