日本において人権尊重のルール化が進む 公共調達における要件化と政府が公表した実務参照資料の意義
2023年4月、日本政府は、公共調達において、入札する企業における人権尊重の確保に努めることとする方針を決定しました。軌を一にして、企業が人権尊重体制を構築していくための実務参照資料も公表されました。今後、日本企業は、人権尊重のルール化に合わせて、人権デューデリジェンスを実行していくことが求められています。
要点
- 日本政府は、「ビジネスと⼈権に関する⾏動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議」において、公共調達における人権配慮に関する政府方針を決定した。
- 今後、公共調達において、「入札希望者/契約者」は、『責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン』に沿って人権尊重に取り組むことが求められる。
- 日本政府は、上記決定と合わせて人権尊重実践のための実務参照資料を公表しており、こうした資料を参照しながら日本企業は人権尊重の取り組みを進めていくことが求められる。
日本政府の公共調達への入札企業に対する人権尊重対応の要件化が進む
日本政府は、2023年4月3日に開催された「ビジネスと⼈権に関する⾏動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議」において、公共調達において、入札する企業における人権尊重の確保に努めることとする政府方針を決定しました。今後、公共調達の入札説明書や契約書等において、入札希望者/契約者は、2022年9月に日本政府から公表されている「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(以下、「ガイドライン」)」を踏まえて人権尊重に取り組むことが求められていくことになります※1。
日本以外の主要7カ国(G7)では、既に、法規制や公共調達を通じて、企業に対して、サプライチェーン(供給網)における人権侵害リスクを把握し改善する「人権デューデリジェンス(DD)」の実施が求められています。今般、日本においても、初めて、公共調達において人権尊重のルールの導入を進めていく政府の方針が明確化されたことで、企業にとって、人権リスク対応の重要性はさらに高まっていると言えます。
企業に求められる対応
公共調達に関する上記の方針決定と軌を一にして、日本政府は、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料(以下、「実務参照資料」)」も公表しています。本実務参照資料は、企業が、人権リスク対応を進める上での出発点となる、自社の方針(人権方針)の内容として具体的に盛り込むべきと考えられる要素や、また、方針に基づいて、人権デューデリジェンスを進める上で重要なステップとなる、人権リスクの特定と、特定されたリスクに対する対応の優先度を決定するためのリスク評価の具体的な手法が紹介されています。
実務参照資料は、企業による人権尊重の取り組みの方法例を示すものであるため、本資料に記載のとおりにやらなければならない、あるいは、記載事項だけやっておけばいいという趣旨のものではない点には、注意が必要です。しかし、自社として実施を検討できるさまざまなアクションの例が記載されている点で、今後、日本企業が人権デューデリジェンスを進めていく上での重要な参照資料の一つと言えます。
企業は、ガイドラインに基づき、また、実務参照資料を活用しながら、自社の人権リスクの内容や性質に応じた人権デューデリジェンス体制を構築し、人権リスクに対応をしていくことが求められます。
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サマリー
日本政府は、公共調達において、入札する企業における人権尊重の確保に努めることとする政府方針を決定しました。企業は、日本政府が公表しているガイドラインに基づき、また、実務参照資料を活用しながら、自社の人権リスクの内容や性質に応じた人権デューデリジェンス体制を構築していくことが求められます。
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