不確実性に直面する今、CEOはビジネストランスフォーメーションを強化すべきか
不 確 実 性 に 直 面 す る 今 、 C E O は ビ ジ ネ ス ト ラ ン ス フ ォ ー メ ー シ ョ ン を 強 化 す べ き か
2024年1月期のEY CEO Outlook Pulseの調査で、低成長環境下にあっても、CEOがトランスフォーメーションを加速していることが明らかになりました。
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要点
CEOは、ビジネストランスフォーメーション(事業変革)を喫緊の課題として位置付け、市場の新たな現実の中で有機的かつ非有機的に事業を再構築することを目指している。 CEOもプライベートエクイティ(PE)企業のリーダーも、成長鈍化の予想と長引くインフレ、金利上昇の長期化を受け入れつつ、自らの見通しに対する確信を強めている。 CEOもPE企業のリーダーも、2024年は売買環境が上向き、大型ディールが復活するとして、M&A(合併・買収)に強気の見通しを示している。
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EY Japanの視点
グローバル企業のCEOは、世界経済の停滞が続くと予想しています。日本企業のCEOも9割強が停滞と予想している一方で、86%が収益成長率の増加を、88%が収益性の増加を見込み、世界のCEO以上に強気な見方を示しています。その理由としては、円安によって恩恵を受けた企業も一定数あったことに加え、M&Aや株式市場が、過去数四半期にわたって非常に好調だったこと、また、高い海外投資、消費者信頼感、日本への人材流入などが考えられます。
日本は、M&A投資候補国上位であるとともに、投資から資金を引き揚げるダイベストメントにおいても上位3位に入っています。これは日本が変わらず堅調で高い技術力をもった産業界および購買力の高い消費者基盤を有して世界有数の経済大国と認められていると同時に、日本が金利を最低水準で維持してきたことが、輸出国にとって競争力と収益を高め、日本への投資や事業拡大を目指す投資家にとってプラスに働いたのではないでしょうか。
2023年が組織にとってポリクライシス(複合危機)への対応に振り回された過渡期であるとしたら、2024年は、それをうまく乗り切るための行動を実践する年と言えます。ビジネスの運営コストがパンデミック前の水準に戻る可能性は低いとの認識から、ビジネス変革に対するCEOの考え方に変化が表れており、CEOは、成長に対して前向きな見方を維持しつつも、効率性とコスト管理の改善に主眼を置いた現実的なアプローチでビジネス変革を推し進めています。
また、政治の世界が企業の世界に与える影響はかつてないほどに強いものとなっています。そうした中、今年は政治活動にAIが台頭し始め、悪用の恐れも懸念されるなど、新たなリスクが表出しています。CEOは、こうした状況に鑑み、自社の戦略プランを策定する上で地政学的混乱を考慮する必要性を十分に認識しています。一方、リスク管理プロセスの有効性を懸念するCEOは依然多数を占めています。地政学的に不安定な環境を乗り切るためには、今こそ戦略の再評価と精緻化に取り組む必要があるでしょう。
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EY Japan マネージング・パートナー/ストラテジー・アンド・トランザクション EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 代表取締役
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2024年はトランスフォーメーションがCEOの最優先課題であることは間違いありません。CEOの大多数(95%)が2024年にはトランスフォーメーションを維持するか、加速させることを計画しています。トランスフォーメーション計画の加速を目指すCEOの割合(58%)に至っては、この6カ月間で3倍近い増加を見せています。自社の業績についての現実的でありながら楽観的な見通しと、グローバルなマクロ経済・地政学的環境に対する理解の深まりから、CEOは事業の大幅な再構築を目指しています。
経済は低成長が常態化し、近い将来に超低金利に戻る可能性も低いです。こうした状況に置かれながらも、CEOは、自社の成長と収益性に対する楽観的な姿勢を崩さず、人工知能(AI)を活用して財務オペレーションを中心とする業務効率化を進めています。しかし、こうした取り組みは有機的なビジネストランスフォーメーションのほんの一面に過ぎません。CEOは、ポートフォリオの構成にも着目しています。今は、この構成の見直しにちょうど良いタイミングかもしれません。というのも、PE企業のリーダーを対象とした比較調査の結果から、ターゲット資産として企業のダイベストメント(事業売却)を見込んだ投資計画を加速する機運が高まっていることが明らかになっており、双方にとってメリットのあるパートナーシップにつながる可能性があるからです。
CEOもPE企業のリーダーも同様に、2024年のM&Aに明るい見通しを示しています。いずれのグループも、低調が続いた2023年からディール市場全体が持ち直し、大型ディールが復活するとする回答が大多数を占めました。
EYでは、グローバルで活躍する企業のCEO 1,200名を対象とするCEO Outlook Pulse調査を四半期ごとに実施しています。「CEOが直面する喫緊の課題 (CEO Imperative)シリーズ」の最新版である本調査レポートでは、世界経済が新たな局面に移行する中で経営陣が直面する、資本配分や投資、ビジネストランスフォーメーション戦略などに関する課題を分析し、有益な気付きを提供しています。また、今回は、PE企業の投資部門リーダー300名の見解も取り上げ、事業の買収・再編・再生に関するPEファンド業界ならではの視点も盛り込んでいます。
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EYは、Financial Times Groupの調査・コンテンツマーケティング専門部門であるFT Longitudeに委託して、2023年12月から2024年1月にかけて、以下の2つの比較調査を実施しました。
1つ目の調査は、世界の大手企業のCEO 1,200名を対象に、オンライン上で匿名にて実施しました。世界の主要企業に影響を与える主なトレンドや動向について、また、今後の成長と長期的価値創造に対するビジネスリーダーの期待などについて有益な気付きを提供することを目的としています。調査対象の回答者は、21カ国(ブラジル、カナダ、メキシコ、米国、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、フランス、ドイツ、イタリア、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、英国、オーストラリア、中国、インド、日本、シンガポール、韓国)、5つのセクター(消費財・ヘルスケア、金融サービス、工業・エネルギー、インフラ、TMT〈テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム〉)にわたります。調査対象企業の年間の全世界売上高構成は、5億米ドル未満(19%)、5億米ドル以上10億米ドル未満(19%)、10億米ドル以上50億米ドル未満(30%)、50億米ドル以上(32%)です。
2つ目の調査は、PE企業の投資部門リーダー300名を対象に、匿名形式によりオンライン上で実施しました。事業の買収・再編・再生に関する、このセクター独自の視点を反映させることを目的としています。調査対象の回答者は、21カ国(ブラジル、カナダ、メキシコ、米国、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、フランス、ドイツ、イタリア、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、英国、オーストラリア、中国、インド、日本、シンガポール、韓国)にわたります。調査対象PE企業での運用資産残高(AUM)構成は、10億米ドル未満(15%)、10億米ドル以上100億米ドル未満(40%)、100億米ドル以上、500億米ドル未満(25%)、500億米ドル以上(20%)です。
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1
第1章
今こそ、変革の加速に乗り出すときである
CEOは、包括的な事業運営アプローチを取っています。
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上のインタラクティブな棒グラフは、今後12カ月間の事業ポートフォリオ変革計画において、CEOが取るポジションを世界全体と地域別で比較したものです。50%強が、ポートフォリオ変革を加速させる計画であるのに対し、ポートフォリオ変革をまったく計画していないとする回答者は5%にとどまっています。
概して、CEOは自社の短期的な成長に明るい見通しを抱き、意欲的です。半数強(58%)が今後12カ月の間に事業ポートフォリオ変革を加速させる計画だと回答しており、この割合は 2023年7月期の調査 の21%から大幅に上昇しました。また、さらに3分の1(37%)が現在の勢いの維持を予想しており、2024年は1年を通して、成長に向けた企業の取り組みにおいて有機的・非有機的に大きな動きが見られそうです。一方、いかなるビジネストランスフォーメーションも計画していないと回答したCEOもわずかではあるものの5%存在しています。こうした企業では、今後れを取ることが完全な戦線離脱の第一歩となりかねません。自らが属するセクターの変化にうまく適応していくことが不可欠になると考えられます。
ビジネストランスフォーメーションの加速を計画しているCEOの割合を地域別で見ると、米国を中心とする北・中・南米が最も多く(全体の60%)、アジア太平洋は58%、欧州は55%となっています。
このようにビジネストランスフォーメーションに意欲的な姿勢が広まっていることについて、CEOが予想外に強気の見方をしているからだと捉えられるかもしれません。しかし、多くのCEOは現在の不確実な世界の逆風に、先を見越して対応することを選んでいるのです。
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上のインタラクティブな棒グラフは、CEOが事業ポートフォリオの構成とあり方を見直すに至った主な要因7つを、世界全体と地域別で比較したものです。世界全体で最も多かったのは「テクノロジーの波及効果による業界再形成」(32%)です。
外部からの圧力としては、うち続くテクノロジーの波及効果と新たな競争への対応などがあります。テクノロジーは圧倒的なスピードで進化して各業界を変化させ続けています。こうしたテクノロジーによるイノベーションを取り入れない企業は、競合他社がテクノロジーの力を活用してプロセスの合理化やコスト削減、効率化を図る中、後れを取ることになりかねません。
事業ポートフォリオ変革を計画しているCEOのうち、かなりの割合(31%)が市場環境や市場でのバリュエーション(企業評価)をうまく生かしながら、社内の目標達成を支えることを望んでいます。その背景にあるのは、この1年間でディールのマルチプルが低下したとの認識です。これについては、Dealogic社のデータからも明白であり、EYが分析した結果、EV/EBITDA倍率は2022年末時点の9.9倍から8.9倍に低下していました。
CEOに検討を求める、アクティビスト(物言う株主)からの圧力も再び見られるようになっています。アクティビスト活動は2023年に過去最多を記録しました。地域別で最も多かったのは欧州とアジア太平洋で、いずれも新規活動が最多記録を更新しています¹。アクティビストは今後、企業のトランスフォーメーション計画を慎重に精査し、2024年も年間を通して、取り組みをさらに先へ、もっと加速させることを求める姿勢を強めそうです。CEOは、これまでより大きな圧力を受ける可能性が高く、最も強硬なアクティビストを味方につけておくか、あるいは他のステークホルダーに安心感を与えてアクティビストへの抵抗の支持を取り付けることができるよう、計画と目標を明確に示すことを余儀なくされると考えられます。
そうした中、CEOは、資本を再配分し、財務業績の向上に必要なコアケイパビリティへの資本集中を図るなど、独自の方策も講じて、ビジネストランスフォーメーションを推し進めています。CEOが現在置かれている環境では、1つの正解や、万能なアプローチなどありません。今後は、ポートフォリオ構成・構造と資本配分について、トランスフォーメーション戦略全体に沿って決定を下す必要があると考えられます。
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上のインタラクティブな棒グラフは、CEOが事業ポートフォリオ変革の資金調達で主に検討している手段4つを、世界全体と地域別で比較したものです。世界全体で最も検討されている調達手段は「業績と収益性の向上」(32%)です。地域別で見ると、この回答を選んだCEOの割合は、アジア太平洋が36%、欧州が32%でした。
目標達成のための財源としてCEOの視線の先にあるのは社内調達です。本調査でも、半数近く(48%)のCEOが業績と収益性の向上や資産の売却で、目標を達成するための資金を確保しようと考えています。その一方で、財源を社外に求めるCEOも増加傾向にあり、25%が、外部借入債務を財源にすると回答しています。こうした背景には、2024年を迎え、債券市場の資金調達環境の見通しが明るくなったことがあります。チャンスの扉が開く中、2023年後半から2024年初頭にかけ行われた今回の調査で、数多くの企業が債券市場の利用を選んでいます。
ところが、2024年に外部の財源を確保する道が開けたとしても、金利の高止まりが長期化する中では、金利負担がさらに増えることが想定されます。コスト構造と運転資金管理の両面から資金調達源を内部で最大限開拓することが、今、かつてないほど重要となっています。
こうした状況に鑑み、CEOは、ビジネストランスフォーメーション戦略のシナリオプランニングで先を見越したアプローチを取り、外部環境のさらなる変化を予測し、それに対応していかなければなりません。事業のさまざまな側面への影響を評価し、各領域に微調整を加えることで、戦略的プランニングを強化し、組織全体のレジリエンスを高めることができます。
目標と現実のバランスを取る:CEOが掲げる2024年の戦略
ビジネストランスフォーメーション計画に対してCEOが取っている、意欲的かつ現実的なアプローチは、2024年にCEOとPE企業のリーダーが進めようとしている戦略や対応にも反映されています。
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上のインタラクティブな図は、2021年から2023年の間に、AIや⽣成AIに⾔及した数を⽰しています。本データから、2023年の年初以降、企業のさまざまな決算関連の議事録でAIや⽣成AIの⾔及数が、すでに2倍以上に上っていることが明らかになっています。
運転資金管理 :CEOもPE企業のリーダーも、短期的な最優先課題に運転資金管理を挙げています。超低金利と流動性の上昇に支えられ、何が何でも成長を追求するという、かつての状況から、今では、資金調達コストが上昇し、社内の投資に必要な資金の調達に財務の最大限の効率化が重視されるという新しいパラダイムへとシフトしています。
AI技術の導入 :テクノロジーやAIが持つ可能性を活用し、効率化と財務業績の向上を図りたいとCEOが考えているのは明らかです。
しかし、「AIは効率面でメリットをもたらす半面、収益成長への効果はほとんど見込めない」に同意したCEOは4分の3(76%)を占め、同意しないとした回答者はわずか11%でした。一方、PE企業のリーダーはAIが持つ可能性に強気の見方をする人が若干多く(19%)、効率面だけでなく、収益成長も促すと考えています。PE企業は、成長を後押しするテクノロジートランスフォーメーションの可能性に期待を寄せていたのと同じように、AIについても同様の成果を大胆に追求する可能性が高そうです。
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PE企業のリーダーはAIが持つ可能性に強気の見方をする人が若干多く(19%)、効率面だけでなく、収益成長も促すと考えています。PE企業は、成長を後押しするテクノロジートランスフォーメーションの可能性に期待を寄せていたのと同じように、AIについても同様の成果を大胆に追求する可能性が高そうです。
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これは、先に実施した EYの調査(英語のみ) の結果とも合致します。その調査結果から、大半の組織が、AIを軸とした業務の最適化やプロセスの自動化、チャットボットなどのセルフサービスツールの開発などを推し進めていることが分かっています。
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上のインタラクティブな棒グラフは、「うち続く評判の大きさからAIは効率面でメリットをもたらすと予想される半面、収益成長への効果はほとんど期待できない」に同意したCEOとPE企業のリーダーの割合を示しています。いずれの回答者グループも大多数が、この質問に「非常にそう思う」か「ややそう思う」と回答しています。
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第2章
激動の世界で個々の追い風を創出する
CEOは外部環境が成長目標達成の十分な後押しにはならないことを理解しています。
ビジネストランスフォーメーションと成長目標の成否は、「マクロ経済情勢」と「地政学戦略」という、激動する2つの領域について、その企業が理解し、うまく対応できるかどうかに左右されるでしょう。
1. 今後のマクロ経済情勢が厳しさを増すことも想定しつつ、CEOは成長アジェンダを推し進める自社の能力に自信を深めている
振り返ると、2023年は再評価の年でした。中国が約3年ぶりにロックダウン解除したことで世界経済が大幅に回復するとの期待が広まったものの、期待どおりの展開にならず、世界経済は、当初の希望から、失望と幻滅へと揺れ動きました。それに伴い、ナラティブの中心は各国中央銀行の一致協力によるインフレ抑制策へと移行しました。成果は見られるものの、主要な国・地域ではインフレが長引き、インフレ目標達成には課題がまだ残っているところが少なくありません。
CEOの4分の3(76%)が「低成長環境が長期化する可能性が高い」に同意し、ほぼ同数(78%)が「インフレが今後も主要な問題となり、それに伴い金利上昇が長期化する」にも同意すると答えています。PE企業のリーダーについても、両方のシナリオに同意した人が過半数を占めましたが、興味深いことに、同意しなかった人も5分の1います。成長シナリオが20%、インフレシナリオが21%で、CEOのわずか10%と8%の倍以上です。PE企業のリーダーは、リスクをいとわない傾向があり、これまでコンセンサスより先に市場環境が変化したことのシグナルを送ることが多く、成長とインフレについて、より強気の見通しを示しがちです。
その一方で、経済的追い風が望めないという見通し全般には同意していますが、これは必ずしも、組織の業績に関する回答者の見通しに影響を及ぼすものではありません。
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上の3つのインタラクティブな棒グラフは、2024年の収益成長と収益性、事業運営コストが2023年と比べ、どのように変化するかについてのCEOの予想を世界全体と地域別で比較したものです。世界全体ではCEOの3分の2近くが、3つの項目すべてが上昇すると予想しています。
上記の調査結果は、2023年10月期のCEO Outlook Pulse(英語のみ) の調査結果と合致しています。
同様に、CEOの半数以上(57%)が投入コストと事業運営コストの上昇を予想している一方で、そのうちの大多数(85%)が、コスト上昇分のほとんどを顧客に転嫁できるとみています。これは生産者物価とインフレの動向や見通しを考えると妥当な想定です。
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上のインタラクティブな棒グラフは、事業運営コスト上昇分の最終顧客への転嫁に関し、CEOがどのように予想しているかを世界全体と地域別で比較したものです。世界全体ではCEOの大多数(85%)が、コスト上昇分のすべてまたは半分以上を転嫁できると予想しています。注:この質問は、2024年に投入コストと事業運営コストが上昇すると予想したCEOのみを対象としたものです。
収益成長と収益性、コストの見通しには、地域により明らかな違いが見られます。収益成長(75%)と収益性(74%)、コスト(70%)の上昇に自信を持つCEOの割合が他地域を大きく離して大きかったのはアジア太平洋です。コスト上昇分の顧客への転嫁についても、転嫁できると予想しているCEOが半数を超えました(54%)。このような収益成長と収益性を維持する能力を支えているのは、コスト規律の強化です。
2. CEOは地政学上の課題について理解を深めてきたものの、地政学的リスクは今や企業戦略にとって避けて通れない要素であるがゆえに困難な1年が待ち受けている
先進的な考えのCEOは、かなり前から景気循環の浮き沈みも織り込んで考え、予期せぬ経済・金融危機にうまく対応してきました。地政学的情勢が最大の懸念事項となった今、新たなスキルセットを開拓したCEOもいれば、地政学的リスク評価能力を高められていないCEOも存在します。
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上の棒グラフは、戦略・投資に関する意思決定・判断に地政学的リスクを組み入れる以下の手段について、 CEOが自社のケイパビリティをどのように評価しているかを表したものです。
地政学的リスクのモニタリングに必要なプロセスと専門知識 地政学的リスクが会社に及ぼし得る影響についての定期的な評価 地政学的リスクを管理する、明確に定められた有効なプロセス 取締役会の監督機能を含めた、地政学的リスクに対するガバナンスの明確な枠組み 地政学的リスク評価を、M&Aを含めた主要な投資判断に組み入れる枠組み
5つの項目すべてで業界をリードする高度なケイパビリティがあるとした CEOは半数近くに上りました。
CEOの半数近くが、リスクをはらんだ世界において、自社には地政学的環境の複雑さを理解するケイパビリティがあると回答しています。その一方で、CEOの約半数は戦略・投資に関する意思決定・判断に地政学的リスクを完全に組み入れるにはまだ改善の余地があると考えています。
また、上記5つの項目すべてで自社のケイパビリティを「高度」と評価したCEOの意思決定・判断には明らかな違いが表れています。このグループのCEOは、投資を先送りする可能性が低く、その他の投資関連の対応を講じる可能性がはるかに高いという傾向が見られました。
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上の棒グラフは、戦略・投資に関する意思決定・判断に地政学的リスクを組み入れるケイパビリティに応じて分類した、CEOの2つのグループが、投資計画をどのように修正する計画なのかを表したものです。高度なケイパビリティがあるとしたCEOは、投資を先送りする可能性が少なく、その他の投資関連の対応を講じる可能性がはるかに高いという傾向が見られました。
不安定化・多極分散化が進む地政学的環境に適応していくには、先を見越した効果的な地政学戦略の展開が不可欠であり、CEOは、今後、そうした対応に向けて取り組みのさらなる改善を図っていく必要があります。
本調査時点では、CEOは、業務運営上のレジリエンスを高めるために、単に投資の先送りやサプライチェーンの再構築を図る傾向があるのに対し、PE企業のリーダーでは、事業や市場から撤退するとする回答がはるかに多く見られました。この背景にあると考えられるのは、グローバル企業のグループ内における相互依存度の高まりか、あるいはPE企業の場合、資産を売却してもレピュテーション面でダメージを受けることがないとの認識です。その一方で、CEOは、PE企業のリーダーに比べ、投資を中止または取りやめるとする回答が多い傾向があります。しかし、その割合については、CEOもPE企業のリーダーも3分の1強にとどまっています。
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上のインタラクティブな棒グラフは、ほぼすべてのCEOとPE企業のリーダー(98%)が、地政学的課題を受けて、戦略的投資計画に修正を加えていることを示しています。CEOの主な優先課題が投資計画やダイベストメント計画の先送り(42%)であるのに対して、PE企業のリーダーは特定事業の売却や撤退準備戦略の着手に目を向けています(38%)。
2024年も1年を通して、政治・地政学的な不確実性にうまく対応することを強いる圧力が高まり続けることになるでしょう。とりわけ、今後12カ月間は選挙で投票する人口が世界の有権者の半数強に上ると予想されることから、CEOも、今後のビジネス環境にリスクが生じる可能性があることを認識しています。
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CEOの過半数(78%)が、世界各地でのポピュリズムの高まりが地政学的な不確実性を高め、政策面の不確実性などビジネス上の課題をもたらすと考えています。「AIが悪用され、今後12カ月間に行われる選挙に影響を与える可能性を非常に懸念している」とする回答も、ほぼ同数(76%)寄せられました。
こうした選挙により、短・中期的に規制・政策面の不確実性が高まることが予想されます。米国やEUをはじめ、一部の選挙戦では、世界のビジネス環境を根本的に左右し得る国際関係や経済政策に対するビジョンが対立しており、長年の間で最も重大な影響をもたらした選挙だったと言われることになるかもしれません。
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3
第3章
ディールメーカーが復活か?
CEOもPE企業のリーダーも大型ディールが復活すると予測しています。
2023年は世界全体のM&Aの取引額が、この10年で最も低い3兆米ドルにとどまりました。ただし、この取引総額を見ただけでは、昨年1年間に行われたM&Aのより複雑なストーリーは分かりません。2023年は歴史的な低調ぶりでスタートした後、取引額、取引件数ともに着実に改善し、第4四半期は極めて好調でした。
世界全体のM&Aの四半期別動向
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上の棒グラフは、2015年から2023年までの世界全体のM&A取引額と取引件数の推移をまとめたものです。
2023年第4四半期は取引額が1兆50億米ドルで、この四半期単独では、非常に順調であるように見えます。第4四半期は3,000億米ドルを超えた月が2カ月あり、12月は3,560億米ドルでした。重要なのはM&Aの勢いです。2023年を堅調に終えたことで、2024年を迎え、M&Aに対する信頼感が高まる可能性があります。
活況を呈している地域では、北米がM&A活動で最も魅力的なターゲット地域という地位を維持しました。2023年に発表されたターゲットディールの取引額は合計1兆5,000億米ドルで、2022年の取引額とさほど変わっていません。また、北米が世界全体の取引額に占める割合は50%です。これとは対照的に、EMEIAとアジア太平洋は2023年の取引額が対前年比でそれぞれ28%と12%減少しています。
政策と成長の不確実性が解消されるにつれ、第4四半期には大型ディールが戻り、市場が上向きになり、100億米ドルを超えるディールが14件発表されました。これは、パンデミック後のM&Aブームの絶頂期だった2021年第3四半期以降で最も多い数字です。CEOとPE企業のリーダーはいずれも、このトレンドが続くと予想しています。M&A市場が立ち直る中、CEOの4分の3強(79%)と、PE企業のリーダーも同じく71%が、(100億米ドル以上の)大型ディールが増えると考えています。
また、CEOの3分の1以上(36%)が今後12カ月間に買収を積極的に行うことを計画しています。この割合は、10月期の調査結果からわずかに増えた程度ですが、2024年はM&Aが活発化することを示唆する、もう1つの小さな兆候です。
2023年のM&A取引は、地域別で見ると米国が中心で、エネルギーセクターとライフサイエンスセクターのディールの増加が全体をけん引していました。2024年は、けん引役となる地域とセクターが広がるとCEOは予想しています。
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4
第4章
「星の並び」ではセルサイドの当たり年
セルサイドの活動が、企業にとってもPE企業にとっても追い風になると予想されます。
PE企業のリーダーは今後、CEOがダイベストメント計画を加速させる手助けができそうです。今後12カ月間に何らかの資産売却を計画しているCEOは3分の1近く(29%)おり、16%がその売却をトランスフォーメーションに向けた取り組みに対しての主な資金調達源にすることを考えていることから、今年はダイベストメントが多く行われる年になると思われます。
今年は企業によるダイベストメント活動が加速するとみるPE企業のリーダーが過半数(70%)おり、これらリーダーの回答から、優れたオペレーティングチームと事業再編ケイパビリティを持つPE企業がこれを好機と捉えていることがうかがえます。
一方、CEOが資産の売却を考えている国・地域はさまざまですが、第1位は中国でした。セクター別で見ると、ダイベストメント活動が増える可能性が高いのは工業、銀行、ライフサイエンス、TMT全般です。いずれのセクターでもディスラプション(創造的破壊)のレベルが高まっています。
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CEOの間では、先を見据えてポートフォリオと業務を集中させる上で、ダイベストメントが主な手段となり、それが強固な成長基盤の構築に役立つとの見方が目立ちます。
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上の円グラフは、CEOが考える、ダイベストメント活動を促進する主な要因をまとめたものです。最も多かったのは「将来のポートフォリオ戦略に合わなくなった資産のダイベストメント(売却)」です。
ダイベストメントで得た資金はより戦略的な取り組みや、喫緊の課題であるトランスフォーメーションに振り向けることもできます。
そのためCEOは、どのようなアクションが⾃社を最も良い⽅向へ向かわせるのかを積極的に検討しています。今後12カ⽉間、あるいはそれ以上にわたって競争⼒を⾼める上で必要なアクションを⾒極めているところです。
また、CEOとPE企業が連携を強め、より大きな成果を上げる余地があることは明らかです。売り手と買い手が万端の準備を整えれば最大の価値を引き出せるはずですが、今回の調査の結果から、ダイベストメントを成功に導くにあたり改善の余地があることが分かりました。
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上の3つの棒グラフは、以下の項目について、過去24カ月に、売り手である企業からの資産取得に対し、PE企業のリーダーの期待がどの程度満足させられたかをまとめたものです。
PE企業のリーダーの4分の3強が、期待どおり、または期待以上だったと回答しています。
過去2年間に売却資産を取得したPE企業のほとんどが取得を喜ぶ一方、その成果に少しも満足していないところが相当数あるのも事実です。こうしたディールを掘り下げて見ていくと、いくつかの主要なテーマが浮かび上がってきます。
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上の棒グラフは、PE企業のリーダーが売却またはカーブアウトされた子会社を取得するにあたっての最大の課題として挙げた項目をまとめたものです。最も多かったのは、以下のとおりです。
プロセスの断絶や人材の退職、中核事業からの逸脱などを含む、ケイパビリティの喪失(34%) 期待されたコスト効率の未達成(33%) 顧客やスケールメリットの喪失など負のシナジー効果(32%)
事業分割は、長期間にわたり大規模な組織に深く組み込まれてきた事業である場合には特に、困難を伴います。買い手にとっても売り手にとっても、独立したその資産が価値を最大化できると考えられる道筋を完全に把握することが不可欠です。
分割と売却をよりうまく進める上では、潜在的なバリュエーションについて、明確なナラティブを当初から提示することが欠かせません。このナラティブについては、経営幹部や資産の幅広いステークホルダーと共に作成し、また、最初からこの作成プロセスの中心を彼らに担ってもらう必要があります。分割が完了したら、買い手が既存のステークホルダーと協働してケイパビリティを維持し、市場シェアと顧客を守ることも不可欠です。
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この10年間は、売り手がトランザクションで得られる価値の最大化を図っており、ダイベストメントプロセスの高度化が進む傾向が見られました。トランスフォーメーション後の企業の将来展望を支える戦略と計画から、現在策定されているより詳細な税務・財務計画や、はるかに複雑になった機能分割やIT分離に至るまで、企業はあらゆる分割をより総体的に捉えています。こうした主要な領域には、経営幹部が足並みをそろえて対応し、また強力なプロジェクト管理チームが実務を管理することが不可欠です。
市場のボラティリティと経済の不確実性が当面続く見通しの中、2024年はポートフォリオの再構築を図る企業が増えると考えられます。不良資産の売却であれ、新規またはグリーンテクノロジーやAI・テクノロジーソリューションに再投資するための資金調達や、中核事業への再集中であれ、今年は市場に参入する売り手が増えるのは間違いありません。
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1. "Annual Review of Shareholder Activism 2023," lazard.com/research-insights/annual-review-of-shareholder-activism-2023 (2024年1月19日アクセス)
2023年10月期のGlobal CEO Outlook Pulseをダウンロードする
サマリー
CEOは、低成長環境にありながらも、自社の成長を加速させるため、ビジネストランスフォーメーションを積極的に推し進めることを目指しています。有機的・非有機的アプローチによるトランスフォーメーションなど、あらゆる方策を講じて、新たな環境で持続可能な成長を加速させる基盤を築きたい考えです。
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