ニュースリリース
2023年4月14日  | Tokyo, JP

EY調査、企業と投資家の間でサステナビリティの取り組みに対して温度差

『EY Global Corporate Reporting and Institutional Investor Survey』を発表

プレス窓口

・サステナビリティに対する期待に企業トップと投資家の間で大きな格差があることが判明。これは資本市場および気候変動対策への脅威
・78%の投資家は、たとえ短期的利益に悪影響がもたらされるとしても、企業がESG(環境・社会・ガバナンス)に注力することを希望。一方、それに前向きな企業は55%のみ
・76%の投資家が、企業は自社のサステナビリティ活動について「都合のいい情報だけ開示している」と回答

EYは、企業と投資家の意識を調査したレポート「EY Global Corporate Reporting and Institutional Investor Survey」(以下、「本調査」)を発表したことをお知らせします。企業と世界に広がる投資家の多くの間に、サステナビリティ活動に対する意識の相違がある、多くの企業・組織で資本調達が滞る恐れ、および脱炭素化の進展が妨げられる可能性があることが本調査で判明しました。

本調査は、サステナビリティ投資および情報開示に対する期待や目標について、企業の最高財務責任者(CFO)あるいは他の財務部門シニアリーダー1,040名、および世界各国の機関投資家320名の見解を調査したものです。

長期的投資か短期的利益か

本調査によると、4分の3以上の投資家(78%)が、たとえ短期的には利益の減少につながったとしても、企業はESG関連課題の改善に投資すべきだと回答しています。しかし、同じ考えをもつ企業のリーダーは55%にとどまっています。そして、企業の半数以上(53%)は、実際のところは、短期的な利益還元を求める投資家からの圧力のため、長期的投資を促進する試みが阻害されていると考えています。本調査に参加した財務部門リーダーの5人に1人(20%)は、投資家はサステナビリティ投資を含む長期的投資に対して「無関心である」とさえ回答していました。

EY Japan 気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダーの牛島 慶一( うしじま けいいち)のコメント:
「ESG課題に投資すべきという投資家が多く存在する一方、短期的な利益への圧力を感じている企業の肌感覚の間には、大きな隔たりがあります。経済ルールが変わるということは、新たな勝者と敗者を生みます。ゲームチェンジを急げば分断が進み、テンポを遅らせれば気候変動問題など、取り返しのつかない事態に陥ります。ESG経営や投資の実効性を高めるには、政治のリーダーシップ、企業と実証、消費者の行動変容、科学的検証など、多くの変革を同期させていくことが重要になります。日本では、グローバル展開している一部の企業を除き、受動的かつ形式的にESGやサステナビリティに取り組む傾向があります。一方、業界秩序をリードするグローバルリーダーは、ESGやサステナビリティを競争優位の構築に活用し始めています。ESGやサステナビリティへの投資を企業価値に結び付けるには、経営の腹落ちと戦略的意志を持ったESGやサステナビリティへの投資が必要です」

グリーンウォッシュ(環境問題に取り組んでように見せかけること)の懸念

一方、投資家は、企業のサステナビリティ活動に関する重要情報の開示アプローチに対しても、とても批判的です。ほとんどの投資家(99%)が、投資の意思決定をする上で、企業のESG情報開示が重要な部分を占めていると回答していますが、そのうちの4分の3(76%)は企業や組織は、開示する情報を「非常にえり好みしている」と感じており、グリーンウォッシュを懸念しています。そして、こうした投資家のほぼ9割(88%)が、企業は情報開示を強制された時にのみ、情報を開示していると考えています。

また、サステナビリティ関連の長期的投資をしている企業については、80%の投資家は、これら企業はしばしば投資の根拠を説明できておらず、そのためサステナビリティ関連の長期的投資を評価することが困難であると主張しています。

改善の余地

興味深いことに、企業の多くが自社の情報開示アプローチに改善の余地があると認識しているようです。本調査に参加した企業・組織のうち、サステナビリティに関する重要な情報を投資家に提供していると回答したのは、半数をやや上回る企業・組織(54%)だけでした。つまり、そうしていないと認識している企業・組織が相当数存在することになります。また、本調査に応じた財務部門リーダーの5分の2(41%)が、自社の現在のESG情報開示は、いわゆる「合理的な保証」という基本的な保証基準の要件さえも満たすことが難しいことを認めています。 

EYグローバル・気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダーのMatthew Bellのコメント:
「企業は、サステナビリティ活動に取り組んでいることを証明するうえで、苦労しながらも前進していることに疑いの余地はありません。しかも、こうした進歩を、経済のボラティリティや地政学的不安定要因の潮流の中で遂げているのです。しかし、社会が企業のこうした努力に目を向け評価するのは、その活動が信頼に足ると認めた場合のみです。サステナビリティの目標と期待において、企業とそれを支える投資家の間にはいまだに大きな意識の相違があることを、本調査が示しています。しかし、冷静に考えると、これは意識の相違で済まされるような問題ではありません。つまり、これは両者の分断であり、それは、資本市場の潤滑な運営、そして最終的には気候変動に対する取り組みへの真の脅威となるものです」

情報開示の欠陥に対する共通認識

一方、企業と投資家の間にはある種の共通認識があることも、本調査は明示しています。両者は、現在の情報開示基準が弱いという点で合意しているのです。そして、改善が求められる主要な点として、開示された情報の根拠を求める要件の不足、ESG情報開示が主たる財務報告から切り離されていること、将来の計画を提示するような情報開示の欠落、を挙げています。本調査では、企業・組織が信頼を向上させるために講じることのできるステップを概説しています。そこで強調されている2つの優先事項は、投資家の期待に応えることができるように、サステナビリティ情報開示の設計を改善すること、そして、サステナビリティ情報開示において財務部門リーダーおよび財務ファンクションの役割を向上させることです。 

EYグローバル・財務会計アドバイザリーサービス(FAAS)リーダーのTim Gordonのコメント:
「信頼とレピュテーションの確保を長期的な優先事項として真剣に考えている企業は確実に、サステナビリティを自社の情報開示プロセスに包括的、戦略的、堅固に組み込む必要があります。それができて初めて、投資家の懐疑的な見方が弱まり、企業はサステナビリティをこれまで以上に進展させる努力が認められていると実感することができるでしょう」

※本ニュースリリースは、2022年11月11日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:
Businesses and investors at odds over sustainability efforts


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本ニュースリリースは、EYのグローバルネットワークのメンバーファームであるEYGM Limitedが発行したものです。同社は、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。

本調査について

本調査レポートは、企業と投資家の両者の意見を調査した、ユニークなサーベイの結果をまとめたものです。本調査は、情報開示とサステナビリティの論議における新たな視点を、情報を開示する側と開示された情報を利用する側の両者の観点から提供しています。本調査を実施したのは、FT-Longitude社です。同社は、EYグローバル・財務会計アドバイザリーサービス(FAAS)およびEYグローバル・気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)の代理として本調査を行いました。

本調査に回答したのは、大企業・組織の最高財務責任者(CFO)および他の財務部門責任者1,040名、および世界各国の機関投資家のメンバー320名でした。

  • 1,040名の企業側回答者のうち、50%はCFO(共同CFO16%を含む)、34%は財務部門責任者でした。これら回答者は、Americas、欧州、Asia-Pacificの25か国、14セクターを網羅していました。本調査に参加した企業・組織の29%は、これまでの年間売上が100億米ドル以上でした。
  • 320名の機関投資家サイドの回答者は、Americas、欧州、Asia-Pacificの23か国にまたがり、そのうち、4分の1以上(27%)が最高投資責任者でした。回答者は金融セクターの中でも、銀行・証券、保険、アセットマネジメントとさまざまなセグメントに属していました。これら機関投資家の5分の1(20%)が、500億米ドル以上の資産を運用していました

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