「グリーンウォッシング」を生じさせないために企業が取るべき優れたガバナンスとは

「グリーンウォッシング」を生じさせないために企業が取るべき優れたガバナンスとは


環境配慮への監視の目がますます厳しくなる中、今後、企業が成功を収めるためには、これまで以上にサステナビリティに基づいた実践と報告が求められます。


要点

  • 企業を取り巻くすべての利害関係者からより持続可能な事業運営を求めるプレッシャーが高まっているが、多くのESG関連の報告フレームワークはまだ成熟段階ではない。
  • 「不正のトライアングル」として知られている、3つの不正発生要因の「動機(プレッシャー)」「機会」「正当化」により、見掛け倒しの環境配慮であるグリーンウォッシングが野放しに広がる可能性もあり、規制当局は監視を強めている。
  • ESG(環境・社会・ガバナンス)の「G」、すなわちガバナンスに注力している企業の経営陣は、自信を持って進化とコミュニケーションを図り、企業の長期的価値を構築することができる。

ESGへの取り組みを積極的に公表している企業では、厳しさを増す監視に直面していますが、一層の優れたガバナンス対策を講じることで、この落とし穴を回避できるものと思われます。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新のレポートが警告しているように、気候変動に関してはもはや失敗は許されません1。しかし、どの企業が炭素排出量をネットゼロまでに削減することに成功できるかを判断するのは困難です。メディアやその他の利害関係者から疑問視されるようなコミットメントを掲げている企業の事例が数多く存在しており、グリーンウォッシングと断言されるケースが今後も起きる可能性があるためです。

企業は、サプライチェーン、データプライバシー、包装、給与、D&I(ダイバーシティ&インクルーシブネス)、職場の安全、社会的公正など、他の多くのESG関連トピックにおいても同様の課題に直面しています。ESGのどの分野においても、その基準に関する世界的な合意がないため、企業の経営陣や顧問弁護士は、信頼できるデータや規制当局・立法府からの優先順位や指針がない状況で目標を設定し、判断を行わざるを得ず、難しい立場に立たされています。明確な指標やグローバルスタンダードがない場合、企業は独自の報告メカニズムの構築を余儀なくされ、それが非難にさらされる可能性も存在します。

Norton Rose Fulbright法律事務所によるESGに関する2023 Annual Litigation Trends Surveyによれば、ジェネラルカウンセルや社内の訴訟リーダーは法の抜け穴がふさがれることを切望している状態とみられます。回答者の28%がいわゆるESG論争が昨年から増加したと回答し、24%が今後12カ月でその状況がさらに深刻化すると予想しています2

規制環境が脆弱(ぜいじゃく)であると、倫理・環境面のパフォーマンスに対する利害関係者の要求と相まって、企業に大きなプレッシャーをかけることになり、いわゆる「グリーンハッシング」の増加が起こります。グリーンウォッシングで非難されることを恐れる企業が、環境や社会(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)に対する自社の目標について沈黙することを選択するのです。

EY Oceania Forensic & Integrity ServicesのManaging PartnerであるRob Lockeは、「ガバナンス・バブル」の存在を示唆しており、「『グリーンであること』に対する期待が加速し、企業内のガバナンス層がそうした期待に追いつくのに苦労している」と述べています。 

サステナビリティを戦略の中心に据え、透明かつ正当な方法で進捗状況を報告するために、企業はどのように優れたガバナンスを活用できるのでしょうか。

ガバナンス・バブルにおいて「グリーンであること」に対する期待が加速し、企業内のガバナンス層がそうした期待に追いつくのに苦労している。
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第1章

動機(プレッシャー)の源泉

「不正のトライアングル」の1つ目の要素である「動機」は、解決策を模索する企業に混乱と混沌(こんとん)をもたらします。

サステナビリティに関しては、投資家、活動家、顧客、消費者、従業員、サプライヤー、規制当局のすべてが、この分野における企業の戦略と報告に対する期待を高めているため、不正のトライアングルにおける「動機(プレッシャー)」が高まっています。企業はその対応に迫られていますが、どうすればよいのでしょうか。

従来、企業は規制または競争のいずれかに目を向けていましたが、現在、ESGの成果に関してはどちらも明確な方針が示されていません。そのため、約束自体は簡単に交わされても、企業が自らを統治するための現行のシステム、プロセス、内部統制の構造に加えて、社内慣行がこの課題に適合していないように見えることがよくあります。

ネットゼロ目標を取り挙げてみましょう。現在、活動家、投資家団体、非政府組織(NGO)などが取り上げている、いわゆる先駆者たちの計画は、誠意を持って設定されたものかもしれないが、必要なデューデリジェンス、データ、プロセスに裏打ちされていない可能性があります。

その結果、グリーンウォッシングが起こっています。ケンブリッジ辞典では、グリーンウォッシングを「企業が実際以上に環境保護に取り組んでいると人々に信じさせる行動または活動」と定義しています。ESGが、成功を収め、持続可能で社会的意識の高い企業の特徴となるにつれて、NGOのPlanet Tracker3では、「ますます巧妙化」し、広範囲にわたり急速に拡大しているグリーンウォッシングについて、6つの主なタイプがあると識別しています4

合理的保証を目指すことに伴い、数値の精査は厳しくなる一方です。炭素目標を達成できなければ、財務上の悪影響が生じる可能性もあります。世界の大手食品・飲料企業を対象とした最近の調査では、ESG目標に関する上位企業と下位企業の間で株主還元とEBITDA(Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)の伸びに格差があることが示されており、スコープ3排出量における削減目標の達成に自信のある企業はわずか4%でした5

気候や社会への影響と同様に、グリーンウォッシングは組織内にとどめておくことはできません。ESG目標を達成するということは、サプライチェーンの内情を明らかにし、詳細を掘り下げることを意味します。しかし、気候変動リスク、温室効果ガス排出量、生物多様性への影響、従業員の待遇、人権、税の透明性、不正・贈収賄の防止、役員の多様性、その他多くのESGの側面に関する正確なデータは容易には入手できないことが多いことから、企業同士が協力し合い、必要に応じてサプライチェーン全体を調査してデータ入手を行う必要があります。


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第2章

さまざまな不正機会によるリスク

ESG分野では不正行為を生む機会が数多くあり、多くの利益をもたらすものとなっています。


EY Canada Forensics & Integrity Services LeaderであるZain Raheelは、「財務会計では、自らの財務状況を明確にして表明を行いますが、これらは会計規則によって実証することができます。例えば、財務会計では借方と貸方は必ず対になりますが、環境会計に関してはそうした保証はほとんどなく、不正を生み出す機会となる可能性があります」のように説明しています。また、「現状では、精査を受けると重大な制約を受ける可能性のあるデータに依存せざるを得ない」と付け加えています。 

例えば、Morningstar社6 によると、世界のサステナブルファンドの資産は2021年に2.97兆米ドルの最高値を記録しました。その一方で、グリーンファイナンスには、根拠のない、あるいは誤解を招く主張が依然として存在しています。

従業員がサステナビリティ報告の固有の弱点や曖昧さに乗じて、ESGデータが改ざんを行う可能性があります。財務報告システム内では、通常、管理職の承認を伴う強力な内部統制フレームワークが整備されています。しかし、ESGプログラムは部門横断的であり、成熟度が低いため、同様の内部統制フレームワークが整備されていない可能性があります。人材も重要です。承認行為をどのように有効化するかは、グリーンウォッシングを回避する上でのガバナンスの重要性を示しています。 

現状では、精査を受けると重大な制約を受ける可能性のあるデータに依存せざるを得ない。
サステナビリティ活動に関する企業の「チェリーピッキング(⾃⾝に都合のいいものだけを選ぶこと)」を懸念する投資家の割合
企業がオンラインで行うグリーンクレーム(環境主張)のうち、誇張、虚偽を含むもの、または欺瞞(ぎまん)的なものである割合

そのため、投資家の76%がサステナビリティ活動に関する「チェリーピッキング」で企業を非難しているのは当然のことです7。 2022年11月に発表された財務上級幹部と機関投資家を対象としたEYのグローバル調査では、ESG指標が不足していることが分かりました8。 投資家の大多数(88%)が「規制要件に定められていなければ、ほとんどの企業は、意思決定に有用なESG開示情報を限定的にしか提供してくれない」と述べています。9

マサチューセッツ工科大学とチューリッヒ大学の専門家は最近、大手評価機関の間で生じたESG評価の相違について報告していますが、他の専門家と同様に、ESG情報開示の「透明性の向上」と評価の一致を求めています。

また、ネットゼロなどのESG関連トピックについて作成されたものやマーケティング資料として作成されたものも含め、グリーンクレームに関する規制網が強化されています。英国政府機関である競争・市場庁(Competition & Markets Authority)が主導する国際当局によると、企業がオンラインで行ったグリーンクレームの42%が誇張、虚偽を含んだもの、または欺瞞(ぎまん)的なものであり、場合によっては消費者法に違反している可能性があることが判明しました10。なお、報告義務制度が導入されようとしていますが、これは誤報告と不正の双方を防ぐためです。


日没間近にドローンで撮影されたソーラーパネルの列

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第3章

ルール違反の正当化

すべての従業員が熱心な環境支持者であるとは限りません。


EYのグローバルインテグリティレポート2022では、パンデミックの余波で多くの企業の倫理基準が完全に低下していることが判明しました11 。

自身を役員に分類した回答者からの回答は、特に実態を捉えたものでした。

母集団:グローバルインテグリティレポート2022での役員(442名)、およびグローバルインテグリティレポート2020の役員(333名)

財務記録の改ざん、賄賂の授受、規制当局や監査人の誤解を招く行為など、不正行為のリストの中で、役員の43%と上級管理職の35%が、個人的な利益のためにこれらのうち少なくとも1つを行うだろうと回答しました。一般従業員の39%が、自分の利益のために、または管理職の要求に応じて、違法または非倫理的な活動を行うことを厭(いと)わないと考えています。

一般従業員は、財務不正を働くときと同様に、ESG関連で不正行為を働く際の自身の行動を正当化するでしょう。「誰も傷つかない」「大したことではない」「企業のより大きな利益のため」というのが、一般的な不正を正当化する理由です。また、ESGパフォーマンスと連動した報酬体系が増えているため、個人の困窮は組織のあらゆるレベルで潜在的な不正リスク要因となっています。

企業上層部の姿勢や行動が極めて重要になりますが、取締役会では、特に企業のESGコミュニケーションと報告について検討する際に、ESGのリスクと課題がどこに存在するかを認識していないケースがあまりに多く存在します。企業が直面している、日進月歩で代わりゆく課題や基準については、上層部の経験不足が問題なのでしょうか。ニューヨーク大学のStern Center for Sustainable Businessの研究では、フォーチュン誌『Fortune100』の役員1,188名12についてESG経験を徹底的に調査したところ、ESGの「E」または「G」のそれぞれに関連する経験があるのはわずか6%で、気候変動に関する特定の専門知識を有しているのはわずか3名(0.2%)でした。貴社の取締役会では、経営陣のどこに厳しい質問を向けるべきか判断できる体制が取られていますか。

リーガルカウンセルはより多くの責任を負っています。CSR(企業の社会的責任)チームとESGチームの報告は、ジェネラルカウンセルに直接行われる形に変わってきています。例えば、Association of Corporate Counsel(コーポレートカウンセル協会)による2022年の最高法務責任者(CLO)の調査では、企業のCSRチームおよびESGチームの24%がそのような報告業務になっていることが分かりましたが、2020年はわずか15%でした13。一方、2023年のレポートでは、この割合は23%と若干低下しましたが、CLOの69%は、ESGへの注目が加速すると考えています(2022年は66%)14

ESGにおける法務部門の役割は急速に進化していますが、管理された規制環境がないため、ポリシー策定が困難になっています。

環境の問題に関連する具体的な規制がない場合は、ポリシー策定が課題であると報告している法務部門の割合
社会的な問題に関して具体的な規制がない場合は、ポリシー策定が困難であると回答している法務部門の割合

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第4章

法による強力な規制

不正のトライアングルは、不正リスクの増大に寄与する、3つの要因の概要を示しています。


関連記事

気候関連リスクを理解し目標を行動に移すには

5回目となるEYグローバル気候変動リスクバロメーターでは、企業からの気候関連の報告は増えたものの、CO2削減目標の達成には至っていないことが示されました。

    現在のESG環境には、「動機(プレッシャー)」「機会」「正当化」という不正のトライアングルの条件がすべて存在します。そして、少なくとも現時点では、規制の状況はこれら3つの要因すべてを養う、肥沃(ひよく)な土壌となっています。
     

    規制が適切であれば、公平な競争の場が確立され、目標は常に行動と一致しているはずです。実際、2021年にIFRS財団によって設立されたISSB(国際サステナビリティ基準審議会)では、投資家と公共政策の双方のニーズを満たすため、サステナビリティ情報開示のグローバルベースラインとなる基準の策定に取り組んでいます。


    英国は現在、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告に沿って、大企業に対して気候関連リスクの報告を求めており、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)では、企業がサステナビリティパフォーマンスに関する詳細情報を公開することを求めています。また、米国では、証券取引委員会が気候関連の情報開示を求める規則の変更を提案しています。


    EY Future Consumer Indexの調査結果で時系列のデータで示されているように、世界の消費者はますます「グリーン」を求めています。持続可能な購買や行動が日常生活の指針であると回答した消費者の割合は、2021年5月の47%から2022年10月には53%に増加しました。これは、企業が「グリーンクレデンシャル(環境配慮の証明)」を誇張する誘因でもあり、規制当局では以下のような準備を進めています。
     

    • デジタル市場・競争及び消費者法案(Digital Markets, Competition and Consumer Bill)を2023年春に英国で導入予定。これにより、誤解を招くグリーンクレームに対して企業に罰則を科す権限を同国の競争・市場庁に付与予定。
    • 環境関連の主張を行うことを検討している企業に「共通の基準」を提供することを目的とした、グリーンクレーム指令の草案を欧州委員会(European Commission)が発表15。


    EYによる2022年度のGeneral Counsel Sustainability Study(ジェネラルカウンセルのサステナビリティに関する調査)では、20カ国において12の業界を代表する企業のジェネラルカウンセルと最高法務責任者(CLO)1,000名を対象にインタビューを実施しました。その結果、サステナビリティの課題や慣行に起因するリスクの中に、訴訟や法執行の強化がもたらす課題があることが明らかになりました16。


    Ernst & Young LLP Forensic & Integrity ServicesのPrincipalであるChandan Sarkarは、次のように説明しています。「ESG関連の主張に関し、誤解を招く広告をめぐる消費者訴訟が増加しています。サステナブルな包装から炭素削減の主張に至る、あらゆる項目が精査され、それらが『ファクトディスカバリ』の段階に進むことを裁判所が容認しつつあることが見て取れますが、これは注目に値する変化と言えるでしょう」
     

    このトピックについて『Harvard Business Review』誌に寄稿した学者らによると、グリーンウォッシングは企業の製品やサービスの顧客体験に直接影響が及ぶものであり、「顧客が企業のグリーンウォッシングを確信している場合、企業の製品・サービスに対する顧客体験に直接悪影響を及ぼす」と述べています17。彼らの発表した調査結果では、グリーンウォッシングを行っているとみなされた企業は、米国顧客満足度指数(ACSI)のスコアが平均で1.34%低下したとされています18。 こうした企業の顧客満足度スコアの低下は小さな変化ではあるものの、企業の業績に重大な影響を及ぼしかねないものです。


    ブランドへのダメージ、顧客の喪失、レピュテーションを損なうようなニュース記事に加え、気候変動への意識が高い労働力からのスタッフの採用・維持に苦慮することなどは、グリーンウォッシングから生じる、無数のリスクの中の1つです。企業はこれにどう対処すればよいのでしょうか。

    農地の脇に設置されたソーラーパネルの高角度ビュー

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    第5章

    インテグリティの統合

    インテグリティ(誠実性)は重要ではあるものの、企業が主張するESGポリシーとその説明責任との間には、ギャップが存在しています。


    EYのグローバルインテグリティレポート2022では、過去最高となる回答者の97%が、企業のインテグリティ(誠実性)が重要であることに同意しています19。しかしながら、上級管理職は企業のインテグリティプログラムの有効性を過信していることが多く、言葉と現実の間のいわゆる「SAY-DO-GAP(言行の不一致)」が広まっています。このことは、企業のESGへの取り組みに影響を与え、グリーンウォッシングの機会の増大につながることが推測されます。

    こうした背景から、グリーンウォッシングは、企業の発言(言っていること)と行動(実際に行っていること)との間の不一致とみなすことができるでしょう。

    上級管理職と役員は、自分たちの発言に裏付があることを確認すべきです。裏付けがない発言では、商業面への影響やレピュテーションの低下、法律や財務上のリスクを負う可能性があることに気を付けなければなりません。さもなければ、管理責任とコーポレートシチズンシップの基本原則(すなわち、企業のインテグリティ)に違反したとして責任をも問われかねません。

    今、金融サービスセクターで何が起こっているかを考えてみてください。企業が実施する投資と販売する製品の双方に対して説明義務があることを確認するため、世界中で広範囲にわたって規制が広まっています。

    「いわゆる『グリーンな』ファンドに投資しようとする場合、そのファンドがその名にふさわしいファンドであることを示す文書の用意がすぐにも必要です。そして、使われている指標や情報が最新であるかどうかや、適切かつ法令に準拠して発信されているかどうかを確認しなければなりません」とSarkarは述べています。
     

    気候関連の報告とさまざまな危機

    SAY-DO-GAPが公になると、企業のレピュテーションやCEO(最高経営責任者)のキャリアは瞬く間に損なわれます。企業のESGパフォーマンスに関する厳格な情報開示義務が施行されるのに伴って、これらのレピュテーションはさらに厳しく精査されることになります。情報開示に関する精査の対象となり、同業他社間での掘り下げた分析や国境を超えた法執行に直面している企業は、公に向けた声明を(戦略、データ、報告を通じて)検証方法を理解する必要があります。その根拠がなければ、声明の意図に関係なく、レピュテーションリスクはグリーンウォッシングと等しいものに捉えられかねないのです。「ESGでは、脅威がどこで発生し、それにどのように対応すればよいかを見極めるのが非常に困難です。グリーンウォッシングの問題を迅速かつ効果的に管理する能力の確保は、取締役会の議題のもっと上位に掲げられる必要があるのです」と、Ernst & Young LLP Forensic & Integrity ServicesのPartnerであるDavid Higginsonは述べています。同氏はまた、自分たちの決定が社会の監視下に置かれる場合、取締役/役員の58%と一般従業員の37%が、「かなり懸念する」または「非常に懸念する」と回答しているEYの調査結果を引用しています20

    インテグリティは、特に企業がさまざまな倫理的ジレンマに直面しているため、定義するのが難しい概念になる可能性があります。重要なのは、目に見えないものを見えるようにし、企業の文化と行動にインテグリティを組み込むことによって、企業と社会の相互依存に向き合うことです。しかし、EYがグローバルインテグリティレポート2022で調査した回答者のうち、規制問題(43%)や倫理(38%)に関する定期的なトレーニングの提供、行動に対する制裁の適用(32%)、サプライヤー(30%)や顧客(28%)に対するデューデリジェンスの実施など、インテグリティ強化対策の基本を活用しているのは、回答者の半数未満でした。

    ここで注意すべきことは、サプライヤーも同様のプレッシャーにさらされていることです。等しく有利な機会に引き込まれる可能性があり、その結果、クライアントや顧客と同様にこうした決定を正当化することが考えられます。言い換えれば、まったく同じ不正のトライアングルが存在するため、グリーンウォッシングとまったく同じリスクが存在し、その影響がサプライチェーン全体に及ぶ可能性があると言えます。

    企業は、事実を前面に押し出し、ESGに対しては「伝えて即示す」アプローチを採用する必要があります。規制当局がこうした戦略を把握しつつあるため、役員も同様に掌握する必要があります。例えば、一部の企業は、輝かしいCSR報告における主張が公式のESG報告と一致していることを保証するために、すでにデータサイエンスを採用しているところです。

    報告内容の整合性がとれており、必須要件であれば、曖昧さが軽減し、報告に対する信頼性が高まるでしょう。そして確実に言えることは、あらゆる利害関係者からのプレッシャーが高まるにつれて、企業は、温室効果ガス排出量などのような、サステナビリティの重要課題や関連する指標(多くの場合、第三者保証付き)について、外部とのコミュニケーションがますます必要となるということです。こうしたコミュニケーションは、企業とその全利害関係者との社会的契約の基盤となります。さらには、サステナビリティを企業戦略の中⼼に据えることで、経済的利益が得られるでしょう。環境パフォーマンスの向上に取り組んでいる500社以上の企業を対象とした最近の調査では、69%が気候変動への取り組みから予想以上の財務的価値が得られていると回答しています21
     

    推奨事項と取るべき行動

    Chandan Sarkar, Principal, Forensic & Integrity Services, Ernst & Young LLP、Zain Raheel, EY Canada Forensics & Integrity Services Leader、 Rob Locke, EY Oceania Forensic & Integrity Services Managing Partner、David Higginson, Partner, Forensic & Integrity Services, Ernst & Young LLPによる寄稿

    1. AR6 Synthesis Report: Climate Change 2023,” IPCC, 2023
    2. Annual Litigation Trends Survey,” Norton Rose Fulbright LLP, 2023
    3. Cambridge Advanced Learner's Dictionary & Thesaurus,” Cambridge University Press, 2023
    4. The greenwashing hydra (pdf),” Planet Tracker, January 2023
    5. NET ZERO: Syncing ambition with outcomes across the CPGvalue chain (pdf),” Alix Partners, June 2022
    6. ESG investing faces challenges from all sides. Can it survive?,” Fortune, December 2022, Lorrie Clarke
    7. Businesses and investors at odds over sustainability efforts,” EY website, November 2022
    8. コーポレートレポーティングでESGの信頼格差を解消するには」、EYウェブサイト、2022年11月
    9. Aggregate Confusion: The Divergence of ESG Ratings,” Oxford Academic, Review of Finance, Volume 26, Issue 6, November 2022
    10. Screening of websites for ‘greenwashing': half of green claims lack evidence,” European Commission, January 2021
    11. 木を見るべきか、森を見るべきか?」、EYウェブサイト、2022年6月
    12. US Boards Suffer Inadequate Expertise in Material ESG Matters,” NYU Stern Center for Sustainable Business, January 2021
    13. Chief Legal Officers Survey,” Association of Corporate Counsel, 2022  
    14. Chief Legal Officers Survey,” Association of Corporate Counsel, 2023 
    15. Proposal for a Directive on Green Claims,” European Commission, March 2023
    16. ジェネラルカウンセル(最高法務責任者)が直面する喫緊の課題:法務部門がサステナビリティ戦略実行の鍵を握る」、EYウェブサイト、2022年4月
    17. How Greenwashing Affects the Bottom Line,” Harvard Business Review, July 2022
    18. The Impact of Perceived Greenwashing on Customer Satisfaction and the Contingent Role of Capability Reputation,” Springer Link, Journal of Business Ethics, June 2022
    19. 木を見るべきか、森を見るべきか?」、EYウェブサイト、2022年6月
    20. 木を見るべきか、森を見るべきか?」、EYウェブサイト、2022年6月
    21. 「気候変動を遅らせることで、どのように財務業績を向上させることができるのか︖」、EYウェブサイト、2022年11月

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      サマリー

      ESGは企業上層部が主導し、企業文化と戦略に統合させる必要があります。企業のESG目標と実績情報は、監視に耐え、グリーンウォッシング疑惑が生じないように、可視性と測定可能性を備える必要があります。


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