EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 鎌田 光蔵
2023年5月2日に公表された「リースに関する会計基準(案)」(以下「本会計基準案」という。)及び「リースに関する会計基準の適用指針(案)」(以下「本適用指針案」という。また、以下本会計基準案と本適用指針案を合わせて「本会計基準案等」という。)のうち、「リースの識別」について具体的な事例を用いて解説します。
本会計基準等における「リース」の定義およびリースの識別に関する定めの概要については、「リースに関する会計基準(案)」等のポイント解説-リースの識別 第1回:総論に記載しています。
具体的には、以下のフローチャートに沿って判断します。
契約にリースが含まれるか否かの判定にあたっては、「特定された資産」と「支配」の2要件が満たされているかについて、実務上の検討課題となります。本稿では、主に「特定された資産」について主眼を置いた事例について解説し、「支配」については、「リースに関する会計基準(案)」等のポイント解説-リースの識別 第3回:事例解説(特定された資産の使用の「支配」)において解説しています。
以下2要件を満たす場合、資産が特定されていると判定されます。
サプライヤーが①使用期間全体を通じて資産を代替する実質上の能力を有し、かつ、②資産の代替により経済的利益を享受する場合、サプライヤーは資産を代替する実質的な権利を有しており、資産は特定されていないことになります(本適用指針案第6項)。
資産が特定されていないケース |
資産が特定されているケース |
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前提条件 |
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結論 |
サプライヤーであるB社が貨物トラックについて実質的な入替権を有しているため、資産が特定されていないことから、A社及びB社は契約にリースが含まれていないと判断します。 |
物理的に指定されたトラックの使用となり、サプライヤーであるB社が実質的な入替権を有していないことから、資産が特定され、かつ、特定された資産の使用を支配する権利がB社(サプライヤー)からA社(顧客)に移転しているため、A社及びB社は契約にリースが含まれていると判断します。 |
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事例をフローチャートに沿って示すと、以下のようになります。
物理的区分可能性の判定において、顧客が使用することができる資産が物理的に別個のものではなく、資産の稼働能力の一部分である場合「特定された資産」に該当しません。ただし、以下いずれも満たす場合は「特定された資産」に該当します(本適用指針案第7項)。
資産が特定されていないケース |
資産が特定されているケース |
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前提条件 |
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結論 |
顧客が使用できるのはガスの貯蔵能力の一部であり、資産が特定されていないため、A社及びB社は契約にリースが含まれていないと判断します。 |
顧客が使用できるのは、ガスの貯蔵能力のほとんどすべてであり、資産が特定され、かつ、特定された資産の使用を支配する権利がB社(サプライヤー)からA社(顧客)に移転しているため、A社及びB社は契約にリースが含まれていると判断します。 |
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事例を図に示すと、以下のようになります。
一見するとリースに該当しないような契約であっても、条件によっては、契約にリースが含まれる場合が想定されることから、実態に基づき個別に判断することが必要となります。賃貸借契約だけでなく、従来、利用料、使用料、業務委託料、サービス料等で処理されていた契約についても、契約にリースが含まれるか否か留意する必要があります。
「リースに関する会計基準(案)」等のポイント解説-リースの識別