単なるコスト削減だけに終わらない 高度なGBSやシェアードサービスが企業にもたらす本質的な価値を見つめる

単なるコスト削減だけに終わらない 高度なGBSやシェアードサービスが企業にもたらす本質的な価値を見つめる


グローバルビジネスサービス(GBS)による高度化推進へ向けてのポイント - GBSサーベイ分析結果(2023年6月27日開催)


要点

  • 戦略的にシェアードサービスとGBSに取り組んだNECマネジメントパートナーは大きな成果を上げている。
  • 高い関心が寄せられつつも進まないGBS高度化、サーベイからは3つの推進ドライバーが明らかに。
  • GBS高度化は企業やグループ全体に価値を提供し、ビジネスそのものに貢献する原動力。

シェアードサービスやグローバルビジネスサービス(GBS)は、主に間接部門の定型的な業務を集約することでコストを削減し、企業グループ全体の競争力を高める手段として注目されてきました。いち早く戦略的に取り組んできた企業では、エンドツーエンド、かつより広範な業務領域に対象を広げるとともに、業務の標準化・高度化というステップへと進み始めています。

EYストラテジー・アンド・コンサルティングが6月27日に実施したセミナー「グローバルビジネスサービス(GBS)による高度化推進へ向けてのポイント - GBSサーベイ分析結果」では、そのような先進的な取り組みを進めるNECマネジメントパートナーの末木聡氏を招き、戦略的なGBS構築を通してどのように企業価値を高めてきたかの取り組みが紹介されるとともに、EYが実施したGBSサーベイから得られた知見が解説されました。


NECマネジメントパートナー株式会社 取締役執行役員常務(CSO)末木 聡 氏

NECマネジメントパートナー株式会社
取締役執行役員常務(CSO)末木 聡 氏



1

Section1

戦略的にシェアードサービスに取り組み、大きな成果を挙げているNECマネジメントパートナー

NECグループは「中期計画2025」に基づき、組織を越えた横断的な改革を目指してシェアードサービス導入に取り組み、2014年にNECマネジメントパートナー株式会社を設立。9年間でNECグループの利益水準向上に貢献する多大な改革効果を実現しましたが、そこで歩みを止めることなく、さらなるインテリジェント化に取り組んでいます。


NECマネジメントパートナー株式会社の取締役執行役員常務(CSO)、末木聡氏が「NECグループにおける国内/海外シェアードサービス/GBSの取り組み」と題し、これまでの取り組みを説明しました。


NECマネジメントパートナーは、NECグループにシェアードサービスを提供するため2014年に設立された企業です。一般にシェアードサービスと言って思い浮かぶ経理、人事総務、調達、ITの運用保守や教育・研修といった企業活動の基盤を支える分野に加え、セールスやマーケティングの支援など、人や製品、サービスの価値向上を支えるサービスも提供している点が特徴です。

末木氏は同社設立の背景には、社会価値創造型企業への変革、グローバル成長基盤確立、そしてコスト競争力強化という三本柱を軸とするNECの「中期計画2025」があったと説明しました。「組織を越えたグループ全体の横断的な改革と、業務、IT、人の三位一体での改革。そして10万人の働き方改革を実現するという目的に向け、間接業務・要員の集約と業務の改革・高度化をNECグループの中でリードする会社として設立しました」(末木氏)

当時NECには9つのビジネスユニット、約200近い事業部が存在し、国内の連結子会社は46社に上る状況でした。「事業部や会社ごとに方言的な異なる制度やプロセス、作法があり、それらが障壁となって最適な人員配置が難しくなる側面もありました。NECグループ全体の競争力をグローバルに通用するレベルに持っていくため、シンプルで無駄のない業務プロセスを作り上げる必要があるという課題感から設立しました」(末木氏)

シェアードサービスの検討に当たって頭を悩ませるポイントの1つは、まず集約させてから標準化・効率化する方法と、ある程度標準化してから集約化する方法、どちらを選ぶかです。NECマネジメントパートナーでは、グローバルのベンチマークで多数派だったことに加え、個社ごとに標準化を進めるのは困難であるという判断から、まず集約してから標準化に取り組む方法を選択しました。

そして業務改革を進めるに当たっては、個社ごとに持っていたプロセスやリソースを、組織の壁を越えてグループ横断的に最適化するとともに、業務と人、ITの三位一体での改革を目指し、標準化を通して、人と業務を切り離して人のポータビリティを上げていきました。

こうした取り組みにおける大きな悩みが、どの業務を移管し、どの業務を残すかという線引きでしょう。NECマネジメントパートナーでは、「全体最適か、個別事業執行サポートか」と「戦略的か、実務的か」という2つの軸を用いて業務を4つの象限に分類し、主に実務的な領域をシェアードサービスでまかなう方針をとりました。

設立から9年間が経ちますが、これまでに多大な改革効果が得られ、NECグループの利益水準向上に貢献しています。ただ、改革効果は2017年をピークに暫減しているのも事実で、「もう一段、二段と進めるにはどうしたらいいかが1つの課題になっています」と末木氏は述べています。


NECマネジメントパートナーではこうした取り組みの中で、いくつかユニークな業務改革活動を実施しており、末木氏はその一部を紹介しました。

一つは「MaLIO」です。現場主導の小集団活動で、NECグループにおける生産革新活動のノウハウを導入し、情報共有推進などさまざまな改善活動を進めています。また「ROCKey」はより大きな規模での業務改革活動で、NECのリーン・シックスシグマの手法を用いています。ボトムアップのMaLIOとトップダウンのROCKeyが相互補完し合う両輪となり、改革効果を高めています。

NECグループは現在「2025中期経営計画」を掲げ、社会のDXとお客さまのDX、NEC自身のDXを推進していくことを目的に掲げています。その中でNECマネジメントパートナーは、あるべき姿を「NECグループの変革をリードする、SSCのフロントランナー」と定義しています。

具体的には、NECグループが掲げる重点テーマのインテリジェント化、つまり業務高度化目標を100%達成することと、グローバルベストプラクティスにおけるSSC成熟度の外部評価で4点台を取得することという2つの目標を掲げました。後者については、EYが提供するSSC成熟度評価というフレームワークを用い、現在の3.8ポイントから、2025年には4点台に乗せることを目指しています。世界のフロントランナーとなっている企業は同じフレームワークで評価すると4点台を越えており、それらに肩を並べることを目標にしているのです。

同社は目標実現に向け、パフォーマンス管理基盤の構築とサービス管理基盤の整備、エンドツーエンドでのプロセス改革、そのための人材高度化といった重点課題を挙げ、段階的に実施している最中にあります。Strategy、Operations、Control & Measurementという3つの分野に分かれた12のカテゴリでそれぞれ目標を掲げ、活動を推進しています。

特にインテリジェント化に関しては、事業部とCoE(Center of Excellence)が一体となって、ChatGPTをはじめとする生成系AIなど新たなデジタル技術を業務に適用していく方針です。「失敗してもいいからまずチャレンジしてみる姿勢で、高速にPDCAを回していきます。また、その実行を担う人材育成も進めていきます」(末木氏)


2025年以降のビジョンについても議論を始めています。今まさに取り組んでいる効率性やコスト削減効果の実現、コーポレートインフラの強化を引き続き実行していくとともに、「長期的にはNECグループの課題に対応すべく、コントロール・ガバナンス機能を強化し、事業成長プラットフォームの役割に進化していくことを目指しています」と末木氏は述べました。

現時点でも、シェアードサービスの効率化を図るために、さまざまな取り組みを行っています。その1つが、バックオフィス業務の業務量と稼働状況を可視化していくパフォーマンス管理基盤「プロジェクトGaudi」で、ブラックボックス化しがちなバックオフィス業務を可視化し、より効率化できる方法を見いだし、余力を創出・再活用することを目指した取り組みです。業務を見える化し、ボトルネックを分析することによって、エンドツーエンドでの最適化が図れると期待されています。また、個々人のパフォーマンスも見える化し、評価の公正化・公平化にも寄与します。

ポイントは、適用先の組織やチームに合わせて最適な方法論を整理し、ともに展開していくことだと末木氏は指摘しました。「プラットフォームを導入するだけでは、効率化は進みません」(末木氏)

他にも、サービスマネジメントやRPAの活用、リスク管理のインテリジェント化、あるいはロケーションフリーの働き方に合わせた最適なサービス提供を支援する「ハイブリッド・コンシェルジュ」など、さまざまな取り組みが進行中です。また、それらを支える人材についても、段階的に専門性を高めていける育成システムを整備しています。

最後に末木氏は、グローバルでのシェアードサービス展開についても説明しました。NECは世界50カ国以上、約300拠点でビジネスを展開していますが、設立の経緯は地域によって異なっていました。一般にコスト削減が第一の目標とされますが、例えば中国の場合はむしろコンプライアンスやリスク低減を念頭に置いてスタートしています。ここで得られた成果をアメリカ、オーストラリア、シンガポール、イギリス、オランダといった各国へ広げているところです。

ただ、海外ではすでに外部のBPOベンダーに業務を委託している部分もあったため、国内とは業務切り分けのラインがやや異なります。経理・財務、調達、HRといった領域が中心で、意思決定や承認行為はグループ内に残しているそうです。また、地域統括体制をベースにセンターを作り、その傘下にある現地法人のバックオフィス業務を外部化していく形態をとっています。

「地域統括にBPO推進部門を置くことで、各現地法人による恣意(しい)的な委託を防ぎ、フェアな形で業務を出していくことができ、内部統制の強化や不正防止といった効果が出ています。もちろん業務効率化という面でも多大な改革効果が生まれています」(末木氏)


EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ファイナンス パートナー 永井 康幸

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ファイナンス パートナー
永井 康幸


2

Section 2

高まるGBS高度化ニーズ、実現の鍵を握る3つの推進ドライバーとは

EYのサーベイ「GBS高度化に向けた現実と課題」では、GBS高度化に対するニーズが非常に高まっている一方で、実態はまだこれからという実情が明らかになりました。そしてインテリジェントGBSの実現においては、体制、責任者、リソース・投資面における支援という3つのドライバーがキーになることも判明しました。

続く講演「GBSサーベイ結果に基づく高度化推進のポイント」では、EYストラテジー・アンド・コンサルティングのGBSパートナー、永井康幸が、2022年6月から11月にかけて実施した「GBS高度化に向けた現実と課題」と題するサーベイのハイライトとそこから得られたインサイトを紹介し、GBS高度化におけるポイントは何かを説明しました。
 

労働人口の減少やテクノロジーの進化、地政学リスクの高まりといったさまざまな要因を背景に事業環境は大きく変化しました。それにともなって、NECマネジメントパートナーの取り組みに見られるとおり、グローバルビジネスサービス(GBS)やシェアードサービスのさらなる効率化、高度化が求められています。

では、高度なGBSにはどういった要素が求められるのでしょうか。永井はGBSの先進モデル(アドバンスモデル)には7つの特徴があると説明しました。具体的には「エンドツーエンド」「自社リソースと外部ベンダーのBPOのハイブリッドなオペレーション」「1カ所集中ではなく、リモートからのバーチャルなオペレーションを活用したロケーション」「ギグワーカーなども含めた多様な雇用形態」「サービスの高度化」「ガバナンスの強化」「国や言語の違いを超えたコミュニケーション」です。

そして、講演の主題でもあるサービスの高度化について、「過去はコストをいかに下げるかだけに主眼が当てられる傾向にありました。しかし最近では、集約した上でさらに効率化し、コストは抑えつつ、いかに高度化を図っていくかが求められています」と述べ、その手段としてワークフローや生産性を可視化する稼働管理、プロセスマイニング、サービス管理といった取り組みをいかに進めるかが問われていると説明しました。

その上で永井は、「GBS高度化に向けた現実と課題」と題したサーベイの結果を紹介しました。この調査は国内企業を中心に、日本国内でのシェアードサービス、そして日本も含むグローバルでシェアードサービスやGBSを運営している企業42社を対象に実施され、それぞれについて分析を加えたものです。

まず、現在集約している機能は何かを尋ねたところ、「経理・財務」「人事」「IT」そして「調達購買」といったおおむね予想通りの結果が得られました。ただ、国によるレギュレーションの違いを踏まえる必要がある「税務」についても、国内で24%の企業が集約を進めていることも判明した点がポイントです。「社内で専門人材を確保し続けることが難しくなっていることを背景に、集約が進み始めていると思われます」(永井)

次に、今後集約を検討している領域を尋ねたところ、引き続き「経理・財務」「人事」「IT」「税務」「調達購買」といった分野が挙げられました。ただ同時に「FP&A」や「サプライチェーンマネジメント」「エンタープライズデータ管理」といった回答も目立つ結果となりました。
永井はこの結果について「旧来型のコーポレートファンクションにプラスアルファする形で、新たな領域にも興味が向いてきていることが明らかになっています」としました。
 

サーベイではBPOの活用状況も調査しています。この結果、調査企業の約半数がBPOベンダーを併用していることが明らかになりました。

一方で、BPOを活用する中では、「業務のブラックボックス化」にはじまり、「BPOベンダーを切り替えたくても選定の判断が難しい」「割高である」といったさまざまな課題が存在することも判明しました。そして、ブラックボックス化とも関連する課題として、業務が見えにくいが故に「効率化が推進できない」とする回答も少なくありませんでした。

既存の業務をどのように切り出し、機能分担していくかについても示唆が得られています。自社でシェアードサービスを運営していくか、あるいはBPOベンダーに任せるか、そのハイブリッドで進めるかについては判断が分かれるところですが、「専門的な領域をどこまで自社でやり続けられるか、そして業務効率化をどこまで自社のイニシアチブで進められるかという部分で課題が出てきます。このため、併用モデルの中でも切り分けを明確にしていくことが重要です」と永井は指摘しました。

そして、最適なオペレーションを実現する手法として、GBSとBPOの中間形態とも言える「BOT」(Build, Operate, Transfer)と呼ばれるモデルが浸透し始めていることに触れました。BOTとは、まず業務のプロセス定義やオペレーターの採用、業務の引き継ぎといった部分を外部の専門ベンダーに任せて進めつつ、安定運用に移った段階でオペレーターを転籍させ自社社員にするモデルです。「最近は、オフショアから国内へ回帰する動きが見られていますが、国内での要員手配が課題になっています。今後は国内におけるBOTモデルの活用も期待されるでしょう」(永井)

サーベイではテクノロジーの導入状況についても調査しました。すでにRPAやワークフロー、OCR/AI-OCRといったツールは調査企業の半数前後で導入が進んでおり、今後は「レポーティング・ダッシュボード」や「アナリティクス」「決算支援ツール」などの導入意欲が高い傾向があります。「引き続きこういったツールや新しいテクノロジーを取り込みながら改善を続けていく姿勢が明確です」(永井)


EYではその先の姿として、「インテリジェントGBS」を提唱しています。インテリジェントGBSでは、オペレーションの状況や改善効果、オペレーターの生産性など、ダッシュボードを通してリアルタイムに把握できる「デジタルコマンドセンター」によって全体を把握します。そして、プロセスマイニングの仕組みやRPA、ワークフロー、各プロセスを支援するツールをつなぎ合わせ、基幹システムとも連携できるプラットフォームを構築し、継続的な業務改善を図っていきます。先進的な企業ではすでにインテリジェントGBSへの取り組みが始まっています。

GBSの高度化に関する意向を調査したところ、90%以上の企業が高度化のニーズがあると回答しました。具体的には、いわゆる高度化という言葉から連想される「付加価値業務提供」だけでなく、「最新テクノロジーの導入」「標準化など、プロセスコントロール責任者の配置」「高度人材育成」といった項目が並んでおり、「必ずしも業務自体が変わることのみではないことがわかります」(永井)

ただ、高度化のニーズはこのように高い一方で、現実はまだまだのようです。53%は高度化ニーズを具体的な実行計画に落としていくノウハウが不足していると回答しています。高度化施策を実行できているとした企業に至っては15.6%にとどまる状況でした。「ほとんどの会社で高度化ニーズがある一方で、実際に何らかの施策を打っている会社は非常に少ない割合にとどまっています」(永井)

では、この15.6%の企業はどうやって高度化を実現しているのでしょうか。サーベイ結果の分析からは、「外部の専門ベンダーやプロフェッショナルと一緒に推進している」「責任者を配置している」「リソースや投資面でグループからサポートを受けている」という3つの具体的なドライバーが見えてきました。

グローバルの先進的な企業では、例えばGBSのセンター長を置くだけでなく、サービス管理責任者や業務改善責任者、あるいは高度化、標準化・プロセスコントロールの責任者などを配置し、明確なミッションを設けて取り組んでいます。同様に、リソースや投資面でのサポートを受けている企業も高い傾向にあります。

一方で日本ローカルにおいては、残念ながら「マネジメントの関心は非常に高いものの、推進に対する具体的なサポートが特に提供されていないという結果が明確に出ています」と永井は指摘しました。この結果、GBSの高度化に関心を持ちながら、サポートもなく、どう進めればいいかわからない——という状態に置かれている企業は少なくないようです。


EYではGBSの進化を4つのステージに分類して定義しています。今回サーベイ対象となった企業のほとんどが、個別のシェアードサービスを利用する「ステージ1」から、リージョン単位のシェアードサービスを活用する「ステージ2」の間に位置しており、GBSやアドバンスGBSに到達している企業はほとんどありません。永井は、先進的な企業は十数年かけてこのステージをステップアップしてきたことに触れ、段階的に効率化・高度化を図り、進化を続けていくべきだと呼びかけました。

そして一連の取り組みにおいては、「GBSで最終的に何を実現したいのか」という目的を明確に定義し、トップマネジメントの強いコミットメントを得ることが重要だと強調しました。「その上で、先ほど申し上げた体制、責任者、リソース・投資面における支援という3点セットを意識した取り組みを行うことが、GBSの高度化にとって最短距離になるでしょう」(永井)


3

Section 3

実践したからこそ断言できる、GBS高度化は「メリット以外ありません」

最後の質疑応答では、ブラックボックス化を避けるポイントなど、シェアードサービスやGBSに取り組む現場からの本質的な質問が寄せられました。そしてあらためて、GBS高度化は企業やグループ全体に価値を提供し、ビジネスそのものを大きくしていく原動力であることが強調されました。

最後の質疑応答では、2つの講演を踏まえた実践的な質問が寄せられました。

例えば「欧米に比べASEAN地域では、GBSを進めるに当たって言語対応のコストメリットが出にくいといった障壁があるのではないでしょうか」という問いに対し、末木氏は率直に「確かにコストメリットを出すのは難しいです」と答えました。ただ、「一方で、コストメリット以外に、外部や別組織に業務を集めることで不正に歯止めがかかり、コンプライアンスリスクが低減できるメリットもあります」(末木氏)

また、EYのサーベイからも明らかになった、BPOによって業務がブラックボックス化するのではという懸念に関する質問も寄せられました。永井は「最初はわかりやすい状態でも、時間がたつと業務が変わり、ツールが入ったり、人も変わったりすることで、明確に可視化、共有されず、よくわからなくなってしまうことがあるようです」とコメントし、それを解消するために、BPOベンダーの現場を定期的に確認し、さらにそのことを契約に盛り込むことが1つの手だとアドバイスしました。

NECマネジメントパートナーでは、まさにそうした取り組みを実践しているそうです。「BPO先では業務のプロセスマップやマニュアル、ポリシーなどをすべて文書化しています。ただ、作った途端に陳腐化していくものなので、業務の変更に合わせて適宜改版していくといった管理が非常に大事だと考えています」(末木氏)。

また、効率化のために採用された各種ツールもブラックボックス化しやすい部分です。そこで毎年の監査では、文書だけでなくどのようなツールが活用されているかを、利用権も含めチェックしていると説明しました。「こういったことができる契約を最初から視野に入れ、BPOベンダーと交渉するのが良いと思います」(末木氏)

そして「GBS高度化のメリットは何か」という問いに永井は、「その企業やグループ全体に対し価値を提供し、ビジネスそのものを大きくしていく原動力になる仕組みだと捉えています」と述べ、コスト削減だけでなく、業務の変化への柔軟な対応を可能にしたり、コンプライアンスを強化したりするといった具合に広くメリットをもたらすとしました。

末木氏はずばり「メリット以外ありません」と断言。「効率化だけを追求していくと縮小均衡になっていきますが、企業グループとして価値をどこまで上げられるのか、そこにどう寄与していくかが、GBSやシェアードサービス、BPOの経営的な位置付けだと思います」と述べました。そして、さらに高度化を進め、単なるオペレーションの支援だけでなく、示唆に富んだ提案や情報を提供するといった形で経営に資するサービスを提供していくことが使命であると力強く述べています。


本サーベイの詳細は、以下をご覧ください。



ニュースリリース

EY調査、企業のグローバル・ビジネス・サービスやシェアードサービスの高度化に向けたノウハウ不足が明らかに

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 聡)は、国内で企業活動を行っている日系・外資系企業で、グローバル・ビジネス・サービスやシェアードサービスセンターを運用する40社を超える企業を対象にサーベイを行い、国内や海外のGBSやSSCの特性や高度化へのニーズ、取り組み実態および傾向を明らかにしました。本サーベイは、2022年6月から11月までインターネットによるアンケート調査で行われました。

EY Japan + 1

    サマリー

    GBSやシェアードサービスは、単なるコスト削減のための手段にとどまらず、企業およびグループ全体の価値を高めていく原動力です。さらにサービスを高度化し、インテリジェントなGBSを通じて、いっそう経営に貢献していくことができるでしょう。


    この記事について