EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 物流セクター
公認会計士 青柳智弥
第2回目の今回は、物流・倉庫業の業務の流れ及び内部統制の特徴と題して、物流・倉庫業における業務の流れ、物流・倉庫業における財務報告に関する内部統制の特徴について説明します。
なお、本稿において意見にわたる部分は執筆担当者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。
物流・倉庫業における業務の流れは、荷主の業種や荷主との間の契約形態、物流・倉庫業者の業務内容等により千差万別であるといえますが、一般的には、全国各地の物流地区や荷主の近隣地域に営業所や倉庫等の拠点を設け、荷物の輸送、輸送に伴う荷物の積み下ろし(荷役)、荷物を保管するに当たっての保護(梱包)、荷物へのタグ付けや簡単な加工作業(流通加工)、倉庫での保管、荷物の追跡管理や空車と荷物をマッチングさせるための情報管理の各業務を行っています。
物流・倉庫業において、内部統制を構築する上で考慮すべき点は、全国各地の物流地区や荷主の近隣地域に物流センターや倉庫等の事業所を設けていることが多いことから、どの事業所においても同一類型の取引については同一の事務処理が行われ、均質な財務データの提供が可能となるようにすることが考えられます。また、事業所が本社から離れた遠隔地にある場合も多いことから、本社の目の届かないところで発生しやすい、資産の横領等の不正が発生しにくい仕組みを内部統制に織り込んでおくことが考えられます。
物流業(貨物自動車運送業)においては、荷主からの受注、貨物量や空車状況を考慮した配車・傭車、売上計上、請求書発行、運送に係る費用(傭車料等)の計上等の業務を行うことが想定されますが、この場合の業務フロー及び内部統制上考慮すべき点の一例を挙げると以下のようになるものと考えられます。
業務内容 |
担当者 内部統制上考慮すべき点 |
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受注 |
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配車 |
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輸送 |
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売上計上 |
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請求 |
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入金 |
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費用計上 |
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倉庫業においては、荷主からの受注、貨物量や倉庫の空き状況等を考慮した入出庫等の作業指示、売上計上、請求書発行、入出庫等に係る費用(下請作業費等)の計上等の業務を行うことが想定されますが、この場合の業務フロー及び内部統制上考慮すべき点の一例を挙げると以下のようになるものと考えられます。
業務内容 |
担当者 内部統制上考慮すべき点 |
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受注 |
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作業指示 |
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入出庫・保管 |
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売上計上 |
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請求 |
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入金 |
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費用計上 |
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物流業においては傭車先や外部倉庫といった外部協力業者との取引が多いため、キックバック等の外注費不正が発生する可能性が相対的に高く、税務当局による立ち入り調査、内外からの告発や通報等による不正の発覚がよく見受けられます。これらの不正は内部統制の欠如や既存の内部統制の形骸化が主な原因として挙げられることから、職務分掌や業者選定プロセスの明確化といった業務処理統制によって不正を防止することも重要となりますが、内部通報制度や定期的なジョブローテーション等によって不正が発生したとしても早期に発見できる体制を構築することも重要と考えられます。
<参考文献>
(週刊 経営財務 平成22年3月15日 No.2958 掲載)
物流・倉庫業