「Ⅱ1. 日本の規程をそのまま翻訳して使う」形だと、日本以外の国からの赴任にそぐわない面が出てきます。一方で、「Ⅱ2. 具体的なことを定めず方針の記載にとどまる場合」も、結局何も決まっていないも同然です。さらに「Ⅱ3. 日本の制度を考慮せず、グローバルなものを作る」と、日本からの赴任者の考え方にそぐわないものになるリスクがあります。
そのため、その折衷案として、これまでの単一的な処遇から複線型の処遇を用意するなど、新たな考え方を取り入れつつも日本人にもなじむものにする必要があります。さらに、これまでの「生え抜きの日本人男性の管理職」から、女性や外国人、役員などさまざまな属性の方が海外赴任するようになっています。つまり、日本からの赴任者だけをみても多様化しています。そのため、単一の処遇を設定するのではなく、「海外赴任時の処遇に関するポリシー」を設定しつつも、赴任目的、赴任期間、業務内容などに応じた処遇を検討する必要があります。
この方式でポリシー作成を進める場合、まずは過去にどんな赴任者がいたのか、今後発生する赴任者としてはどのようなケースがあり得るのか、日本からの赴任者はもちろん、海外現地法人からの赴任者のケースもヒアリングしてみるとよいでしょう。
その上で、どんなケースがあり得るのかを整理し、それぞれにおいてふさわしい処遇をディスカッションし、自社グループではどれほどのパターンの処遇が考えられるかを整理します。「給与・手当」「福利厚生」「税・社会保険料」の三つに分けて考えていくことをお勧めします。
中には、「複線型の処遇を考えると一つのポリシーになり得ないのではないか」という不安をお持ちの方がいるかもしれません。
しかし、「当社の海外赴任の考え方は〇〇である」という大枠のポリシーを定めた上でそのポリシーに照らして処遇を考えた場合、「給与については△△と考える。そのため、赴任目的や業務内容・赴任期間を考慮すると、給与タイプとしてはA~Dまでの4タイプに分けられる。基本となるポリシーに照らすと処遇Aであれば手当はこのくらい、処遇Bであれば手当はこのくらい、処遇Cでは手当は払わない......」といった形で整理していきます。