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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 佐藤 範和
2023年5月2日に公表された「リースに関する会計基準(案)」(以下「本会計基準案」という。)および「リースに関する会計基準の適用指針(案)」(以下「本適用指針案」という。また、以下本会計基準案と本適用指針案を合わせて「本会計基準案等」という。)のうち、基準適用の入口部分として重要な論点となり得る「リースの識別」について解説します。
現行リース基準においては、「リース」の定義について<図1>のとおり定められています。そして、「リース」と判定された取引について、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類します。ファイナンス・リース取引に分類された場合は、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行い、貸借対照表上、リース資産およびリース債務が計上されることになります(借手のケース)。
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本会計基準案等におけるリースの識別に関する定めは、リースの定義に関する定めと合わせて、借手が貸借対照表に計上する資産および負債の範囲を決定するものであることから、国際的な会計基準との整合性を確保するためには、リースの識別に関する定めについて、IFRS第16号との整合性を確保する必要があるとされています(本会計基準案BC25項)。
本会計基準等における「リース」の定義およびリースの識別に関する定めは<図2>の通りです。
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したがって、契約にリースが含まれるか否かの判定にあたっては、
先に述べたように、契約にリースが含まれるか否かは「特定された資産」と「支配」の2要件が満たされているか否かがポイントとなります。次に、当該「特定された資産」と「支配」に関し、本会計基準案等では具体的にどのような定めが置かれているのか、確認していきます。
契約において、下記2つの要素をいずれも満たす場合は、資産が特定されていると判定されます。
資産は、通常は契約に明記されることにより特定されますが、資産が契約に明記されている場合であっても、一定の状況下においては、サプライヤーが当該資産を代替する実質的な権利を有しており、顧客は特定された資産の使用を支配する権利を有していないとされます。具体的には、<図4>のいずれも満たすときは、実質的な入替権を有しており、「特定された資産」に該当しないことになります。
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端的に言えば、サプライヤーが資産を別のものに入れ替える能力があり、かつ、入れ替えることに関し経済的メリットがあるか否か、ということになります。
資産が特定されているかどうかは、物理的に区分可能かどうか、という観点からも判定されます。具体的には、<図5>のとおりとなります。
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顧客が資産を使用しているものの、顧客が使用することができる当該資産が物理的に別個のものではない場合(稼働能力のほとんどすべてを使用する場合を除く)は、「特定された資産」にあたらないことになります。
上記2要件を図に表すと、<図6>のとおりとなります。
特定された資産の利用を支配する権利が顧客に移転しているかを判定するためには、以下のいずれも満たす必要があります。
上記のうち、特定された資産の使用を指図する権利を顧客が有しているか否かに関し、本適用指針案第8項では<図8>のとおり定められています。
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資産の使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を、顧客が有しているのか、それともサプライヤーが有しているのかによって、契約がリースを含むかどうかの結論が変わってきます。当該権利を顧客が有している場合は、契約はリースを含むこととなり、反対にサプライヤーが有している場合は、契約はリースを含まないこととなります(本適用指針案第8項(1))。
契約の中には、資産の使用を指図する権利を顧客とサプライヤーのどちらが有しているか不明瞭な場合があります。このような状況においては、使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされていることを前提として、以下に基づいた判定が行われます(本適用指針案第8項(2))。
資産を稼働させる権利を顧客のみが有している状況においては、顧客は、当該資産を顧客自身で稼働、または第三者に指図のうえ稼働させることが可能となります。本ケースにおいては、顧客が当該資産の使用を指図する権利を有しているとされ、契約はリースを含むことになります。
顧客が資産の設計にかかわることで、使用期間にわたる当該資産の使用方法が事前に決定されているケースがあります。このようなケースにおいては、顧客が当該資産の使用を指図する権利を有しているとされ、契約はリースを含むことになります。
これまで述べてきたとおり、本会計基準案等においては、現行リース基準には定めのなかった「リース」の判定に関するガイダンスが定められており、その内容も複雑となっています。フローチャートで示すと<図9>のとおりとなります。
本会計基準案等は、会計基準独特の言い回しも多く、リースか否かの判定を行うにあたっての読み解きが困難な面もあり、実務上、判断に迷う点が多く出るものと想定されます。次回、具体的な事例を用いたリースの識別に関する解説を行いますので、あわせてご確認ください。
「リースに関する会計基準(案)」等のポイント解説-リースの識別