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今回はシンガポールとタイの外国籍人材の就労ビザに関する動向についてご紹介いたします。
シンガポール政府は外国人労働者の就労ビザ(EP)申請に関し、ポイントに基づく新たな審査制度(Complementarity Assessment、通称「COMPASS」)の導入を発表しました。本制度は新規申請に関しては2023年9月1日から、既存ビザの更新に関しては2024年9月1日から適用となります。
【参考】2022年4月11日付EY Japan 税務アラート「シンガポール、EP取得に関しポイントに基づく新たな審査制度「COMPASS」の導入」
近年、シンガポールではシンガポーリアン・コア政策が強化されており、このポイント制度「COMPASS」の導入もそれを推し進める上での新たな施策と思われますが、9月以降、ますます新規EPビザの取得は難しくなることが予想されます。
特に、社内公用語が日本語である日系企業は、日本国籍の出向者を多く抱えるため、多様性・ローカル人材活用の割合の部分でポイントの獲得が難しくなっており、英語をベースとする欧米系の企業と比べ大きな影響が予想されます。
日系企業にとっては駐在員配置のハードルがさらに上がることになり、最近はCOMPASSに向けた駐在員数の調整のため現地化の施策などの検討事項が増加しています。
2022年9月からタイは富裕外国人などを対象とした長期滞在ビザ(Long-Term Resident Visa、通称「LTRビザ」)制度を新設しました。富裕層の外国人をタイに誘致し国内消費や投資の活性化、また経済発展に有益な専門家の誘致を目的としています。
【参考】2022年9月27日付EY Japan 税務アラート「タイ、専門家及び投資家向けの新たな10年間の長期滞在査証(LTR)を発表」
LTRビザの中に高度な技能を有する専門家向けのビザがあり、その場合、所得税が17%と大幅に免税されるメリットもあり、要件を満たす多くの日系企業が申請を進めている状況です。免税手続きには個人所得税の知見が必要となるため、税務・イミグレーションを一体としたプロセスを構築する必要があります。
裕福層や専門家となる外国人を誘致したいタイと自国民の雇用の保護を推し進めるシンガポールでは就労ビザの方向性が真逆であるように、それ以外の国・地域でも制度緩和や引き締めの方針がそれぞれ異なるのが最近の東南アジアにおける特徴となっております。
東南アジア域内各国の就労ビザの要件を踏まえた上で、全体最適となる人員配置計画がより一層重要となるため、これまでのように駐在員の就労ビザの問題を各国へ任せるのではなく、包括的な管理がますます求められるものと思われます。
川井 久美子 パートナー
羽山 明子 ディレクター
木谷 聡 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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