EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2023年7月12日、経済協力開発機構(OECD)は、税源浸食と利益移転(BEPS)に関するOECD/G20包摂的枠組みの第15回会議の閉幕にあたり、経済のデジタル化に伴う税務上の課題に対処するプロジェクト(BEPS2.0プロジェクト)の残された要素について、包摂的枠組みに参加する143カ国¹のうち138カ国・地域の合意を反映した声明を発表しました。
2023年7月の声明は、包摂的枠組みの成果物を4つの分野に要約しています。
2023年7月の声明は、7月17~18日にインドのガンディナガルで開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議に提出される予定です。
2021年10月、OECDは、BEPS 2.0プロジェクトの第1の柱と第2の柱に関する包摂的枠組み参加国の大枠合意を反映した声明を発表しました2。この合意が達成されて以来、包摂的枠組みは、グローバル税源浸食防止(GloBE)モデルルール、GloBEモデルルールのコメンタリー、GloBEセーフハーバーに関するガイダンス、GloBEルールの運用指針など、第2の柱におけるグローバルミニマム課税に関する一連の重要な合意文書を発表してきました。OECDはまた、第1の柱におけるネクサスおよび収益配分ルール案、ならびに第2の柱の運用面に関する案を、コンサルテーション文書の形で公表しています。これらの案は、包摂的枠組みにおける合意を反映しておらず、利害関係者からの意見を得るために公表されたものです。
2023年7月の声明は、第1の柱と第2の柱に関する進捗状況に関する最新情報を提供するものです。この声明は、BEPSに関する包摂的枠組みの参加の内、カナダ、ベラルーシ、ロシア、パキスタンおよびスリランカを除く138の国・地域によって合意されました。2021年10月の声明に参加しなかったケニアとナイジェリアは、この最新の声明に参加しています。
2023年7月の声明は、包摂的枠組みが第1の柱のAmount Aに関するMLCの条文を作成し、署名の準備に必要な実質的な内容を定め、途上国特有の状況に対処するための条項を盛り込んだとしています。MLCには、共通の認識を記載した注釈が添付されます。しかし、声明では、MLCの特定の項目に関して懸念を表明している国がいくつかあり、MLCの署名を迅速に準備することを目的として、これらの問題を解決するための努力が進められていると述べられています。声明によると、MLCは2023年後半に署名が開始され、年末までに調印式が開催される予定です。さらに声明は、2025年にMLCを発効させるという目標にも言及しています。
また、2023年7月の声明は、新たに制定されたデジタルサービス税(DST)および類似の措置を課すことに関する現行の停止協定(2023年12月31日まで)についても述べられています。この声明では、2023年末までに、多国籍企業の最終親会社の60%以上を対象とする30以上の国・地域がMLCに署名することを条件として、包摂的枠組み参加国は、2024年1月1日から2024年12月31日(またはMLCの発効日がそれよりも早い場合はその日)までの期間中、いかなる企業に対しても、新たに制定されたDSTまたは類似の措置を課さないことに合意しています。さらに、2024年末までにMLCの発効に向けて十分な進展があった場合、包摂的枠組み参加国は、この期限を2025年12月31日またはMLC発効日のいずれか早い日まで延長する可能性があることを声明は示しています。
2023年7月の声明によると、包摂的枠組みは、Amount Bが第1の柱に関するより広範な合意の重要な構成要素であることを認識しており、したがってAmount Bのフレームワークの多くの側面について合意に達しています。しかしながら、その範囲と価格設定フレームワークの適切性を確保するため、さらなる作業が行われる予定です。
2023年7月17日の週に、このAmount Bに関するさらなる作業に関するパブリックコンサルテーションが開始され、2023年9月1日までのコメント提出が求められています。
2023年7月の声明はさらに、包摂的枠組みが年末までに最終的なAmount B報告書を承認・公表し、2024年1月までにOECD移転価格ガイドラインにAmount Bが組み込まれるとしています。この点については、税務行政の対応力が低い国・地域のニーズと、MLCの署名・発効との相互依存関係の両方が考慮されています。声明によると、Amount Bの実施スケジュールにおいて、これらの考慮事項と、一部の国・地域が関連する法改正を採択するために必要な時間、および企業が準備するために必要な時間の両方を考慮に入れる予定です。
2023年7月の声明は、STTRは途上国から第2の柱に関するコンセンサスを得る上で不可欠な部分であることを示しています。STTRを二国間租税条約に組み込むためのモデル規定とコメンタリーの作成作業が完了しました。STTRは、グループ内利子、ロイヤルティ、およびグループ内サービスに対するすべての支払いを含む、その他一定のグループ内支払いに適用されます。STTRは、一定の適用除外、重要性およびマークアップの閾値の対象となっており、年間の課税額について事後に管理がなされます。
2023年7月の声明ではさらに、STTRの実施を促進するための多国間協定(MLI)の策定と注釈の作成に関する作業も完了し、2023年10月2日から署名が開始される予定であるとしています。包摂的枠組み参加国は、STTRの実施について、MLIに署名することにより、あるいは、STTRを含めるよう要請があった場合に二国間で租税条約を改正することを選択することができます。
STTRに関するこれらの合意文書は、2023年7月17日の週に公表される予定です。
2023年7月の声明によれば、包摂的枠組みはOECD事務局に対し、第1の柱と第2の柱の協調的な実施を支援するための行動計画を作成するよう求めています。特に、この計画では、関連する地域機関や国際機関と連携して、途上国へのサポートや技術支援を提供すべきだとしています。
2023年7月の声明は、包摂的枠組みによる第1と第2の柱に関する作業の進展を反映しています。しかし、重要な分野ではまだ作業が進行中です。企業にとっては、この声明後の7月17日に公表された一連の文書を始めとして、これから数カ月の間に展開されるOECDの動向を注視し、自社のビジネスへの影響を評価することが重要となります。さらに、企業は関係国において実施されている活動を分析し、監視する必要があります。また、プロセスの整備と実施に関する作業が進む中で、企業が政策当局と意見交換する機会を利用することも考えられます。
巻末注
角田 伸広 パートナー
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
谷津 剛 パートナー
西村 淳 パートナー
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