EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
パンデミックが始まって以来、モビリティセクターは2つの包括的な疑問に直面してきました。つまり、これは一時的な状況なのかということと、そうでない場合は、移動に関する行動変化のうち、どれが一時的なもので、どれが恒久的なものかという疑問です。
まだ不明確な点も相当あるとはいえ、長期的な変化の兆しがいくつか現れています。ハイブリッド勤務と在宅勤務は多くの国々ですでに浸透しているとみられ、通勤は毎日ではなく週一度の活動になる可能性がありそうです。一方、デジタル化されたライフスタイルが確立され、仕事以外の移動にも同様の抑制効果をもたらしています。しかし、引き続き、大部分の消費者にとって自動車が好ましい移動手段であり、新車購入時にEVが主流の選択肢となる傾向が急速に高まっています。
しかし、需要状況が明白になったとしても、供給は別の問題です。すでに世界の自動車サプライチェーンは、特に半導体市場における供給遅延と供給不足により、打撃を受けています。さらに、ウクライナ情勢による地政学的影響と拡大し続ける経済や物流の混乱が追い打ちをかけています。自動車メーカーや販売店が今後数カ月間に直面することになる最も難しい課題は、増大する需要に応じて十分な自動車を供給することかもしれません。
ガソリン価格の高騰とマイクロチップの不足は、最近報告された、米国において第1四半期の自動車販売が急激に減少(前年比26%減1)し、英国でも自動車販売が前年比34%減となったことが原因とされています2。一部のメーカーは、設計を変更して使用するチップを減らす、あるいは一時的に必要最小限のチップセットのみを搭載した新車を出荷するなどの非常手段を取り、供給が制約される中で出荷を増やすべく取り組んでいます。
EVの販売台数は、技術に対する消費者の信頼が向上し、ガソリン価格や通行料金に対する懸念に後押しされ、予想を上回る速度で伸び続けています。 EY Mobility Lens Forecaster (EY独自の予測モデリングツール)では、前回の予測よりも5年早く、2033年までにEVの販売が他の駆動系全ての販売を上回ると予測しています。
しかし、生産の増加に伴い、EVも、ICE市場を悩ませている供給制約要因の多くから逃れられなくなるでしょう。また、EVに特有であり、同じ程度に厄介で、特にバッテリーの原材料と容量に関する供給制約要因も存在します。古いICE技術と新しいEVやハイブリッド車の双方の供給と収益性の間に妥協点を見いだすことは、移行が加速する中で、深刻な課題であり続けるでしょう。
このように、自動車業界はパンデミックを通じて、意識的な移動手段の選択(およびモビリティの一般的な低下)とともに、EVを好む消費者の行動が明確化するのを目にすることになりましたが、その一方で、供給に関するまったく新しいジレンマも生まれました。EVやハイブリッド車のドライブトレインを優先するか、また、より手頃な価格の(しかし利益率の低い)車両よりもプレミアムモデルを優先するかについて、難しい選択をしなければならないかもしれません。
2022年に躍進するには、消費者に「どんな自動車を買いたいか」を尋ねるだけでは十分ではなく、「もし十分な量を製造できないとすれば、どうするべきか」と業界が自問する必要があるかもしれません。