2021年3月期 有報開示事例分析 第6回:見積開示会計基準(IFRS適用会社との項目数比較)

2022年2月2日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 兵藤 伸考

Question

2021年3月決算のIFRS適用会社について、重要な会計上の見積り及び判断に関する記載状況は?

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2021年8月
  • 調査対象期間:2021年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:2021年4月1日現在の以下の条件に該当する会社108社
    ① 3月31日決算
    ② 2021年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ③ IFRS基準を採用している
    ④ 重要な会計上の見積り及び判断について具体的な見積項目を開示している

【調査結果】

IFRS適用会社の有報については、国際会計基準審議会が2003年に公表した改正国際会計基準1号(以下「IAS第1号」という。)125項に基づき、見積りの不確実性の発生要因の開示が求められている。IAS第1号125項によれば、翌事業年度における資産や負債の帳簿価額に重要な修正をもたらす著しいリスクを伴う、報告期間の末日における将来に関する主要な仮定及び主要な見積り上の不確実性のその他の要因を開示する必要があるとされている。また、IAS第1号125項に関する開示は、将来について経営者が行う判断を財務諸表の利用者が理解するのに役立つように行う必要があるとされている(IAS第1号129項)。

2021年3月期のIFRS適用会社の有報について、21021年3月期の日本基準適用会社の有報における重要な会計上の見積りに関する注記との比較分析を行った。

IFRS基準適用会社のうち重要な会計上の見積り及び判断について具体的な見積項目を開示している会社(以下「IFRS分析対象会社」という。)108社について、重要な会計上の見積りの記載項目数を調査した。調査結果及び日本基準分析対象会社203社(注)の調査結果との比較分析は<図表1>のとおりである。

IFRS分析対象会社における平均記載項目数は5.4個であり、日本基準分析対象会社(連結)の平均記載項目数1.7個に対して3倍以上の記載項目数となっていた。

なお、日本基準の有報における、重要な会計上の見積りに関する注記の開示項目数分析については「2021年3月期 有報開示事例分析 第2回:見積開示会計基準(見積開示項目数)」を参照されたい。

<図表1>IFRS分析対象会社の記載項目数分析
  対象会社数(社) 記載項目合計(個) 平均記載項目数(個) 最大記載項目数(個)
IFRS 108 586 5.4 19
日本基準(連結) 201 (※)342 1.7 6

(※)日本基準分析対象会社のうち、2社については連結財務諸表を作成していない。
(注)日本基準分析対象会社:2021年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する203社

① 3月31日決算
② 2021年6月30日までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用している

記載項目数の分布状況は<図表2>のとおりである。最も記載項目数が多かった会社が19個であり、記載項目数が5個(16社:14.8%)及び6個(16社:14.8%)の会社が最も多かった。

また、IFRS分析対象会社の有報は、ほとんどの会社が各見積項目の内容について会計方針等の他の注記事項を参照する形式で記載を行っていた。

<図表2>記載項目数の分布状況
記載項目数 会社数(社) 比率(%)
10個以上 11 10.2
5個以上10個未満 51 47.2
4個 15 13.9
3個 14 13.0
2個 12 11.1
1個 5 4.6
合計 108 100.0

(旬刊経理情報(中央経済社)2021年10月10日号 No.1624「2021年3月期有報における 見積り関連注記の開示分析」を一部修正)