EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2022年9月20日、オランダ政府は予算案を発表しました。予算案は国会で審議・検討され、修正される可能性があります。最終予算案の成立は2022年12月と見込まれています(各トピックの制定に向けた現在の進行状況が角括弧で示されています)。
また、本タックスアラートでは、過去のEY Global tax alertでも取り扱ったか、あるいは2023年に国会に諮(はか)られることが予想される2023年度と2024年度に関わる他の主要なオランダの税制法案や制定済みの法令も取り上げます(巻末注参照)。最後のセクションでは、考慮すべき欧州連合(EU)の主要なイニシアティブも取り扱います。
発効日:2023年1月1日
政府支出の財源確保などのため、法人所得税の軽減税率が15%から19%に引き上げられるとともに、法人所得税の標準税率25.8%が20万ユーロを超える課税利益に適用されるようになります。
2022年 |
2023年 |
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軽減税率(基準額以下の課税所得) |
15% |
19% |
基準額 |
39万5千ユーロ |
20万ユーロ |
標準税率(基準額超の課税所得) |
25.8% |
25.8% |
発効日:2024年1月1日
適格海外駐在員が給与の30%相当の費用の戻し税を受けられる(実際に発生した費用とは関係なく)特別な税制優遇措置が存在しています。この30%の適用対象の給与基準に対していわゆる「WNT(Wet Normering Topinkomens、最高所得基準法)標準」(2022年は21万6千ユーロで、毎年調整)の上限を設けることが提案されています。
さらに、雇用主/従業員が毎年、実際の費用の戻し税か30%軽減制度のいずれかを選択できることを法令に明示的に盛り込むことも提案されています。特定の経過措置が2年間適用される予定です。
発効日:2024年1月1日
要点:納税者は、今後公表される法案の詳細を注視する必要がある。
適格財政投資ファンド(FIF)には、結果的に法人所得税の税率がゼロとなる特別制度が存在しています。すなわち、当該FIFが(主に)不動産に投資している場合、当該FIFの持分を有する外国人投資家は、FIFを通じて不動産から稼得した所得または収入について、しばしば実質的に非課税扱いとすること(法人所得税および源泉所得税(WHT)の免除)を政府が決定しています。
提案されている主要な改正点は、FIFは今後、FIFとしての地位を維持するために(したがって、法人所得税の免税の恩恵を受けるために)オランダや外国の不動産に直接投資することが認められなくなるということです。さらなる詳細は、2024年度予算案の一部として発表されることになっています。
発効日:2023年1月1日
配当源泉所得税の法令に対して以下の3点の改正が提案されています。
1)現在、オランダの公開株式会社(NV)または非公開株式会社(BV)は、上訴可能な決定を通じて配当源泉所得税に係る払込済み株式資本の金額を確認することを税務調査官に求めることができます。この可能性を、源泉徴収義務者である他のタイプの事業体(すなわち、オランダ企業)にも拡大することが提案されています。
2)株主、メンバー、出資者または他の受益者による出資金の償還および利益参加型貸付金(株主資本として適格)の償還は現在、配当源泉所得税に係る課税事象として明示されていません。この法案により、そうした償還が実際に配当源泉所得税に係る課税事象であることが確実なものとされます。
3)配当ストリッピング防止条項では現在、「法人(legal entity)」という用語が使用されており、オランダの税務で課税上透明でないとされる法人格を持たない事業体(パートナーシップなど)が、配当ストリッピング防止条項の適用対象外であることが示唆されています。こうした状況で、そうした特別の事業体も適用対象であること(他の条件が満たされる場合)を明示するために、「法人」という用語を「事業体(entity)」に修正することが提案されています。
発効日:2024年1月1日の予定。2023年春に改定された法案が発表される予定。
要点:納税者は、オランダの法制度における(外国の)事業体/パートナーシップの規定に関する潜在的影響について話し合いを開始すべきです(同時に、立法の進展状況も注視する必要があります)。
2021年3月29日、外国法に基づいて設立された事業体のほか、オランダ法および外国法に基づいて設立されたパートナーシップ/ファンドに関するオランダの分類ルールを修正するために、草案を公表してパブリックコメントを求めました。この新しい事業体分類ルールの草案は、国際的な税務基準への整合性を高めることを目的としています。その結果、オランダと外国間における事業体分類の不一致から生じる可能性のある首尾一貫しない結果が減少すると見込まれています。
この法案の詳細は過去のEY Global Tax Alert1 に記載されています。
発効日:2024年1月1日
要点:納税者は、その組織構造におけるオランダの源泉徴収義務者による配当支払いに対する影響を評価すべきです。
2021年11月11日、軽課税国・地域、ハイブリッド事業体に対する、および乱用的な方式による配当支払いに対して源泉所得税を導入する法案が制定されました。これは、2021年1月1日から適用されている、軽課税国・地域、ハイブリッド事業体に対する、および乱用的な方式による利子・ロイヤルティ支払いに適用される源泉所得税の拡張と言えます。源泉所得税の税率は法人所得税の標準税率と同じです(現在は25.8%)。
この源泉所得税と並んで「通常の」配当源泉所得税15%が存在しています。しかしながら、累積防止ルールが適用されると、軽課税国・地域、ハイブリッド事業体に対する、または乱用的な方式による関連支払いに適用される配当源泉所得税は総計25.8%に限定されます(新しい分類ルールではハイブリッド事業体は減少する見込み - 上記パラグラフ参照)。この法令による影響はケースバイケースで注意深く評価する必要があり、現在配当源泉所得税の(源泉徴収の)適用対象となっていない納税者の一部に影響が及ぶ可能性があります。
この法令の詳細は過去のEY Global Tax Alert2に記載されています。
要点:納税者は、潜在的影響に関する話し合いを開始するとともに、今後の取引/事業再編についてEUのイニシアティブを考慮に入れるべきです(同時に、立法の進展状況も注視する必要があります)。
節税のためにEUの事業を悪用することを防止することを目的としてEU全体で「実体テスト」を導入。当初提案された発効日は2024年1月1日でしたが、EUはこれを2025年1月1日に先延ばしすることを検討しています。このEU指令案の詳細は過去のEY Global Tax Alert3に記載されています。
経済協力開発機構は、多国籍企業(MNE)に対する15%のグローバルミニマム課税を確保するために、第2の柱のイニシアティブを導入。予定される発効日は、所得合算ルール(IIR)については2023年12月31日以後、軽課税支払ルール(UTPR)については2024年12月31日以後に開始する会計期間です。一部の移行ルールは、2021年11月30日後における関連会社間の資産譲渡にすでに影響している可能性があります。すべてのEU加盟国の合意を待つ状況下で、2022年9月9日には、この提案と期限の確実な履行(全加盟国の合意に到らなかったとしても)を強調するフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダの共同声明が発表されました。このEU指令案の技術的側面に関する詳細は過去のEY Global Tax Alert4に記載されています。
目的は、資本に基づく名目的な控除および損金算入可能な利息の(さらなる)制限を通じた、自己資本による資金調達の助成で、予定される発効日は2024年1月1日です。このEU指令案の詳細は過去のEY Global Tax Alert5に記載されています。
連結売上高が2年連続で7億5千万ユーロを超えた多国籍企業について、国別の支払所得税および国別の利益、売上、従業員数など他の租税関連情報が公表されました。発効日は2024年6月22日以後に開始する事業年度です。このEU指令の詳細は過去のEY Global Tax Alert6に記載されています。
とりわけ石油、ガス、製油、石炭セクターで事業展開する企業について、その超過課税利益に対して33%以上の税率で課税するEU全体の「連帯税(solidarity contribution)」、すなわち「超過利潤税(windfall tax)」で、2022年1月1日以後に開始する事業年度を対象として1年間適用されます。このEUの法案の詳細は過去のEY Global Tax Alert7に記載されています。
巻末注
Joris van Huijstee シニアマネージャー
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