CEOが直面する喫緊の課題:景気後退の新たな現実に対応するには
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CEOが直面する喫緊の課題:急激なインフレの中、果敢に投資を続けていくには (PDF)
2023年1月のCEO Outlook Pulseの調査結果から、世界的な景気減速の影響について、CEOの意見が割れていることが分かりました。
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要点
CEOは世界経済の⾒通しや⾃社の業績には悲観的だが、パンデミックから得た教訓を⽣かして、逆⾵や今後予想される景気後退を乗り切ろうとしている。 地政学的情勢はM&A(合併・買収)戦略に⼤きな影響を与え、CEOは政治的な利害が⼀致する国に投資を集中させている。 CEOは、ブランド価値を創造し、顧客や従業員などのステークホルダーとの信頼関係を構築するため、ESG(環境・社会・ガバナンス)を⾃社の戦略に織り込むようになってきた。
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EY Japanの視点
予想している経済後退が穏やかなものであれ、厳しいものであれこれまでの経験だけを生かして乗り切れるものではないことは多くのCEOが認識しているようです。地政学的再編からグローバル・サプライチェーンの再考まで、新たな要因の組み合わせが、既存の問題に加わり、投資計画を脅かしています。新型コロナウイルスに関係する不確実性への懸念が、今回は日本を含むアジア・パシフィック地域の間でこれまでと比べて低い数値となりましたが、これは中国のゼロコロナ政策の緩和や国境の再開が大きく関わってきていると思われます。本格的なWith コロナ時代への突入を意味し、CEOはこの経済不況を乗り切るための喫緊の課題へ対策をシフトしていることを示しています。他国と比べるとまだ低い日本のインフレ率が今後上昇し、投入価格および資本コストの上昇への懸念が今後顕著になると予想されます。そのためCEOにとっては自国を含む各国政府の財務政策および法規制が最大の関心事となっているようです。
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日本結果(日本企業のCEOへの調査結果)はこちら
EY調査、CEOの大半が深刻な景気後退を懸念
EYは、最新のM&Aに関する調査レポート「The CEO Outlook Pulse January 2023」を発表したことをお知らせします。本調査は、EYがグローバルで活躍する企業のCEOに調査を行い、1,200人(日本70人)の回答を分析し、今後の見通し、課題、そしてビジネスチャンスなどに関する意識を調査したものです。
景気後退は、中程度か深刻か、⼀時的か持続的か。世界各国のCEOの間では、経済⾒通しに対する意⾒が割れており、このため2023年のビジネス環境を定義するとみられる不確実性が浮かび上がっています。EYが世界各国のCEO 1,200名を対象に調査を⾏った結果、回答者の半数近くが世界経済の中程度の減速を予想しているのに対して、半数強がその期間と深刻度の点において2008年から2010年の世界⾦融危機を上回る景気後退を恐れていることが分かりました。
CEOが直面する喫緊の課題(CEO Imperative)シリーズの最新版 では、CEOが組織の未来を再構築するための重要な解決策とアクションを提起します。本稿では、企業が多くの難題に対峙している現状を明らかにします。CEOは、⼤胆な戦略的決定を下しながら、事業運営⾯での調整を図り、来るべき嵐を切り抜け、⻑期的な価値創造に向けた軌道を維持しようとしているのです。
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第1章
想定される複数の未来に備える
半分しかないか、まだ半分あるか。いずれにせよ、経済見通しは厳しいと言えます。
四半期ごとに実施するEY CEO Outlook Pulseの最新の調査結果から、世界的な景気減速の影響について、CEOの間で意⾒が割れています。98%という⼤多数が景気後退を予想する⼀⽅、その⻑さ、深度、深刻度ではほとんど意⾒が⼀致していません。興味深いことに、想定される景気後退の水準について見通しを得やすいはずである、⾃らが対応を取り得る市場についても、CEOの⾒⽅は分かれています。
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予想する景気後退が中程度のものか、あるいは深刻なものかにかかわらず、CEOの半数強(55%)が、今回の景気後退はこれまでとは異なる性質のものになると考えているようです。回答では、地政学的転換から、グローバルなサプライチェーンと業務の全⾯的な⾒直しにいたるまで、これまでにない新たな要因が相まって景気が悪化するという⾒⽅で⼀致しています。
また、ほぼ同数の回答者(53%)が、不確実性とボラティリティを特徴とする潜在的な景気後退期が予想される中で、事業のかじ取りをした経験を持つ上級管理職がほとんどいないと考えています。
しかし、今回のような特殊な状況下にあっては、新たな地政学的緊張、サプライチェーンの混乱、⼈材不⾜、今なお続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる影響をはじめとする数々の事象によって、景気後退が助⻑されている現状に対する認識の有無ほどには、過去の景気後退に対処した経験は重要にならないかもしれません。現世代のリーダーが世界的なパンデミックを切り抜ける中で⾝に着けた新しい一連のスキルが、いま⼤いに役⽴つ可能性もあります。
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他方で、回答者の55%が迫り来る景気後退は、かつての世界⾦融危機より深刻なものになると考えているところからも、不確実性の度合いが推し量れます。
先の危機で影響の軽減に役⽴った「セーフティーネット」の数々がもはや存在しないものと、多くのCEOが考えており、そうした懸念が反映されているものとも考えられます。従前の世界的な景気後退を緩和させたのは、中国の堅調な成⻑に伴う需要創出です。これに加え、経済のグローバリゼーションの⼀翼を担う中国の重要性が⾼まったことが、インフレを抑える⼀助となりました。
最近のインフレ圧⼒と⾦利上昇の動きを考慮すると、景気後退が深刻化した場合、中央銀⾏などの金融監督当局が経済を刺激する余力は、今回は相当に落ちている可能性があります。
その⼀⽅で、世界各国のCEOのおよそ3分の2(58%)が、財政・政策決定により景気後退の最悪の局⾯が緩和されるものと強い信頼を寄せており、ここでも⾒解の相違が浮き彫りとなりました。
数々の潜在的脅威により、リスクレーダーは妨害の危機に瀕す
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EYの10⽉のCEO Outlook Pulseの調査結果(PDF) で重大な課題として注⽬されたのは、⻑引くパンデミック関連の懸念でした。こうした懸念は今回の結果では薄らいだものの、今回CEOの3分の1がパンデミック関連の混乱を重要課題として挙げており、前回の43%からは減少したとはいえ依然として重要視されていることに変わりはありません。
今回は、こうしたパンデミックの懸念だけでなく、数々の相互に関連する課題も加わり、CEOの成⻑戦略を脅かしています。
⾦融政策の不確実性と資本コストの上昇は、仕⼊価格やインフレ率の上昇と相互に関係しています。サイバーセキュリティリスクの上昇と地政学的緊張の⾼まりは相互に絡み合っており、特定の国の⽀援を受け、サイバー空間で暗躍するハッカーが企業にとっての脅威となっています。
世界経済の分断化の進展は、主要な市場での規制強化を招くことになりそうです。また、企業の⼈材確保状況と、幅広いESGアジェンダを基盤とするサステナビリティへの取り組みとの結びつきはますます強まっています。
とはいえ、CEOの多くはリスクの裏側にメリットがあるとみており、競合他社に対してより優位な⽴場を獲得しながら、景気後退を切り抜ける機会を⾒極めようとしています。
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そのためには、迅速な対応と先を⾒越した戦略により事業運営を再構築し、自社のビジネスの未来への投資を増やす必要があるといえそうです。
また、こうした対応方法は具体化されつつあります。
新たな地政学的な変化や転換に対応する
変化する環境の中で、CEOが決然とした⾏動をとっていることが調査により明らかになった領域に、新たな地政学的環境があります。ほぼすべてのCEO(97%)が計画していた投資戦略を修正しており、3分の1近く(32%)が同じく計画していた投資を中⽌しました。
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この割合は、数字的には10⽉版のCEO Outlook Pulse調査結果とほぼ同じですが、⼤きな違いがあります。国際的な投資計画を修正した主な理由が、⻑引く新型コロナウイルス感染症関連の問題から競争制限的な規制・貿易・投資政策に変わっており、回答者の28%がこれを最⼤の理由に挙げています。
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⽶中の緊張が⾼まり、多くの中堅国が発言力を強める中、世界は⼀極集中型から多極分散型への移⾏が進み、地政学的な環境は近年ますます不安定化しています。
その結果、グローバル化が進む中で世界貿易が⽐較的⾃由化されていた時代は、少なくとも現在のところ終わりを告げました。それに伴い、グローバルな経営環境も⼤きく変わり、経営判断において地政学的問題を経済面より重視せざるを得ない場合が増えました。地政学的ボラティリティの⾼まりという課題も加わり、グローバル化の中期的な⾒通しは極めて不透明となりました。これについては、EYの今後5年間の世界に関するシナリオ分析 で示しています。
企業戦略において地政学的動向の重要性が今世代で最も⾼まっています。優れた経営幹部は、ガバナンス体制とプロセスの変⾰を通じ、より組織的な政治リスク管理の導⼊を進めているところです。こうした取り組みでは、地政学的動向が現在の戦略にどのような影響を及ぼしているかについての定期的な評価や、M&A、市場参⼊・撤退、サプライチェーンや海外拠点に関する意思決定に当たって、政治リスク分析を積極的に組み込むことなども⾏われる場合が少なくありません。企業のDNAに地政学的分析を組み込むことで、戦略的な意思決定を⾏う際、組織はより適切に政治リスクに対応できるようになり、競合他社に対してより優位に⽴てる可能性があります。
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第2章
新たな現実に対応する
組織は、業務、投資、人材、ESG戦略の強化や、現状に合わせた修正を図っています。
新たな現実に対応する:業務体制を強化し、投資戦略に磨きをかける
地政学的情勢への戦略的な対応に加え、CEOは短・⻑期投資のさまざまな優先課題にも取り組んでいます。
1つには、CEOは「平常どおりの業務」の増加に取り組んでいます。つまり財務、会計、サプライチェーン、物流といった内部部門をはじめとした業務体制全体を強化する計画や、顧客体験を含めたマーケティングに注目する動きの中に⾒て取れます。こうした取り組みは、押し寄せる新たな課題から⾃社を守る動きとも⾔えるかもしれません。
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また、明白で⻑期的な転換もみられます。サステナビリティ、環境問題やより幅広い社会問題への投資を増やし、イノベーションや研究に重点を置くようになる上で、CEOはより⻑期的な視座を持つようになっています。
そのためCEOは、⾃社の強みと弱みや、勢⼒図における⾃社の位置付けを考慮に⼊れ、どのようなアクションが⾃社を最も良い⽅向へ向かわせるのかを積極的に検討しています。今後6カ⽉間、あるいはそれ以上にわたって競争⼒を⾼め、⾶躍を遂げる上で必要なアクションを⾒極めているところです。
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現在主たる重点分野となったのは、よりサステナブルな事業、イノベーションや新たなビジネスプラットフォームへの投資、テクノロジーを活⽤した顧客ロイヤルティの向上、新たな価格体系の導⼊や⾰新的な価格設定モデルの採⽤による収益性の向上といった領域です。
こうした動きは⼤胆なものですが、よく計算されており、不確実な環境にあっても成⻑を遂げるための基本的な原理原則がそこにはあります。投資計画はバランスがとれており、そうした原理原則の把握に重点が置かれています。
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極めて効率的な内部管理アプローチにつながると考えられるあらゆる場面において、CEOは求められる水準で集中的に対処に当たっています。今後は、コストの抑制、プロジェクトや設備投資の⾒直し、運転資本の最適化といった領域に⽬を向けることが、デジタルトランスフォーメーションとテクノロジートランスフォーメーションの資⾦の調達を可能とし、その結果売上を増加させ、事業の優位性を活⽤する両⽅を実現する鍵を握るでしょう。
同様に、CEOの多くは今後、次の3つの対応を取りながら、⾶躍を遂げるための短・中期的な投資を⾏うものとみられます。
リストラの機会を見極める アウトソーシングとマネージドサービスの利⽤を増やし、固定費の削減と管理やリスクの移転を図る コーポレートファイナンス、財務、バランスシートの管理を強化する
これらにより、全ステークホルダーに持続可能な⻑期的価値をもたらす基盤を構築できるものとみられます。
新たな現実に対応する:人材アジェンダを現状に合わせて修正する
世界的な経済⾒通しが不透明であるように捉えられ、またテクノロジーセクターの著名な企業をはじめとした⼀部企業が⼈員削減を図っていますが、労働市場全体は⾮常に逼迫(ひっぱく)したままです。
このため、CEOにはコスト抑制と⼈材への投資の確保との間で微妙なバランスを保つことが求められます。
⼀部のCEOは、⼈材関連のコスト削減について選択肢を検討しており、42%のCEOが契約型雇⽤への移⾏を考えています。また、3分の1強(36%)がリストラや⼈員削減を検討しており、⼈材育成・教育研修投資の削減を計画しているCEOも同程度います。
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この傾向は、これまでの景気後退でもみられた動きです。従来型の景気後退では、企業のコスト管理の強化に伴い、労働市場が圧迫されることが特徴でした。ところが今回は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに⾒舞われてから3年近くが経つものの、国や地域を問わず企業では必要な⼈材の不⾜が懸念されています。このため、新規採⽤の凍結を積極的に検討しているCEOは全体のわずか3分の1です。
⼈材をつなぎ留め、将来必要となるスキルを⾒いだす施策に⼒を⼊れるCEOの数は、⼈材コストの削減に⼒を⼊れるCEOの数に匹敵するどころか、その数を上回っています。
かつて優秀な⼈材を失い、過熱した労働市場で新たな⼈材を巨額の費⽤をかけて獲得することを余儀なくされ、効率までも低下した経験が、CEOの記憶にまだ生々しく残っています。CEOの多くが、パンデミック後に出現した労働市場の新たな現実に適応しながら、⼈材プールの拡⼤を図ろうとしています。
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また、CEOの3分の2以上が、フレキシブルワークやリモートワークなど、パンデミックをきっかけとした新しい働き⽅が離職者を減らし、新たな⼈材を獲得する上でますます重要になっていると考えています。また半数強(59%)が、景気後退期にこそ、⼦育てやメンタルヘルス⾯のサポートなどの課題をはじめ、従業員のウェルビーイングを重視する必要性が⼀段と⾼まるとしています。
また、⼈材戦略のさらなる強化を望むCEOの考えは大胆でもあります。半数強(57%)が、景気後退期に他社が実施する⼈員削減は、⾃社が新たな⼈材を獲得し、保持するチャンスになると回答しています。増員を考えていないCEOにおいてもほぼ同数(56%)が、新たな⼈材の採⽤から現従業員のアップスキリングにシフトし始めたと回答しています。
新たな現実に対応する:ESGを企業戦略に組み込む
CEOは、戦略的プランニングにESG要素を組み込み、ブランドを強化し、従業員、顧客、地域社会などの主要なステークホルダーとの信頼関係を構築することにも、⾮常に⼤きなメリットがあるとみています。
ESG重視の姿勢を続けるメリットとしては、他にも製品やサービスの多様化、顧客が求めるESGの取り組みの変化への対応、ESGアジェンダを加速させるための⼈材とケイパビリティの獲得があります。ここで⾔うケイパビリティとは、スタートアップ企業のサステナビリティ関連のテクノロジーや、イノベーション・エコシステムなどです。
もう1つの重要な検討課題に、政策環境の変化への対応があります。具体的には、企業慣⾏に対する精査の強化やESGスコアの向上などです。投資家の意思決定にプラスの影響を与えることができます。
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第3章
関係性構築のためのM&A
ポートフォリオ改⾰が優先課題であることに変わりはありませんが、今後はおそらく提携相⼿とのディール間で⾏われる可能性が⾼くなるでしょう。
労働市場がこれまでの景気後退期とは異なる動きをみせる中、M&A市場が軟化する可能性はあるもののディール意欲は健在なようです。通常の景気後退期の傾向を上回る⽔準にM&Aが維持されることを期待できるとのシグナルを、CEOは発しています。
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大多数の回答者(89%)が今後12カ⽉に何らかのディールを⾏うことを検討しており、半数(46%)が資産の買収、3分の1(34%)が事業売却、58%がジョイントベンチャー(JV)や戦略的提携の締結を視野に⼊れています。こうした意欲的な姿勢は、今回の調査全体でCEOが⽰した、他の積極的な戦略を反映するものです。
バイサイドが特に重点を置くのは、アーリーステージの事業への投資となるでしょう。その⽬的は、既存ポートフォリオの強化、新たな⼈材の獲得、または新たなビジネスプラットフォームの構築です(33%が、今後6カ⽉間の主なアクションとして挙げています)。とはいえ、チャンスがあれば、より規模の⼤きいディールが⾏われるはずです。規模の⼤きいカーブアウトやスピンオフの引き⾦を企業がいつでも引ける状態にあり、2023年上半期にM&A市場で⼤規模なディールが⾏われる可能性が⾼いのは事業売却とみられます。プライベートエクイティが⼩規模な案件の事業売却先として有利な⽴場に⽴つことになるものと思われます。また、IPO市場は、2021年の1年間低調だったものの、質の⾼いスピンオフに対応できることを証明してきています。
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とはいえ、企業が業務とエコシステムを変⾰し、レジリエンスを構築し、イノベーションを加速させ、将来の成⻑に向けた準備を整えることを⽬指していることから、M&Aディールの中⼼となるのは、ジョイントベンチャーと戦略的アライアンスとなりそうです。
2023年のM&Aは友好的
CEOは重要な地政学的問題を踏まえ、「フレンドショアリング」を考慮に⼊れた上で投資計画を決定していますが、2023年のディールの主な特徴の1つもこれに沿ったものです。
今後12カ⽉間に買収を計画しているCEOのうち、本国と強⼒な地政学・経済的関係にない国・地域での買収を検討するとしたのは10人に1人未満です。
一方、5分の4弱(78%)が、本国と地政学・経済面で足並みをそろえている国でのM&Aの実施を視野に入れています。
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M&Aに対する堅調な意欲を考えると、CEOが依然として、M&Aは変⾰を加速させるチャンスであると捉え、将来の成⻑に向けた準備を組織が整える⼀助としてディールを推し進めていることは明らかです。クロスボーダー投資への意欲は依然として旺盛であるものの、2023年にはCEOがディール相⼿の選択により一層慎重になり、真にグローバルなアプローチをとるというよりは、友好国・地域内でディールを⾏うことになるでしょう。
2023年にCEOが検討すべき5つの重要課題
今後起こり得る動向の一歩先を行く:CEOは、シナリオプランニングを利⽤して、考えられる⾃社事業の将来の姿を把握し、さまざまな結果に備えて計画を⽴てる必要があります。 すべてを絶えず見直す:CEOは、現在の事業、業務、ポートフォリオ、エコシステムをあらゆる側⾯から分析しなければなりません。また、それは⾃社の将来にとってプラスかマイナスかを考え、かつ、買収、構築、提携、あるいは売却・処分について迅速に判断を下す態勢を整えることも求められます。
より遠くを見通す:短期的な複雑さと課題への対応を重視しがちになることは理解できますが、CEOは、より⻑期的な成⻑機会にも焦点を合わせ続ける必要があります。 常に顧客に寄り添う:ロイヤルティ向上のための新たなテクノロジーへの投資であろうと、⾼まる⼀⽅のESGへの期待への継続的な対応であろうと、激動の時代にあっても、CEOは顧客重視の姿勢を貫かなければなりません。 意図的により大胆になる:これまでの景気後退で実証されてきたのは、景気後退期にあっても将来のケイパビリティに投資をしたCEOが、景気回復期に最も恩恵を受けるということです。⼤胆になって戦略を加速させることで、後⽇、リターンを得ることができるかもしれません。
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2023年1月のEY CEO Outlook Pulseの調査レポート(PDF)を見る
2022年10月のEY CEO Outlook Pulseの調査レポート(PDF)を見る
サマリー
2023年は、世界の経済情勢と地政学的情勢が極めて不確実なものになると考えられます。2023年はまた、多くのリーダーにとって、組織全体に対し戦略的⽅向性を⽰し、信頼を醸成する上でCEOが担う重要な役割が前⾯に押し出される年になりそうです。⾃社が景気後退を乗り越え⾶躍し、また、全ステークホルダーに持続可能な⻑期的価値をもたらす基盤を構築することを可能にする道筋を考えることが、CEOには求められます。
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