プライベートエクイティの動向:2024年に注目すべき点とは
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プライベートエクイティ(PE)市場は2023年を好調に締めくくりました。
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要点
2023年第4四半期、企業が発表した取引額は1,240億米ドルとなり、年間で最も好調な四半期として幕を閉じた。 PE企業がさまざまな業種、資産クラス、取引タイプに機会を見いだし資金を投入する中、PE市場は2023年も堅調に推移した。 金利の上昇により、引き続き、事業に付加価値をもたらす投資の価値が高まるだろう。
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PE市場は2023年も堅調に推移し、プライベートエクイティ(PE)企業はさまざまな業種、資産クラス、取引タイプに機会を見いだし、資金を投入してきました。
ファンドの一部はこの機会に乗じて、割安なバリュエーションでトップクラスの資産を取得しました。他方、マクロ経済動向を新市場への参入の契機としたファンドもありました。
2023年第4四半期、PE企業の公表取引額は1,240億米ドルとなり、年間で最も好調な四半期として1年を締めくくりました。第4四半期には、取引は第3四半期と比較して金額ベースで11%増加しました。
特に活況だった11月は、過去1年半で月間取引額が2番目に多くなり、公表取引額の合計は710億米ドルに達しました。第4四半期の取引件数は前四半期とほぼ同様であり、大型案件が一般化している傾向が顕著に表れています。
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上のインタラクティブな棒グラフは、2023年のプライベートエクイティ取引の件数と取引額を示しています。
全体として、2023年の合併・買収(M&A)市場はインフレの逆風、金利上昇、地政学的な懸念、マクロ経済全般の不確実性など、複数の要因によって厳しい状況となり、多くのディールメーカーが取引から手を引くに至りました。こうした課題にもかかわらず、PEは引き続きM&A市場の一翼を担っており、M&A活動全体の25%を占めています。
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最新エピソード:2023年第4四半期を振り返って
上半期の活動を特徴付けたのは、ほぼ大規模なテイク・プライベート(上場企業の非公開化)取引と小規模なボルトオン投資のみでした。 月日の経過とともに公表の範囲が拡大し、セカンダリー、カーブアウト、プライベート・ツー・プライベートなど種々の取引が含まれるようになりました。市場参加者は、2024年もこれらの取引タイプの多くが存続すると予想しています。テイク・プライベート取引は第1四半期にピーク到達後、減少に転じていますが、魅力的なターゲットのとして注目に値する企業は依然として残っています。第4四半期には、昨年公表された最も大規模な取引の1つである、ブラックストーン社によるアデビンタ社の買収(買収額は150億米ドル)をはじめ、多くのテイク・プライベート取引が公表されました。
金利の上昇により資金調達は難しくなっていますが、投資家は、2024年には金利上昇が特定のタイプにおける取引の追い風になり得るとも考えています。米国では、レバレッジドローンのデフォルト率は長期平均(約1.4%)を下回っています。しかし、金融システム各所で圧力が高まっています。S&PのWeakest Link Index(格付けがB-以下で、見通しや予想が否定的な発行体により構成される)は、過去12カ月間で50%超上昇しています。また、調査会社ピッチブックピッチブック社のLeveraged Commentary and Dataによると、インタレストカバレッジレシオは、昨年の5.6倍から3.8倍へと着実に低下しています。このような情勢は、不安定なマクロ経済環境を乗り切る助けとなるドライパウダー(投資待機資金)と適切な専門的知見を備えたPE企業にとって機会となり得ます。
EYが11月下旬から12月上旬にかけてPE投資家を対象に実施した調査では、回答者の63%が今後1年間にディストレスト取引が増加すると予想していました。また、回答者はセカンダリーバイアウトの増加も予想しています。PE企業は新規取引資金として利用できる約1兆3,000億米ドルのドライパウダーを保有しており、イグジットを求める出資者から企業を買収し、次の成長段階へと導くことができる立場にあります。 ある調査回答者は次のように述べています。「2024年には、プライベートエクイティ市場に、高インフレ、金利上昇、マクロ経済減速の可能性に起因する逆風が吹くと予想しています。それでも、弱い企業を淘汰していく環境の中で、投資資金を有するPE企業は、特にディストレストアセットの分野に投資機会を厳選して見いだす必要があります」
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上のインタラクティブな棒グラフは、EY のPEの動向調査(EY PE Pulse Survey)の結果を示しています。
それでも、弱い企業を淘汰していく環境の中で、投資資金を有するPE企業は、特にディストレストアセットの分野に投資機会を厳選して見いだす必要があります。
セクター別にみると、1年を通じてテクノロジーが強力なテーマであり、テクノロジー関連取引がPE投資額の3分の1近くを占めました。中でもクラウド分野への投資が引き続き活発で、投資家はエンタープライズSaaSなどの分野にさらなる成長余地が存続していると期待しています。一方、世界中の企業が生成AI(GenAI)の業務プロセスへの組み込みを進めていることを受け、機械学習分野で勢いが加速しています。
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上のインタラクティブな表は、前年比増減を通じたセクター別のPE活動を示しています。
消費財、金融サービス、ヘルスケアの各セクターでも取引状況は活発でした。消費財セクターでは、投資家は、食品・アグリビジネスのバリューチェーン全体にわたり、サステナブル農業、複合農業、木材など、低リスク・中利回りの企業に投資機会を見いだしました。
ヘルスケアセクターでは、エンタープライズイメージング、音声に基づく診断をはじめ、革新的な製品・サービスを提供する医療技術プラットフォームに対してPE企業からの注目が高まっています。
総体的には、PE企業は2024年には取引がさらに活発化すると予想しています。調査回答者の63%が今後6カ月間に取引が増加すると予想しており、減少すると予想しているのは17%に過ぎません。注目すべきは、回答者の20%が活動の著しい増加(25%以上)を予想しており、3カ月前に同じ質問を尋ねた時点と比較して、7パーセントポイントの上昇が見られることです。
イグジットの緩やかな回復が続く
PE企業が年間で公表したイグジット取引は298件で、前年比28%減少しました。取引総額は3,550億米ドルでした。第4四半期のイグジット活動はバイサイドとは対照的な結果となり、やや活発だった第2四半期と第3四半期に比較して低調に推移しました。
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上のインタラクティブな棒グラフは、2023年のプライベートエクイティ取引の取引額と件数を示しています。
その結果、業界では、代替的手段を通じた流動性確保が引き続き多大な関心を集めています。そのような手段には、セカンダリー取引(GP主導とLP主導の両方)や、出資者が予想よりも長い保有期間を通じてポートフォリオ企業を支援し、場合によっては投資家への分配を促進するファンドレベルの取り決めなどが含まれます。これらはPE企業のツールキットの中でも非常に重要な要素になっており、2024年も引き続き関心が向けられるとみられます。EYの調査では、GPは2024年に向けての有力な予測として、セカンダリーセールスと継続ファンドの増加継続を挙げています。
新規資金の調達において最も重大なのは下流への影響です。全体として、資金調達は昨年と比較してほぼ横ばいでしたが、2021年の市場のピークからは減少傾向が続いています。今後を展望すると、バリュエーション、マクロ環境、金利、ポートフォリオレベルの問題に先立ち、資金調達が2024年における投資家の懸念事項リストのトップを占めると考えられます。
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上のインタラクティブな棒グラフは、2024年の資金調達上の懸念事項に関するEY PE Pulse Surveyの結果に基づき作成されたもので、GPの懸念の程度を1~10の尺度で表しています。
プライベートクレジットファンドの転換点
プライベートクレジットの台頭は長期にわたり進行してきましたが、2023年は、プライベートクレジットが本格的に注目を集めた年になりました。銀行など従来の融資元からの投資意欲が減退する中、プライベートクレジット企業が市場に参入し、昨年公表された多くのPE取引をはじめとして、幅広いニーズへの資金提供に乗り出しています。LPに関する調査では、融資(クレジット)が一貫して、(多くの場合、プライベートエクイティやインフラと共に)、資金投入の増加に向けての最優先事項と位置付けられています。新規にクレジットマネジャーを求めるLPによる新たな手法と、新たなRFP(提案依頼書)が毎週のように公表されており、この分野の報道はほとんど指数関数的に増加しています。ピッチブック社のLeveraged Commentary and Dataによると、プライベートクレジットファンドが昨年資金を提供したLBO取引は、約86%に上ります。また現在、新規取引に備えて保有するドライパウダーは9,500億米ドルを超えています。
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上のインタラクティブな折れ線グラフは、2023年のプライベートクレジットに関するGoogle検索数を示しています。
その結果、2024年には、シンジケート参加企業がより厳選された案件を追求するようになる銀行準備率の引き上げや、プライベートクレジットの貸し手が事業の対象と幅を拡大していることもあり、この分野の急速な進化が継続すると予想されます。その意味では、この状況は、プライベート市場での資金調達を選択する企業が増加していった、過去15~20年間にエクイティ側の資本形成にみられた変化を反映していると言えます。
2024年がもたらすもの
マクロ的障害は弱まりつつあるとはいえ、引き続きPE投資家にとっての大きな逆風となるでしょう。他方、今後数四半期は、投資環境の活用に必要な多様なプラットフォーム、柔軟なアプローチ、豊富な経験を備える企業に膨大な投資機会をもたらす可能性も高いです。それにはPE戦略を斬新な視点で見直しが必要です。ある調査回答者は「2024年は当たり年になるでしょう」と述べています。
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EYの調査では、投資家はプライベートクレジットが引き続き主要な資金調達形態であり、セカンダリーセールスが活発で実行可能なポートフォリオ管理ツールであること、業界の統合が進むこと、2024年はテクノロジーが主要な投資テーマであり続けると予想しています。
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上のインタラクティブな棒グラフはEY PE Pulse Surveyの結果で、投資家は2024年のPEがどのように変化すると考えているかを表し、調査回答者が各記述にどの程度同じ/異なる見解を持っているかを1~10の尺度で示しています。
より多くの資金調達がプライベートクレジット市場からシンジケート市場に回帰する。
18カ月前、銀行が多くのPE案件の融資から手を引いた際、プライベートクレジットのプロバイダーがそのギャップを埋めました。市場が正常化し始める中、プライベートクレジットプロバイダーによる市場シェアの拡大がどの程度続くのか、また銀行がシンジケート融資の領域で、どの程度地位の回復を目指す意欲と能力があるのかは、明らかではありません。この記述に対する回答者の同意の程度が最も低いという事実は、多くの人がプライベートクレジットの市場利益が今後も続くと考えていることを示唆しています。
IPOは2023年の水準から増加する。
IPOは、PEが支援する企業の間でも、より広範なIPO市場においても依然として低調です。2024年は金利が安定し始めるのに伴い、より確実なリターンを買い手に提供することで機会が広がる可能性があります。それにもかかわらず、PE企業は利用可能な代替手段を確保するため、引き続き多重的アプローチを追求するでしょう。 金利の上昇を受け、LPの資金投入はプライベートエクイティからプライベートクレジットに向かう。
回答者は、高金利・長期金利」体制がプライベートエクイティからプライベートクレジットへの移行につながるのかについては、あまり興味を示していません。複数の報告事例からは、LPは実際に追加の資金投入先をプライベートクレジットにシフトしているものの、プライベートエクイティ以外から資金を引き出していることがうかがえます。 商業用不動産に魅力的な購入機会が生じる。
金利の上昇や小売業界の課題、また、出社勤務の再開が当初予想されたほど進まない状況のため、商業用不動産の多くのセクターで資産価値が下落しています。この記述は今回の調査では最上位になりませんでしたが、明らかに今年は多くの投資家が商業用不動産に投資機会を見いだしています。 非伝統的な資金調達の取り決めと投資構造が急速に増加する。
金利が上昇し、資金調達の組成が難しくなるのに伴い、クリエイティブな資金調達構造がより一般的になりました。ピッチブック社のLeveraged Commentary and Dataによると、LBOの株式出資率は2023年に過去最高の51%に達しました。一方で、負債マルチプル(debt multiple)は5.3倍に低下し、世界金融危機後の最低水準となりました。PE企業はより良い手法を求めて、アーンアウト条項、繰り延べ支払い、セラーファイナンス債券などのさまざまなタイプの資金調達構造を模索するでしょう。 GPの統合が進む。
2023年には、TPGによる27億米ドルでのアンジェロ・ゴードン社の買収を始めはじめ、プライベートキャピタル企業間の大型合併が世間の注目を集めました。業界が成熟し、競争圧力が蓄積し、製品ラインアップの多様化の重要性が増すにつれて、GPのプレイブックにおける無機的インオーガニック成長の重要性はさらに高まっていくでしょう。 テクノロジーは引き続き主要な投資テーマとなる。
テクノロジーは支配的な主要な投資テーマとして、過去5年間のPE 投資総額のx%%を占めてきました。資本コストの上昇による逆風にもかかわらず、投資家は、強力な長期的支持要因を背景に今年も多額のテクノロジー投資が続くと予想しています。 セカンダリーセールスと継続ファンド関連の活動が増加する。
マクロ環境により、従来のイグジット手段を取ることが難しくなる中、セカンダリー市場の長期的成長が加速しています。この分野のGP・LPのツールキットへの組み込みが進んでいるため、状況が正常化したとしても成長は続くと予想されます。
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PE企業は引き続きサステナビリティへの対応を進めており、多くがESG(環境・社会・ガバナンス)を極めて重要な価値創造手段と捉えています。GPに対し、価値創造手段としてESGとサステナビリティをどの程度重視しているかを1~5の段階で評価するようで求めた尋ねたところ、4〜5と評価した回答者は約60%に上りました。また、30%が、ディール指標の向上に役立てるためにESGを総合的に検討しており、測定可能なROIを期待していると回答しました。
最後になりますが、金利の上昇により、引き続き、事業に付加価値をもたらす投資の価値が高まるでしょう。私たちの調査結果が示唆することは極めて明確です。2年前にイグジットしたディールと今後24カ月以内にイグジットを見込む案件について、リターン取得手法の相対的寄与度について質問したところ、回答者は、マルチプルエクスパンションから事業に付加価値をもたらす投資への確固とした転換が起こると予想していました。
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上のインタラクティブな棒グラフは、2024~25年にイグジットが予想されるディールを示しています。
サマリー
PE市場は2023年も堅調に推移し、PE企業はさまざまな業種、資産クラス、取引タイプに機会を見いだし、資金を投入してきました。
2023年第4四半期、取引は第3四半期と比較して11%増加し、好調な1年で幕を閉じました。
テクノロジーは、過去5年間におけるPE投資総額の約30%を占めており、引き続き主要な投資テーマです。
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この記事について
Pete Witte
EY Global Private Equity Lead Analyst
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