EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYの関連サービス
地域別パフォーマンスの概要:2023年の市場の持ち直しと市況の好転が待ち望まれる
Americas(北・中・南米)のIPOは大不況ピーク時以来の落ち込みとなりました。市場はボラティリティとインフレ対策のあおりを受け、件数で13 年ぶり、調達額で 20 年ぶりの低水準となり、件数が前年比76%減の130件、調達額が95%減の90 億米ドルと、どちらも2021年から急落しました。AmericasのIPOの大部分(69%)は米国の取引所での実施でした。
Asia-PacificのIPO件数は845件、調達額は1,206億米ドルでした。この地域は世界的な景気後退と地政学的緊張による影響が最も小さく、2022年のIPO全体に対し件数は63%、調達額は67%を占めました。中国本土のIPOは記録的な調達額の再達成に向けて順調に推移しました。
EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)のIPOは、件数が358件、調達額は499億米ドルで、それぞれ53%減、55%減となりました。欧州のIPOは地政学的な混乱により78%減少しましたが、MENA(中東・北アフリカ)では、エネルギーなどの大型IPOの完了と、政府の民営化計画に沿って展開されたイニシアチブとの相乗効果の恩恵で、調達額が115%増加しました。また、上位10件のIPOのうち5件をEMEAのIPOが占めました。
2023年の見通し:ファンダメンタルズとESGに注目しつつ、好機を待つ
2023年に向け、前途には有望なIPOパイプラインが数多く存在します。少なくとも第1四半期は低調が続く可能性が高いものの、下半期には世界のIPOが勢いを取り戻すような好条件が整うものと思われます。
ポジティブな市場心理と株式市場の業績好転、インフレ率の抑制と利上げの終了、地政学的緊張の緩和、パンデミックによる経済への影響の低減などが、IPO市場の再活性化の前提条件となります。
IPOを目指す企業の多くは、依然としてしかるべきタイミングを待つ「様子見」の構えを見せています。ここしばらくは、投資家は企業の単なる成長予測ではなく、増収率、収益性、キャッシュフローなどのファンダメンタルズに注目するでしょう。
企業のIPO後の株価パフォーマンスと環境・社会・ガバナンス(ESG)戦略の伝達には正の相関性があることから、企業の ESG課題に対する投資家の注目も今後ますます高まるでしょう。
「パイプラインの構築が進む中、多くの企業がIPO計画復活の好機を待っています」と、Paul Goは述べています。
「こうした流れの中でも、市場流動性の逼迫からリスク回避の姿勢を強めている投資家は、ESG課題を明示しながら収益性とキャッシュフローの面でレジリエントなビジネスモデルを打ち出すことができる企業を選好しています」と、Paul Goは付け加えています。