製作委員会 製作委員会の概要

2024年6月27日
カテゴリー 業種別会計

EY新日本有限責任監査法人 メディア・エンターテインメントセクター
公認会計士 泉家 章男

1. はじめに

我が国における映画等の映像コンテンツ製作の実務においては、製作委員会方式が用いられることが一般的です。近年においては、テクノロジー発展・販売チャネル多様化・海外需要増加等を背景として特にアニメ作品の市場規模が年々拡大傾向にあり、新規参入企業も増加しています。

今回は製作委員会の概要について解説をします。
なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをあらかじめ申し添えます。

また、本記事に関する動画(EY Japan YouTubeチャンネル)もご参照下さい。

2. 製作委員会の概要

(1) 製作委員会とは

製作委員会とは、コンテンツ製作・販売にあたり、映画会社・テレビ局・広告代理店・制作プロダクション・ゲーム会社等が共同製作・利用・管理運用等に関する契約を締結し、製作費等の出資を行うことで組成される組織体であり、当該組織は民法上の任意組合(民法667条)の形式とすることが一般的です。

製作委員会の契約書は、「共同製作契約書」等の名称が用いられることが多く、コンテンツ利用の円滑化・効率化を図ることを目的に幹事会社・非幹事会社の役割(幹事業務の内容、制作担当会社や各2次利用に関する窓口の担当割など)、製作予算等の金額、各社の取り分(利益の配分方法や配分時期、成功報酬の有無、各窓口業務に関する手数料率の設定等)などが定められます。

製作委員会方式における一般的なスキームは以下のとおりです。

製作委員会スキーム図

製作委員会スキーム図

製作委員会の契約が締結・組成されると、幹事会社は、他の非幹事会社からの出資金をとりまとめ、映画等のコンテンツの製作費に充当します。実際の制作業務は制作プロダクション等に委託するケースが多く、完成したコンテンツの著作権は製作委員会に帰属し、各出資者が共同保有する形になります。

その後、製作委員会の契約において定めた各二次利用の窓口を担当する会社、すなわち窓口会社が、それぞれの分担に基づきコンテンツの販売(配給、パッケージ販売、インターネット配信、テレビ放映、関連グッズの商品化等)を行います。

そして、それぞれの販売によって得た収入は、各窓口会社の取り分たる窓口手数料を差し引いた上で幹事会社に集約され、幹事会社が一定期間ごとに「配分金計算書」などと呼ばれる計算書を作成して、出資割合に基づき各出資者に配分されることになります。

(2) 製作委員会の特徴

製作委員会の主な特徴は以下のとおりです。

  • コンテンツの著作権は製作委員会に帰属する(=出資者全員の共有財産となる)こと
  • 製作委員会の出資者はコンテンツ関連企業(映像制作会社、映画配給会社、ビデオ制作会社、テレビ局、広告代理店、出版社、玩具会社など)であることがほとんどであり、各出資者が様々な二次利用(配給、放送、ビデオグラム化、自動公衆送信、商品化など)の窓口となって本業のビジネスとあわせ行うこと
  • 製作委員会の利益(コンテンツから得た利益)は各出資者に配分されること

上記の特徴を踏まえた製作委員会方式の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
高額な製作費を複数企業が出資して支払うため、投資の回収リスクが分散できること 複数企業が出資を行うため、リターンが分散されること
出資者全員が当事者として宣伝協力や販売を行うため、出資者の得意分野を結集できること
多数の出資者の意見が反映されるため、一般受けする作品となりやすいこと 個性的なオリジナル作品が生まれにくいこと
出資者は制作業務に直接関与せずとも著作権を共同所有できるため、一定のリターンを享受できること 制作会社が出資を行わない場合、制作会社はコンテンツからのロイヤルティ等を受け取ることができず、制作受託収入のみでは十分なリターンが享受できない可能性があること
コンテンツの利用に関する意思決定等が遅くなる可能性があること

(3) 製作委員会に関する法的位置付け

民法上の任意組合(民法667 条)等の組合契約に基づく出資は、金融商品取引法の適用対象となります(金融商品取引法第2条第2項第5号)。

しかしながら、我が国で組成されている製作委員会は、その契約条件・座組の状況から出資者全てが出資対象事業に従事することなど一定の要件を満たし、公益又は出資者の保護のために支障を生ずることがないと認められる場合に該当するため、有価証券とはみなされず、金融商品取引法の適用除外となるケースが多いと考えられます(金融庁 コンテンツ事業に関するQ&A 問1)。

※ 【金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令 第7条第1項第3号】

三 法人その他の団体が他の法人その他の団体と共同して専らコンテンツ事業(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(平成十六年法律第八十一号)第二条第三項に規定するコンテンツ事業をいい、これに附帯する事業を含む。)を行うことを約する契約に基づく権利であって、次に掲げる要件の全てに該当するもの

イ 出資者(当該権利を有する者をいう。以下この号において同じ。)の全てが、当該権利に係る出資対象事業の全部又は一部に従事すること(出資者の親会社等(令第十五条の十六第三項に規定する親会社等をいう。ロにおいて同じ。)又は子会社等(同項に規定する子会社等をいう。ロにおいて同じ。)が当該出資対象事業の全部又は一部に従事することを含む。)。

ロ 出資者の全てが、当該権利に係る出資対象事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利のほか、次に掲げる権利のいずれかを有すること(出資者の親会社等又は子会社等が次に掲げる権利のいずれかを有することを含む。)。
(1) 当該出資対象事業に従事した対価の支払を受ける権利
(2) 当該出資対象事業に係るコンテンツの利用(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律第二条第二項第二号に掲げる行為をいう。)に際し、当該出資者(その親会社等又は子会社等を含む。以下(2)において同じ。)の名称の表示をし又は当該出資者の事業につき広告若しくは宣伝をすることができる権利

ハ 当該権利について、他の出資者に譲渡する場合及び他の出資者の全ての同意を得て出資者以外の者に譲渡する場合以外の譲渡が禁止されること。

(4) 製作委員会に関する会計処理

我が国で組成されている製作委員会の契約条件・座組は多種様々ですが、製作委員会に関する会計処理を直接的かつ体系的に定めた会計基準等はないため、実務上は関連する会計基準等を斟酌しつつ、各社の出資目的・製作委員会における役割等の経済的実態を適切に反映するように会計処理が行われています。

今回は、実務上、よく議論がなされる以下の3項目についてポイント解説を行います。

a. 製作委員会に対する出資金の会計処理について(計上科目、費用化の方法)
b. 各窓口業務に関する収益認識について(本人・代理人の論点)
c. 製作委員会の連結要否について
 

a. 製作委員会に対する出資金の会計処理について(計上科目、費用化の方法)

製作委員会の各出資者における出資金の会計処理について、製作委員会の組織が民法上の任意組合であり、金融商品取引法で定める「みなし有価証券」(「金融商品取引法」第2条第2項第5号)に該当する場合には、金融商品会計基準等に基づき、原則として、組合等の財産の持分相当額を出資金として計上し、組合等の営業により獲得した純損益の持分相当額を当期の純損益として計上することになります(会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」132項)。

しかしながら、我が国の実務においては、上記2.(3)製作委員会に関する法的位置付けで記載した通り、製作委員会の出資の多くは「みなし有価証券」には該当せず、金融商品取引法の適用除外となるケースが多いと考えられる点や、製作委員会に係る決算書の作成義務が無い点など、多様な実情が存在することを踏まえ、会社ごとに、その契約内容の実態及び経営者の意図を考慮して、経済実態を適切に反映する会計処理及び表示がなされていると考えられます。

より具体的には、実務上、製作委員会の出資時の会計処理については、製作委員会の出資金が実質的に製作費等であり共同で取得する映画等の映像コンテンツそのものであるという経済実態を反映させるため、金融商品ではなく、棚卸資産や無形固定資産等の勘定科目で処理されている事例が多く見られます。

また、出資後の会計処理については、出資金が実質的に制作費等であり共同で取得するコンテンツそのものであるという点を踏まえて、当該コンテンツの利用により将来獲得する収益(各窓口会社がコンテンツの利用により獲得した収入や当該収入を原資にした配分金収入)との対応関係を図ることや、コンテンツの利用の実態等を総合的に勘案し、出資金を以下のような一定の方法で償却する事例が多く見られます。

(イ)将来の予測収益等に基づく償却方法

(ロ)法人税法に基づく償却方法

  • 「映画フィルム」の耐用年数である2年での定率法
  • 国税局長の許可を得た場合における耐用年数の適用等に関する取扱通達の付表6(2)映画用フィルムの特別な償却率(10カ月間)に基づく償却 など

(ハ)その他の償却方法

付表6(2) 映画用フィルムの特別な償却率

上映日からの経過月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
特別な償却率(%) 60 80 87 91 94 96 97 98 99 100

b. 各窓口業務に関する収益認識について(本人・代理人の論点)

製作委員会における各窓口会社は、製作委員会の契約書において、配給権・放映権・ビデオグラム化権・自動公衆送信権・商品化権などの各二次利用権が割り当てられ、自らが契約当事者となって第三者に対して権利販売等を行い、「窓口収入」と呼ばれる収入を得るとともに、対応する費用として、窓口収入から製品等の製造原価・窓口手数料・窓口経費等を控除した残額を製作委員会に支払います(下記図表を参照)。

製作委員会スキーム図より一部抜粋

製作委員会スキーム図より一部抜粋

このように、窓口会社は、製作委員会と権利販売先の第三者との間に入ってビジネスを行っていることから、収益認識会計基準における本人・代理人取引のいずれに該当するか(収益を総額で表示するか純額で表示するか)を判断する必要があります。

この点、本人と代理人のどちらに該当するかについては、企業が提供する財又はサービスが顧客に提供される前に企業が支配(企業が財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有していること)している場合は本人に該当し、支配していない場合は代理人に該当すると判断することになります(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「収益認識基準適用指針」)第42項)。ただし、当該支配の定義を満たしているかどうかの判断が必ずしも容易でないことから、収益認識基準適用指針第47項では、当該支配の有無を判断するために考慮する三つの指標の例が次のとおり示されています。

(ⅰ)企業が顧客に対する契約の履行について、主たる責任を有している
(ⅱ)企業が在庫リスクを有している
(ⅲ)企業が財又はサービスの価格の設定において、裁量権を有している

具体例として、DVD等のパッケージ窓口業務を挙げると、窓口会社自らがDVD等のパッケージ制作を行い、在庫リスクを負った上で、各小売店等と価格交渉を行って販売している場合においては、DVD等の「財」を顧客に提供する前に支配していると判断することができ、本人取引として対価の総額を収益として認識するケースが多いと考えられます。

一方で、窓口会社は特定の会社にビデオグラム化権の販売のみを行い、自らはDVD等のパッケージ制作・販売業務には関与しない場合があり、その場合は映像作品に関する著作権の支分権(頒布権等)の利用を顧客に許諾するものであることから、「収益認識基準適用指針」第143項の「ライセンスの供与」に該当し、収益認識方法を検討することとなります(ライセンスの供与の収益認識に関する詳細は、「映画ビジネス 第2回:映画ビジネスの収益認識 2. 二次利用権(マルチユース)に係る収益認識」の記載を参照)。実務上、窓口会社が行う「ライセンスの供与」が、本人と代理人のどちらに該当するかについては、様々な判断がなされています。

(本人取引として判断するケース)

製作委員会の実務において、以下に例示したような実態が存在する場合には、窓口会社が行う窓口業務は一定のリスクと責任を有していると判断し、いわゆる本人取引として窓口収入総額を収益認識するケースが見受けられます。しかしながら、窓口業務については、個別契約毎にその役割等が異なることから、商流の全体像を正しく理解し、経済的実態を勘案した上で総合的に判断する必要がある点、留意が必要です。

  • 窓口業務に係る収益の最大化を達成するため、顧客の選定や販売条件交渉・宣伝活動など窓口業務に関する重要な活動を窓口会社が行うこと
  • 製作委員会の契約において、各種二次利用権が窓口会社に割り当てられていること
  • 窓口業務は窓口会社に一任され、窓口業務において想定通りの収益が獲得できず損失が発生した場合には窓口会社がその損失を負担すること
  • 製作委員会は法人格がないため、窓口会社が自己の名で最終的な顧客と契約を行うこと

本人取引として判断するケース
(代理人取引として判断するケース)

窓口会社が行う窓口業務は、製作委員会の業務を代理で行うにすぎず、窓口業務において想定通りの収益が獲得できず損失が発生した場合にも製作委員会の出資者全員がその損失を負担することとなるなど、窓口会社が窓口業務に関してリスクと責任を有していないと判断される場合は、いわゆる代理人取引として手数料部分を純額で収益計上するケースも見受けられます。

代理人取引として判断するケース

なお、窓口会社が獲得した利益は、その後、製作委員会の出資者間で分配することとなりますが、窓口会社が製作委員会の出資者を兼ねる場合の配分金収入の収益認識方法については、実務上、多様な会計処理が行われております。

出資者の立場における会計処理については、「a.製作委員会に対する出資金の会計処理について(計上科目、費用化の方法)」で上述した通り、製作委員会の組織が民法上の任意組合である場合においては、金融商品会計基準等に定める組合の会計処理に従い、組合の持分・損益を各出資者(組合員)が出資割合に応じて取り込むこととなります。出資者(組合員)が組合の持分・損益を取り込む方法には、以下の3方法があります。

(イ)純額方式(Net-Net法)
貸借対照表・損益計算書とも持分相当額を純額で計上する方法

(ロ)損益帰属方式(Gross-Net法)
貸借対照表は純額で計上し損益計算書は損益項目の持分相当額を計上する方法

(ハ)完全認識方式(Gross-Gross法)
貸借対照表・損益計算書とも各項目の持分相当額を計上する方法

上記の3方法はいずれも金融商品会計基準にて採用が認められており、金融商品会計の実務指針では「契約内容の実態及び経営者の意図を考慮して、経済実態を適切に反映する会計処理及び表示を選択する」とされています(金融商品会計実務指針308項)。このため、組合への出資の実態・意図等を考慮し、どの方法を採用するか決定する必要があります。

また、窓口会社が獲得した利益を原資とした配分金収入に関する会計処理については、上記の3方法の選択による相違に加えて、窓口会社における窓口収入を本人・代理人のどちらで判断するかにより、持分・損益を取り込む対象となる製作委員会の会計処理が異なる結果、さらに相違が生じると考えられます。

より具体的には、製作委員会の顧客が窓口会社と判断する場合(窓口会社における窓口業務は本人と判断する場合)は、製作委員会の損益計算書には窓口会社からの受取許諾料のみが計上され、当該損益の持分相当額を配分金収入等として取り込むこととなります。一方で、製作委員会の顧客が窓口会社の販売先と判断する場合(窓口会社における窓口業務は代理人と判断する場合)は、製作委員会の損益計算書において窓口収入相当額や窓口経費相当額等が総額で計上されることとなるため、当該損益をNet又はGrossで取り込むこととなります。

一連の会計処理を図表に表すと次のようになります。

会計処理

※1 出資比率は20%と仮定しています。

※2 実務上、売上高(配分金収入)は、売上原価(製作委員会への支払許諾料)の控除項目として処理するケースも見受けられます。

※3 開示上、窓口会社の立場として計上した売上高(窓口手数料)と出資者の立場として計上した売上原価(窓口会社の窓口手数料)は相殺して表示することが考えられます。

このように、製作委員会を取り巻く各社の役割・資金の流れ・契約条件等は多岐に渡るため、契約内容の実態及び経営者の意図を考慮して、一連の取引の経済実態を適切に反映する会計処理を決定することが必要となる点、留意が必要となります。

c. 製作委員会の連結要否について

製作委員会は、通常、その契約書(共同製作契約書等)において出資者全員の合意によって重要な事項が定められており、また、事業の遂行においても、重要事項の決定には出資者全員の同意が必要とされています。そのため、特定の出資者による支配が認められず、連結対象とならないと判断するケースもあると考えられます。

また、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の留意事項についてのQ&A」Q12なお書きを類推して、連結実務上では製作委員会は個別の組織体として認識せず、単体決算で自社持分相当額を貸借対照表や損益計算書に取り込む形で会計処理を行っているケースもあると考えられます。

Q12:子会社及び関連会社の範囲に含まれる「会社に準ずる事業体」の判定に当たっての留意事項を示してください。

A:適用指針第28項では、子会社及び関連会社の範囲に含まれる「会社に準ずる事業体」には、「資産の流動化に関する法律」に基づく特定目的会社や「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づく投資法人、投資事業組合、海外における同様の事業を営む事業体、パートナーシップその他これらに準ずる事業体で営利を目的とする事業体が該当するものと考えられるとされています。

また、財団法人・社団法人などの公益法人は、収益事業を行っている場合もありますが、本来営利を目的とするものでないため、原則として、会社に準ずる事業体には該当しないものと考えられます。

民法上の組合については、当該組合の財務諸表に基づいて、当該組合に対する出資等に対応する数値が個別財務諸表に反映されていますが、このことと子会社に該当し連結の範囲に含まれることとは別個に判断すべきであり、子会社に該当するか否かは、あくまでも支配力基準によって判定することとなります(企業会計基準委員会 実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第20号」という。)参照)。

なお、我が国における建設業のジョイントベンチャーは、法的には民法上の組合に相当するものと考えられていますが、現行会計実務上はまた年一定の時期に規則的な決算を行うことなく、構成員各社の会計に組み込む形態となっているため、連結実務上では個別の組織体として認識しないことが適切と考えられます。

(5) 製作委員会に関する税務処理

製作委員会の税務については、出資者である組合員に直接課税される(パススルー課税)点が大きな特徴です。すなわち、製作委員会の損益は、組合員である幹事会社や非幹事会社の損益として法人税(組合員が個人の場合は所得税)が課せられます(法人税基本通達 14-1-1)。

消費税等についても同様に、各組合員が出資比率に応じて製作委員会が事業として行う課税資産の譲渡等若しくは課税仕入又は外国貨物の引取りを行ったものとして、組合員ごとに消費税等の申告納付を行うことになります(消費税法基本通達 1-3-1)。

なお、インボイス制度の開始に伴い、製作委員会(民法上の任意組合に該当する場合)が事業として行う課税資産の譲渡等について適格請求書を交付するためには、以下の2要件を満たす必要がある点に留意が必要です(「消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A」問50)。

  • 製作委員会の組合員の全てが適格請求書発行事業者である。
  • 民法第670条第3項に規定する業務執行者などの業務執行組合員が、納税地を所轄する税務署長に「任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出書」を提出する。

(6) 製作委員会とその他の組織体との異同

上述した通り、製作委員会の組織は民法上の任意組合(民法第667条)に該当するケースが多いと考えられますが、民法上の任意組合は、組織の運営方法を組合員内部で自由に決定することができることや、決算書の作成義務や登記の必要性がないこと、税務処理が出資者である組合員に直接課税されるパススルー課税であること等の観点から組織運営が簡易であるといった特徴があります。

その他の代表的な組織体(株式会社・LLP)との異同は以下のとおりです。

  製作委員会
(任意組合)
株式会社 LLP
(有限責任事業組合)
法人格 なし あり なし
出資者の責任 無限責任 出資額を限度 出資額を限度
意思決定機関 存在しない 株主総会
(取締役会)
存在しない
意思決定方法 組合員の数に応じる
(原則過半数だが、契約により自由)
株式の議決権数に応じる
(取締役会においては取締役の数に応じる)
組合員の数に応じる
(原則全員一致だが、重要な財産の処分等を除き、契約により自由)
業務執行 各組合員 取締役等 各組合員
財産の帰属 組合員に帰属
(合有財産)
会社に帰属 組合員に帰属
(合有財産)
課税 組合員課税
(パススルー課税)
法人課税 組合員課税
(パススルー課税)
決算書 作成義務なし
(分配・税務の観点から損益計算は必要)
作成義務あり 作成義務あり
登記 必要なし 必要あり 必要あり

出典:経済産業省「LLPに関する40の質問と40の答え(FAQ)2005年6月」(2024年6月14日アクセス)より執筆者作

3. おわりに

我が国の映画コンテンツ製作は製作委員会方式が用いられることが一般的ですが、ゲーム製作やアニメ製作などでも製作委員会方式が用いられるケースがみられます。一方で、制作会社や配信プラットフォーマー等がリスクをとり単独出資する事例もある他、少額予算の作品であればクラウドファンディングで資金調達が行われるなど、新たな潮流も見受けられます。映画コンテンツ製作に関するファイナンス手法については、今後も引き続き製作委員会方式が多く用いられることが予想されますが、一定程度の多様化が進んでいくものと考えられます。

なお、製作委員会方式では、実務上、契約条件・座組が仮決定の状態でコンテンツ製作が開始されることも多いほか、製作委員会に出資する会社数が多い場合は商流や資金の流れが複雑になる傾向にあります。そのため、製作委員会に関する会計処理については、各出資者の出資目的・役割を含め商流の全体像を正しく理解し、経済的実態を勘案した上で行うことが重要と考えます。

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