本DD指令は、従業員数や売上高などについて一定規模以上の企業に、人権および環境への悪影響に対するデューデリジェンス(Due Diligence/DD)の実施を義務付けるものです。企業のデューデリジェンス義務の対象となる人権と環境への悪影響は、企業およびその子会社の操業が発生させているものにとどまらず、企業の供給網などを含むバリューチェーン(Chain of Activities、以下「バリューチェーン」という) 上で発生する悪影響を含みます。また、本DD指令は、EU企業にとどまらず、EU域外の第三国に本社を置き、EU域内に子会社を置くなどして事業を展開する一定の第三国企業に対しても適用されることになっています(表1参照)。欧州委員会は、対象企業は、EU企業は約6,000社、非EU企業は約900社と推計しています。本DD指令上の義務に関し、EU企業・非EU企業の対象企業間で差異はありません。
自社の事業活動、自社の子会社の事業活動、及び、自社の「活動の連鎖(chain of activities)」上のビジネスパートナーの事業活動(表5参照)
※金融サービス等を提供する対象企業については、DD対象は、自社、子会社及び「活動の連鎖」の上流(調達等)のみとされ、クライアントに提供する金融サービスはDD対象から除外されている。
※5 Dual Use itemに関する輸出規制(Regulation (EU) 2021/821)の対象になっている製品や、武器・軍需物資・戦争資材関連輸出規制の対象になっている製品の販売、輸送及び保管は除外される(それら製品の輸出が当局に許可された場合)。また、本DD指令の最終合意に至るまでの議論の結果、製品の「廃棄」(リサイクルや解体等のプロセス)は、DD実施義務の対象外となった。
※6 欧州委員会が公表しているCSDDについての「FAQs」において、製品やサービスの「使用」を通じた悪影響については、対象企業は、自社の事業活動と関連する悪影響を特定し、事業計画、製品・サービスの設計並びに購買及び流通慣行を含む事業戦略やオペレーションに対して、必要な修正を加えることが求められるとしている(“5.3. Which business activities are covered by the due diligence duty?”)
Directive on Corporate Sustainability Due Diligence Frequently asked questions commission.europa.eu/document/download/7a3e9980-5fda-4760-8f25-bc5571806033_en?filename=240719_CSDD_FAQ_final.pdf(2024年9月26日アクセス)
Due diligence: MEPs adopt rules for firms on human rights and environment, European Parliament europarl.europa.eu/news/en/press-room/20240419IPR20585/due-diligence-meps-adopt-rules-for-firms-on-human-rights-and-environment(2024年4月25日アクセス)
First green light to new bill on firms’ impact on human rights and environment, European Parliament europarl.europa.eu/news/en/press-room/20240318IPR19415/first-green-light-to-new-bill-on-firms-impact-on-human-rights-and-environment(2024年4月25日アクセス)
Proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on Corporate Sustainability Due Diligence and amending Directive (EU) 2019/1937, Council of the European Union data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-6145-2024-INIT/en/pdf(2024年4月25日アクセス)