表1:本DD指令における重要議論領域を巡るEUの関連機関の立場
重要議論領域 |
欧州委員会公表ドラフト(2022年2月) |
欧州議会採択ドラフト(2023年6月) |
対象事業者(EU企業) |
グループ1:
- 従業員数平均500人超、かつ、グローバルでの前年度売上高1億5,000万ユーロ超
グループ2:
- 従業員数250人超で、かつ、グローバルで前年度売上高4,000万ユーロ超、かつ、グローバルで売り上げの50%超が、悪影響の懸念が大きいとされる業種(※1)
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単体基準:
- 従業員数平均250人超、かつ、前年度純売上高4,000万ユーロ超
連結基準:
- 企業グループの最終親会社で、グループ内従業員数平均500人(超)、かつ、前年度純売上高1.5億ユーロ超
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対象事業者(第3国企業) ※域外適用 |
グループ1:
グループ2:
- EU域内での前年度売上高4,000万ユーロ超~1億5,000万ユーロ未満、かつ、グローバルで売り上げの50%超が、悪影響の懸念が大きいとされる業種(※1)
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単体基準:
- 前年度純売上高1.5億ユーロ超であって、そのうちEU域内純売上高4,000万ユーロ超
連結基準:
- 企業グループの最終親会社で、グループ内従業員数平均500人(超)、かつ、前年度純売上高1.5億ユーロ超であって、そのうちEU域内純売上高4,000万ユーロ超
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適用開始時期 |
グループ1: 指令案の効力発生後2年後 グループ2: 指令案の効力発生後4年後 |
以下に該当する事業者: 3年後 (EU企業)従業員数平均1000人超、かつ、グローバルでの前年度純売上高1億5,000万ユーロ超(企業グループの最終親会社がグループとして当該基準に該当する場合を含む) (第3国企業)EU域内での前年度純売上高1億5,000万ユーロ超(企業グループの最終親会社がグループとして当該基準に該当する場合を含む) 以下に該当する事業者:4年後 (EU企業①)従業員数平均500人超、かつ、グローバルでの前年度純売上高1億5,000万ユーロ超(企業グループの最終親会社がグループとして当該基準に該当する場合を含む) (EU企業②)従業員数平均250人超、かつ、グローバルでの前年度純売上高4,000万ユーロ超(※EU企業②は、5年後とすることも可能) (第3国企業)グローバルでの前年度純売上高1億5,000万ユーロ超、かつ、そのうちEU域内純売上高4,000万ユーロ超(企業グループの最終親会社がグループとして当該基準に該当する場合を含む) |
DDの対象 |
自社子会社およびバリューチェーンを対象 バリューチェーンは「確立した取引関係」から生じる悪影響に限定 |
自社子会社およびバリューチェーンを対象 「確立した取引関係」という概念を削除し、「取引関係」をバリューチェーン全体を含む定義に変更 |
DDのアプロ―チ |
リスクベースアプローチへの言及無し |
リスクベースアプローチ |
気候変動対策 |
グループ1企業に対して気候変動対応計画の採択義務(DD義務とは別個の異なる義務) |
全ての企業に対して気候変動対応計画の採択義務 (DD義務の構成要素として気候変動の緩和に関する環境への悪影響の適切な防止手段と位置づけ) |
取締役の義務(EU企業のみ) |
- 経営上の決定の際に、その決定によるサステナビリティ課題にもたらす結果についての考慮義務(25条)
- DDプロセスと措置の実施と監督義務(26条)
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「DDプロセスと措置の実施と監督義務(26条)」を削除(25条は維持) |
民事責任 |
DD義務を怠った結果、防止・停止するべきであった悪影響によって、第三者に損害が生じた場合 |
DD義務を怠った結果、防止・停止・是正・最小化するべきであった悪影響を引き起こし、または助長したことによって、第三者に損害が生じた場合 |
出典(これらを基に記事内容を作成):
P9_TA(2023)0209, Due Diligence and amending Directive (EU) 2019/1937(COM(2022)0071 – C9-0050/2022 – 2022/0051(COD))1, European Parliament, 2022, www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2023-0209_EN.pdf(2023年6月26日アクセス)
(※1)テキスタイルや農林水産業、鉱物資源など、欧州委員会が公表した本DD指令ドラフト案において指定された業種