トランプ大統領就任、一連の大統領令を発令 -米国イミグレーション実務への影響-

エクゼクティブサマリー

2025年1月20日、ドナルド・トランプ大統領は米国大統領として2期目の就任宣誓を行い、新政権の政策と執行の優先事項を定めた一連の大統領令を発令しました。その多くは米国イミグレーション実務に影響を与えるものです。

これには以下が含まれます。

  • 移民および難民の受け入れに対する制限的なアプローチ
  • 国境警備の強化
  • 執行措置の強化
  • 出生地主義に基づく市民権の見直し


背景

近年の大統領政権は、政策目標を追求するために大統領令にますます依存するようになってきています。大統領は現行法を明確にし、政府機関に現行法の執行方法を指示することで、迅速な変更を実施することができるためです。

これらの変更は迅速に発表されますが、新大統領が就任した際に撤回されたり、裁判所によって差し止められるのも同様に迅速である点に留意することが重要です。そのため、大統領令は議会で可決された法律ほど恒久的なものではなく、大統領令が現行法や憲法に違反していると原告が主張する場合には、連邦裁判所に提訴される可能性があります。


分析

今回の大統領令には、以下の内容を求める指令が含まれていました。

  • 大統領令発令後30日以降、非移民または不法滞在の親を持つ米国内で生まれた子供に対して、出生地主義に基づく市民権を否認する。トランプ大統領の解釈は、最高裁の画期的な判例「United States v. Wong Kim Ark(1898年)」に異議を唱えるものである。同判例では、憲法第14修正条項により、米国内で移民の両親の間に生まれた子供には米国市民権が保証されると判断された。米国自由人権協会(ACLU)や一部の州の司法長官を含め、複数の法的異議申し立てが直ちに提出された。2025年1月23日、ワシントン連邦裁判所の判事は、この大統領令を違憲として緊急差し止め命令を発した。
  • トランプ第1次政権の政策に沿って、米国への入国を希望する外国人に対する審査およびスクリーニング措置を強化する。これには、セキュリティ関連の質問を増やし、身元確認のために「手続き中(Administrative Processing)」ステータスの割合を高めることが含まれる。
  • 大統領令発令後60日以内に、外国人の入国を部分的または完全に停止する国のリストを特定する報告書を提出する。
  • 一時保護資格および臨時入国許可(parole)の適用範囲と付与を制限し、キューバ人、ハイチ人、ニカラグア人、ベネズエラ人などに対するカテゴリー別の臨時入国許可プログラムを廃止する。
  • 不法移民に対する就労許可証の発行率を低く抑える。
  • 移民の取り締まりを優先し、過去に国外退去命令を受けた外国人を強制送還する取り組みを強化し、迅速な強制送還手続きの利用を拡大する。
  • 国外退去命令を受けた外国人の身元確認と帰国受け入れに協力しない国に対して制裁措置を実施する。
  • 移民の取り締まり、国家安全保障、公共安全に関連する職務を除き、連邦政府職員の新規採用を90日間凍結する。
  • 各省庁の長に対し、実務上可能な限り速やかにリモートワーク体制を終了し、連邦職員をオフィスに戻らせるよう指示する。
  • 草案段階にある規制を凍結し、連邦官報事務局の審査に送付されたが、まだ連邦官報に掲載されていない規制を撤回する。
  • 最近公布された規制の見直しとパブリックコメントの再募集のため、施行を60日間延期することを検討する。


大統領令の影響

大統領令は、国務省、国土安全保障省、およびその他の行政省庁の長官に対し、今後30日から60日の間に、これらの指令を実行する方法に関する報告書および提言を作成するよう指示しています。今後数日から数週間のうちに、大統領令に沿って各省庁が政策、手続き、優先事項をどのように調整するかを定めた指令、指針、政策覚書が発行されることが予想されます。例えば、国土安全保障省は最近、連邦官報に指令を掲載し、米国内で拘束され、少なくとも2年間の居住を証明できない不法滞在の外国人に対する迅速な強制送還手続きの適用と利用をどのように拡大するかを一般に通知しました。追加の大統領令が予想されます。EYは今後の動向を引き続き注視し、共有していきます。追加の情報が必要な場合や、さらに議論を希望される場合は、EY行政書士法人の専門家にご連絡ください。

お問い合わせ先

EY行政書士法人

木島 祥登 パートナー
草野 誠 アソシエートパートナー

※所属・役職は記事公開当時のものです






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