EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
ベトナムはおおむね、世界貿易機関(WTO)関税評価協定1の枠組みに従っています。この枠組みと同様に、ベトナムの国内法では、関税評価について次の6つの方法が規定されています。
ベトナムの税関当局は、関税評価ルールの一部についてWTO関税評価協定とは異なる解釈をし、実施する可能性があるため、本稿ではこれらの方法の詳細とルールについてではなく、ベトナムの税関当局が適用している最新の慣行と関税評価の動向をお伝えします。税関による輸入者への関税評価に関する照会は、税関への関税評価の相談、税関当局による輸入時の質問、定期的または特別な事後調査の過程など、輸入に関連するどの段階でも実施される可能性があります。
ベトナムの規制では、税関当局が他国からの輸出価格または輸出国における国内販売価格を、輸入品の関税評価金額として使用することを禁じています。ただし、税関当局が輸入者に対し輸入価格の適正性について質問する際に、これらの価格が輸入者の輸入価格とほぼ同じであるかを確認するための比較対象として使用される場合があります(特に輸入者がこれらの価格を課税価格として使用する場合)。
この比較は、輸入者と外国の輸出者や売り手とが特殊関係にあり、かつ、この関係が取引価格に影響を与えていないことを裏付ける方法がない場合など、輸入者がその輸入価格を裏付ける他の書類や正当な根拠を有していない場合に特に役立ちます。
比較結果が受け入れられるためには、輸入者は、これが従うべき効果的な方法である理由を税関当局に理解させる必要があります。これは、各企業の特定の状況(市場で同種または類似の貨物を見つけることが困難かどうか、輸出者または売り手がそのような情報を開示する意思があるかどうか)にも依拠します。
また、非常に重要な留意点としては、この比較方法は輸入者がその取引価格を正当化するのに有効な方法である一方で、税関当局が積極的に課税価格の決定のために使用することはできないという点です。税関がこの比較方法を受け入れない場合は、上記6つの関税評価の決定方法に従って課税価格を決定します。
税関が、当事者間の特殊関係が取引に影響を与えていることに対する検証は、従来存在する論点です。WTO関税評価協定では、関連者間で取引が行われた場合に、税関当局はそれらの価格が特殊関係の影響を受けていない場合には、その取引価格を課税価格として採用することができると規定されています。一方で、ベトナムの法令では、税関当局が特殊関係の価格への影響を判断するためにどのような文書を確認するかについて詳細なガイドラインはありません(同種または類似貨物の価格、または国内販売価格からの逆算を使用する場合を除く)。
実務上、税関当局は、輸入者の発注プロセスと、輸入者が売り手と交わした契約の内容を順守しているかに焦点を当てる傾向があります。例えば、発注が内部システム(多国籍企業グループ内の関連者間では一般的な運用)を介して、前後での交渉がないままに自動的に契約が行われる場合、税関当局はその関係に疑問を呈する可能性があり、取引が非関連者間の販売と同等ではないとみなされるケースがあります。従って、当事者間の特殊関係が取引価格に影響を与えていないことを積極的に証明するために、輸入者は個々のケースに応じて発注プロセスを改善するか、より適切にそれらを文書で明確化する必要があります。
審査のもう一つの基準は、特殊関係にある輸入者と売り手が売買契約での取り決めを順守しているかどうかです。例えば、輸入者が契約で支払期日を約したにもかかわらず、これを履行せず、また何の遅延金利や違約金等も支払わなかった場合、税関当局は、輸入者と売り手との間の売買契約を実態がない形式的なものとみなし、両者間の特殊関係が取引価格に影響を与えているとみなす可能性があります2。
税関当局は、輸入者と外国の売り手との間、または同一グループ内の関連者間で締結された関連する関係会社間サービス契約(貨物の売買契約を除く)が輸入貨物に直接関連する場合、課税評価額に「加算」すべき可能性がある否かを特定するために、それらの契約の確認を要請することがあります。
輸入者にとっては、関係会社間で締結する契約における一貫性を保つために、グループ内のグローバルおよびローカルの関税・税務部門間のコラボレーションを強化する必要であることを意味します。
関係会社間のロイヤルティの支払いは、特に注意が必要な分野です。このような支払いは、ベトナムの法令においては、通常、源泉徴収税の対象となることはよく知られていますが、法律で定められた、輸入貨物に直接関連し、その支払いが輸入貨物の販売の条件となるものという両方の要件に当てはまる場合、そのロイヤルティの支払いは関税評価額に加算され関税の課税対象となります。ただし、このことを、すべての企業が、認識しているわけではありません。また、仮に非加算のロイヤルティであっても、それらが役務提供契約の中で定められ、ロイヤルティと役務提供のそれぞれの対価が区分されず、一括で手数料を支払う場合、状況は悪化する可能性があります。このケースでは、仮にロイヤルティと役務提供のどちらかが課税対象であると判断された場合、手数料においてそれらを区分できないため、税関当局が、支払われる手数料の全額を関税評価額に加算してすることを要求するリスクがあります。
税関当局は、特定の輸入貨物の保険料または国際輸送費を、同じ業界または異なる業界における類似の輸入貨物と比較して、異常値であると指摘する場合があります。
高級品の国際輸送において、保険料が一般的な貨物輸送の場合よりも低いと税関が判断した場合などには、税関は保険会社に対して確認要請をすることもあります。国際輸送費についても同様です。
輸入者は、申告内容が正確に申告することはもちろん、申告した関税評価額について取引上の正当性を示すことが可能な資料を提供できることが重要です。税関当局の確認によって、保険料や国際輸送費の支払いが海外で行われ、関係会社間役務提供契約を通じて現地の輸入者に再請求されていた事例がありました。この時現地の輸入者はその事実を十分に認識しておらず、その結果、税関申告に当たってこれらの課税対象額を申告に含めていませんでした。この種の不作為は、税関規則の重大な違反であり、輸入者は取引価格を課税価格に使用することを否認される可能性があります。
輸入貨物の取引価格の上昇を伴う移転価格調整について、ベトナムの法令で関税評価上の取り扱いに関する進展はほとんどありません。この件については、企業と税関当局の間で非公式に協議されていますが、これまでのところ正式なガイダンスは示されていません。実際には、いくつかの企業が輸入貨物の取引価格を上方修正する移転価格調整に対して、税関申告に反映しているケースがありますが、そのプロセスは容易ではありません。
明確なガイダンスがないものの、ベトナムの輸入者は、関連する移転価格調整を現地の税関当局に自主的に文書で開示する必要があります。このことは、後日課される可能性のある過少支払いに対するペナルティの免除を受けるための要因となることもあります。
ベトナムで事業を展開する企業は、この重要な論点に対して、以降の進展をモニターする必要があります。
関税評価におけるフォールバック方式による価格決定は、当事者間に特殊関係がある場合の取引価格の妥当性を検証し、輸入貨物の関税評価額を算定するために、従来よりもより一般的に適用されています。
この方法の使用に関してはベトナムの規制に基づくガイダンスがありますが、実際の適用には問題が残っています。
控除法を使用するプロセスは、通常、長い時間を要し、税関当局との数多くの協議が必要となります。このようなプロセスを実施する輸入者は、その主張を裏付けるべく必要な証拠を提示するために、忍耐強く、最善を尽くさねばなりません。
巻末注
メールで受け取る
メールマガジンで最新情報をご覧ください。
EYの関連サービス
EYの間接税および国際貿易チームは、税務上の義務を戦略的に果たし、税務係争を解決するサポートを行います。詳細を表示
続きを読む