NECマネジメントパートナー株式会社の取締役執行役員常務(CSO)、末木聡氏が「NECグループにおける国内/海外シェアードサービス/GBSの取り組み」と題し、これまでの取り組みを説明しました。
NECマネジメントパートナーは、NECグループにシェアードサービスを提供するため2014年に設立された企業です。一般にシェアードサービスと言って思い浮かぶ経理、人事総務、調達、ITの運用保守や教育・研修といった企業活動の基盤を支える分野に加え、セールスやマーケティングの支援など、人や製品、サービスの価値向上を支えるサービスも提供している点が特徴です。
末木氏は同社設立の背景には、社会価値創造型企業への変革、グローバル成長基盤確立、そしてコスト競争力強化という三本柱を軸とするNECの「中期計画2025」があったと説明しました。「組織を越えたグループ全体の横断的な改革と、業務、IT、人の三位一体での改革。そして10万人の働き方改革を実現するという目的に向け、間接業務・要員の集約と業務の改革・高度化をNECグループの中でリードする会社として設立しました」(末木氏)
当時NECには9つのビジネスユニット、約200近い事業部が存在し、国内の連結子会社は46社に上る状況でした。「事業部や会社ごとに方言的な異なる制度やプロセス、作法があり、それらが障壁となって最適な人員配置が難しくなる側面もありました。NECグループ全体の競争力をグローバルに通用するレベルに持っていくため、シンプルで無駄のない業務プロセスを作り上げる必要があるという課題感から設立しました」(末木氏)
シェアードサービスの検討に当たって頭を悩ませるポイントの1つは、まず集約させてから標準化・効率化する方法と、ある程度標準化してから集約化する方法、どちらを選ぶかです。NECマネジメントパートナーでは、グローバルのベンチマークで多数派だったことに加え、個社ごとに標準化を進めるのは困難であるという判断から、まず集約してから標準化に取り組む方法を選択しました。
そして業務改革を進めるに当たっては、個社ごとに持っていたプロセスやリソースを、組織の壁を越えてグループ横断的に最適化するとともに、業務と人、ITの三位一体での改革を目指し、標準化を通して、人と業務を切り離して人のポータビリティを上げていきました。
こうした取り組みにおける大きな悩みが、どの業務を移管し、どの業務を残すかという線引きでしょう。NECマネジメントパートナーでは、「全体最適か、個別事業執行サポートか」と「戦略的か、実務的か」という2つの軸を用いて業務を4つの象限に分類し、主に実務的な領域をシェアードサービスでまかなう方針をとりました。
設立から9年間が経ちますが、これまでに多大な改革効果が得られ、NECグループの利益水準向上に貢献しています。ただ、改革効果は2017年をピークに暫減しているのも事実で、「もう一段、二段と進めるにはどうしたらいいかが1つの課題になっています」と末木氏は述べています。
NECマネジメントパートナーではこうした取り組みの中で、いくつかユニークな業務改革活動を実施しており、末木氏はその一部を紹介しました。
一つは「MaLIO」です。現場主導の小集団活動で、NECグループにおける生産革新活動のノウハウを導入し、情報共有推進などさまざまな改善活動を進めています。また「ROCKey」はより大きな規模での業務改革活動で、NECのリーン・シックスシグマの手法を用いています。ボトムアップのMaLIOとトップダウンのROCKeyが相互補完し合う両輪となり、改革効果を高めています。
NECグループは現在「2025中期経営計画」を掲げ、社会のDXとお客さまのDX、NEC自身のDXを推進していくことを目的に掲げています。その中でNECマネジメントパートナーは、あるべき姿を「NECグループの変革をリードする、SSCのフロントランナー」と定義しています。
具体的には、NECグループが掲げる重点テーマのインテリジェント化、つまり業務高度化目標を100%達成することと、グローバルベストプラクティスにおけるSSC成熟度の外部評価で4点台を取得することという2つの目標を掲げました。後者については、EYが提供するSSC成熟度評価というフレームワークを用い、現在の3.8ポイントから、2025年には4点台に乗せることを目指しています。世界のフロントランナーとなっている企業は同じフレームワークで評価すると4点台を越えており、それらに肩を並べることを目標にしているのです。
同社は目標実現に向け、パフォーマンス管理基盤の構築とサービス管理基盤の整備、エンドツーエンドでのプロセス改革、そのための人材高度化といった重点課題を挙げ、段階的に実施している最中にあります。Strategy、Operations、Control & Measurementという3つの分野に分かれた12のカテゴリでそれぞれ目標を掲げ、活動を推進しています。
特にインテリジェント化に関しては、事業部とCoE(Center of Excellence)が一体となって、ChatGPTをはじめとする生成系AIなど新たなデジタル技術を業務に適用していく方針です。「失敗してもいいからまずチャレンジしてみる姿勢で、高速にPDCAを回していきます。また、その実行を担う人材育成も進めていきます」(末木氏)
2025年以降のビジョンについても議論を始めています。今まさに取り組んでいる効率性やコスト削減効果の実現、コーポレートインフラの強化を引き続き実行していくとともに、「長期的にはNECグループの課題に対応すべく、コントロール・ガバナンス機能を強化し、事業成長プラットフォームの役割に進化していくことを目指しています」と末木氏は述べました。
現時点でも、シェアードサービスの効率化を図るために、さまざまな取り組みを行っています。その1つが、バックオフィス業務の業務量と稼働状況を可視化していくパフォーマンス管理基盤「プロジェクトGaudi」で、ブラックボックス化しがちなバックオフィス業務を可視化し、より効率化できる方法を見いだし、余力を創出・再活用することを目指した取り組みです。業務を見える化し、ボトルネックを分析することによって、エンドツーエンドでの最適化が図れると期待されています。また、個々人のパフォーマンスも見える化し、評価の公正化・公平化にも寄与します。
ポイントは、適用先の組織やチームに合わせて最適な方法論を整理し、ともに展開していくことだと末木氏は指摘しました。「プラットフォームを導入するだけでは、効率化は進みません」(末木氏)
他にも、サービスマネジメントやRPAの活用、リスク管理のインテリジェント化、あるいはロケーションフリーの働き方に合わせた最適なサービス提供を支援する「ハイブリッド・コンシェルジュ」など、さまざまな取り組みが進行中です。また、それらを支える人材についても、段階的に専門性を高めていける育成システムを整備しています。