EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY Japanの視点
2020年の日本IPO市場は、93社の新規上場となっており(11月30日承認ベース、TOKYO PRO Marketを除く)、コロナ禍においても昨年の86社を上回る力強い回復が見られました。EY新日本有限責任監査法人は27社の会計監査を担当し、3年連続IPO実績ナンバーワンであり、ビッグ4の中で輝かしい結果を残しています。
不確実な環境変化が続いていますが、このような時代だからこそEYでは長期的価値(Long-term value:LTV)を推奨しています。クライアント、そして社会のために長期的価値を創造することが、より良い社会の構築につながると考えています。このような長期的価値の考えをベースにして、EYはスタートアップの分野でEY Startup Innovation - Building a better startup ecosystem - を提唱しました。EY Startup Innovationは、スタートアップのみならず、事業会社、ファンド、官公庁など、スタートアップ・エコシステムの発展に寄与することを目指しています。EYだからこそ可能となるダイナミックな活動を実施していきます。
要点
ビジネスのサステナビリティをめぐって広がりつつある力強いトレンド、そして国内外の企業が地球環境にどのような影響を与えるかについての論争は、誰もが認識することになるでしょう。ESG(環境・社会・ガバナンス)戦略は、これまで多くの企業や投資家から「あったらよい」ものとみなされてきましたが、今では全ての組織にとって「なくてはならない」必須の戦略として急速に台頭しつつあります。
取引という観点から見ると、ESGには明確なトレンドがあり、経営者や企業はこの点を認識しておく必要があります。ESGをエクイティストーリーに織り込むことが理想であり、これにより長期的成長に配慮したビジョンを明確に示すことができるというメリットもあります。
最新のIPO市場動向についての詳細は、こちらから2020年第3四半期世界のIPO市場動向レポートでご覧ください。
第1章
企業のサステナビリティアジェンダは、どうすれば長期的価値を生み出せるのかという課題に照準を合わせつつあります。
機関投資家を対象としたEYの調査、2020年気候変動とサステナビリティサービス(CCaSS)(PDF)の結果から、98%が企業の非財務パフォーマンスを評価する際、今まで以上に規律を重視した厳格なアプローチを採用していることが分かりました。また、順序立てて体系的に評価を行っているとした回答者も、2018年の32%から72%に大幅に増加しています。
意義のある目的に本気で取り組む戦略を掲げ、持続可能な長期的価値をあらゆるステークホルダーにもたらすことを重視する企業こそ、自社が生み出す価値を享受し、実証し、測定するのに最もふさわしいといえます。
Monica Dimitracopoulos
EY Global Purpose, Digital and Knowledge Transformation Leader
EYの調査により、投資判断で非財務指標を「頻繁に」利用している投資家は2016年の27%から2019年には43%に増加しており、ESGの情報開示がますます重要な関心事項になっていることが分かりました。投資判断で非財務パフォーマンスを参考にしないとした投資家は9%にすぎず、無形価値を測定して明らかにする正式な枠組みは必要ないと考える投資家も2%にとどまっています。
つまり、IPOでの上場を図るにしろ、エグジットの手段としてIPOを検討するにしろ、企業は現実味のある有意義なESGパフォーマンス指標を測定し、公表するための強固なルーティンを確立する必要があります。
ESG情報開示基準についての合意がまだ存在しないという事実が、企業トップの課題をより困難なものにしています。Embankment Project for Inclusive Capitalismの一環でEYが独自に精査したところ、長期的価値の測定に役立つ可能性のある63の指標候補が特定されました。
問題は、その企業のステークホルダーと投資家候補にとって最も有意義な指標はどれかという点です。
上場時に投資銀行や投資家から大きな注目を集めるには、企業はますますESG戦略・能力を明確に示さなければならなくなっています。
資本市場では、環境破壊がもたらす恐るべき長期的な影響について十分に考える必要があるとの認識もまた高まっています。その結果、投資家が評価の参考にするようになったのが、気候関連財務情報開示タスクフォースの提言です。
例えば会社売却による投資エグジットを目指す経営者の場合、IPOに伴うデュアルトラックプロセスとして、ESG関連でバイヤー候補が問題視する可能性のある弱みの洗い出しにも力を入れる必要があります。
借り換えや新規借り入れを行おうとしている企業は、サステナブルファイナンスやESG連動型融資を利用できるかどうかも確認しておく必要があります。これらのファイナンスや融資は大きな注目を集めており、規制当局や銀行業界がこうしたトレンドを推し進めています。銀行業界については、責任銀行原則(PRB:Principles for Responsible Banking)を受けての動きです。
ビジネスのサステナビリティが重視されるようになる中、融資契約の条件に明快なESG指標を盛り込むことで、融資金利の割引を受けて、資金調達コストを下げられる可能性があります。今では、銀行が信用リスク評価に気候リスクを加えることも増えています。
ESG連動型融資の交渉の申し入れにあたっては、企業は上場の有無にかかわらず、ESG指標の目標値を達成するための明確なロードマップを事前に作成しておかなければなりません。ESG指標について質問されることがますます増えているためです。
地球の資源をより持続可能な形で利用する必要性については、顧客から投資家に至るまで誰もが認識するところです。そのため、資本市場取引におけるESG面への対応をめぐって力強いトレンドが定着してきたといって差し支えないでしょう。
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第2章
世界のIPO活動は急速な回復を見せ、2020年第3四半期には史上最高水準を記録しました。
市場心理は弱いといえるかもしれませんが、⼀部IPO銘柄のパフォーマンスは好調で、第4四半期にはIPOが活発になり、激動の2020年を無事に締めくくる舞台は整いました。
Paul Go
Asia-Pacific EY Private Assurance Leader
2020年第3四半期は、IPOが低調な時期というこれまでの常識を覆し、外出⾃粛や在宅ワークを強いられ、市場で流動性があり余っていたことから、第3四半期としては取引⾦額が過去20年間で最⾼、取引件数も第2位を記録しました。
世界的に⾒ても、年初来のIPO活動は加速しており、総件数は14%増の872件に上り、調達⾦額も実に43%増の1,653億⽶ドルに達しました。
今年はまさに予測不能な年です。最終四半期を迎えた今、投資家は市場不安の兆しがあれば直ちに利益確定を図るかもしれません。全世界で見られる経済の繁栄とGDPの乖離、そして株式市場のバリュエーションも投資家の間では多少の懸念材料となっています。
IPOを成功に導く可能性を最大限に高めるために企業が取るべき対策に関して、より詳細な洞察を参照するにはEYの株式公開の手引き(PDF)をダウンロードしてください。
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企業の長期的価値創造戦略の将来性を評価できるよう、その企業の無形価値をより体系的に測定したいという投資家の声がますます強まっています。