EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
―企業に求められる開示情報は、大きく変わった
池山:EYを含む大手アカウンティングファームは、AIをはじめとしたデジタルへ1,000億円以上の投資をすると表明しており、新たな時代の到来を感じています。そのような中、EYでは、ヒトへの投資として全てのEYメンバーが受講可能なコーポレートMBAである「EY Tech MBA」や、修士号プログラム「EY Masters in Sustainability by Hult」(以下、MSUS)を実施しています。今回は、MSUS第1期生として日本人で初めて修了された英 正樹さんにお話を伺います。
池山:最近は財務諸表監査だけでなく、非財務情報の開示に対する保証業務の重要性が急速に高まっています。英さんはこの点について、どのように捉えていますか。
英:まず、前提として、EYではLong-term valueという表現を用いていますが、企業の長期的価値についてお話します。企業価値の源泉は有形資産から無形資産に移ってきているというのは以前から言われています。この無形資産は貸借対照表にオンバランスできているものもあれば、オフバランスとなっているものもあり、財務情報だけで企業価値が説明できないため、伝統的なステークホルダーである投資家が求めている企業開示が、財務情報のみではなく非財務情報に拡大してきています。また、ステークホルダーの範囲も投資家のみならず、顧客、取引先、地域社会など広がりを見せています。自社の利益のためであれば自国外だったら悪い煙を出してもいい、自国から遠い国の人であれば過度な労働を強いても良い、といった価値観はもう通用せず、自社のビジネス活動の影響について自国やグループの内外問わず、自社のビジネスに関連するものであれば責任を持たなければいけない時代になっているのです。企業の責任は広範囲に及び、温室効果ガスの話だけではなく、人権問題や生物多様性の部分も含まれています。このようにステークホルダーから企業に求められる情報は既に大きく変わっており、監査人が信頼性を付与すべき対象も変化してきていると痛切に感じています。