EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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規制対応に主眼を置いた受け身のレポーティングプラクティスではなく、信頼性の高いサステナビリティ情報を提供することによってステークホルダーに対する透明性と説明責任を追及する。これこそが、長期的な企業価値向上における重要なミッションです。
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投資家、規制当局、社会の圧力が高まりを見せる中、世界中でサステナブルファイナンスが本格化しています。かつては投資業界内におけるニッチで先進的な概念と見なされていたサステナブルファイナンスは、あらゆる形態の金融サービス企業にとって、戦略的な優先事項であり、実務対応が求められるものに急速になりつつあります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を除くと、今後10年間で、サステナブルファイナンスは業界にとって最も差し迫った課題、機会となるかもしれません。
サステナブルファイナンスは、異なる状況では異なる意味合いを有します。EYは、サステナブルファイナンスを、長期的な環境・社会・ガバナンス(ESG)基準をビジネス上の意思決定と一体化するように奨励する、あらゆる形態の金融サービスと定義づけています。その目的は、企業、コミュニティ、社会に対してより公平かつ持続可能で包括的な利益を提供することです。ステークホルダー資本主義あるいは包括的資本主義に注目が集まる中、ESGの概念が投資に取り入れられることで、サステナブルファイナンスは最も注目を集める存在になるでしょう。サステナブルファイナンスは、2050年までに二酸化炭素排出のネットゼロ実現に向けて資金を提供するという気候変動関連の重要な役割も担っています。
世界的に見ると気候変動の規模は、洪水、山火事、巨大暴風雨をはじめ、広範な経済活動を混乱させるだけでなく、個別企業の運営を妨げるようなその他の物理的事象など、膨大な範囲にわたる潜在的リスクを表しています。世界中で変化する天候パターンによって、特定業種のサプライチェーンの脆弱性が既に表れ始め、新型コロナウイルス感染症によってそれが一層鮮明化しました。いわゆる移行リスクと言われるものも同様に重要で、それらのリスクには、グリーン経済への移行をさらに進めることによる財政面および事業面の影響(例えば、化石燃料の制限に影響を受ける石油・ガス会社など)が含まれます。物理リスクは可視化がしやすく、現在も存在しているものですが、一方で、移行リスクは今後10年あるいはそれ以上にわたって継続的に増大するものと考えられており、その影響を考慮する必要があります。
金融サービスなしにはネットゼロ経済は実現できません。その他のセクターでも、物理リスクの影響に対応するためには保険や資金の支援が必要となり、そして何よりも、移行を実行するためには、戦略、ビジネスモデル、業務を適応させる必要があります。資金調達なしには、ブラウンがグリーンに変わる(環境にポジティブな影響を与えるようになる)ことはありません。資金調達のニーズは膨大です。反対に、移行を実行しない企業は、資金調達と投資が困難になると考えられます。また、影響は顧客にも及び、特に異常気象の影響が増大する地域の顧客は影響を受けるでしょう。
この記事では、これらのリスクと同時に魅力のある機会を考慮し、金融サービス企業がサステナブルファイナンスやネットゼロへの移行における役割を果たすための、明確で前向きなビジネス戦略を設定する必要性について説明しています。取るべき重要なアクションは多数ありますが(データ収集、モデリングおよびレポート機能の開発など)、銀行、保険会社、資産運用会社が将来の全体像を確立させることが重要です。